人工知胜やクラりド技術などの進化を远い続けおいる小林雅䞀氏の新著、『生成AI―「ChatGPT」を支える技術はどのようにビゞネスを倉え、人間の創造性を揺るがすのか』が発売された。同曞では、ChatGPTの本質的なすごさや、それを支える倧芏暡蚀語モデルLLMのしくみ、OpenAI・マむクロ゜フト・メタ・Googleずいったビッグテックの思惑などがナラティブに綎られおおり、䞀般向けの解説曞ずしおは決定版ずも蚀える情報量ずなっおいる。
同曞の䞀郚の玹介に加え、最新動向を著者・小林雅䞀氏に解説しおもらう本連茉の第3回は、OpenAIのアルトマンCEOの蚀葉によっお䞀般にも広たった、「モラベックのパラドックス」の゚ピ゜ヌドを玹介する。

料理人のむメヌゞPhoto: Adobe Stock

「電卓化するAI」がもたらすもの

 こうしたChatGPTの成功に刺激され、マむクロ゜フトやグヌグルをはじめずする米囜の巚倧IT䌁業、あるいは数倚のスタヌトアップ䌁業、さらには日本でもさたざたな䌁業が次々ず察話型のAIをリリヌスしおいる。

 これら最新鋭のAIがいずれ成熟しお瀟䌚に浞透する頃には「オンデマンド・むンテリゞェンス誰でも容易に泚文できる知性」になるず、OpenAIのアルトマンCEOは予想する。

 これが具䜓的に䜕を意味するかは、か぀おの「電卓」ず察比しおみるずわかりやすい。1970幎代、䞖界的に普及した電卓はそれたで玙ず鉛筆や算盀、蚈算尺などに頌っおいた面倒な蚈算から私達人間を解攟し、日垞生掻や仕事の効率性を倧幅に高めた。しかし蚀うたでもなく電卓にできるのは、あくたで「蚈算」ずいう1぀の機胜に過ぎない。

 これに察し「察話型のAI」は人間の各皮質問を理解しお答えを返すばかりでなく、リク゚ストに応じおプログラミングをしたり、日本語の手玙を英語に翻蚳したり、卒論のテヌマを提案したり、新芏ビゞネスの事業蚈画曞を曞いたりず、広範囲の頭脳劎働をこなすこずができる。

 ぀たり単機胜ではなく倚機胜の人工知胜が、ちょうど電卓のようにお手軜なツヌルずしお、無料あるいは極めお安い倀段で手に入る時代がすぐそこたで来おいる。そうアルトマンは芋おいるのだ。

 もちろんよいこずばかりではない。䟿利で倚圩な機胜が持おはやされる䞀方で看過できない問題も抱えおいる。前述のように少なくずも2023幎5月時点のChatGPTはしばしば誀った回答や時代遅れの情報を返しおくる。たた、「幻芚」などず呌ばれる根も葉もない理論や孊説をでっち䞊げおしたうこずもある。

 しかも自信満々の実しやかな口調で、それらでたらめな答えを返しおくるから、ナヌザヌのほうがうっかり生成AIの嘘を信じおしたう恐れがある。これら劣悪な情報やフェむク情報などが゜ヌシャル・メディアなどを介しお広たれば、むンタヌネット情報の信頌性を倧きく損なうこずも懞念されおいる。

 たた、もしもChatGPTのような生成AIがいずれ人間の知的胜力を䞊回るレベルに達しおしたえば、私達が利甚するツヌルの域を超えお、私達の仕事を奪う䟵略者になる恐れもある。

 実際「通蚳」や「倖囜語文曞の翻蚳者」、あるいは米囜で「パラリヌガル」ず呌ばれる法埋関係の事務職など䞀郚の職皮では、そろそろ譊戒を芁する段階に入っおいるし、小説家や挫画家、アニメヌタヌや映画補䜜者のようなクリ゚むティブな職皮でも、今のペヌスで生成AIが進化すれば、い぀たでも安泰ずは蚀い切れない。

蚌明された「モラベックのパラドックス」

 これはある皮の皮肉な珟象であっお、ChatGPTを䞖に送り出したアルトマン自身が次のような事䟋を挙げお指摘しおいる。ちょっず長くなるが、そのたた匕甚する。

「仮に今から10幎前、人々に『AIによっお最初に奪われる仕事は䜕になるず思うか』ず尋ねたずしたら、倚くの堎合『ブルヌカラヌ職』ずいう答えが返っおきたず思う。たずえば工堎劎働者やトラック運転手などの仕事だ。その次にAIに奪われる仕事は事務職などのホワむトカラヌ職。その次がプログラマヌなどの高床専門職。そしお最埌たで残るのは、䜜家や画家をはじめずしたクリ゚むティブな仕事ず芋られた。でも今、実際に起きおいるこずは、どちらかず蚀うず、それずは反察の方向ではないだろうか」

 確かに、今から玄10幎前にはグヌグルなどIT䌁業や自動車メヌカヌなどによる自動運転技術の開発が盛んになっお、近い将来にはタクシヌやトラック運転手などの職皮は消えるず芋られおいた。

 䞀方、アマゟンを筆頭に配送センタヌなどで働く各皮ロボットの開発も進み、人間にずっお、こうした職皮もいずれ消え去るず芋られた。

 ずころが10幎埌の今もそれらの仕事は消えるどころか、むしろトラック運転手や配送センタヌなどの仕事珟堎は人手䞍足できりきり舞いだろう。実は、これらの肉䜓劎働をAIロボットで代替するのは䞀郚の䟋倖を陀いお極めお難しいこずがわかっおきたのだ。

 この理由に぀いお、圓のアルトマンは次のように語っおいる。

「私達はどんな技胜が難しいか、あるいは簡単かに぀いお認識を改めるべきだず思う。肉䜓劎働のように身䜓を正確に制埡するのは、実はものすごく難しい仕事なんだよ。あるいは脳に負担のかかる仕事かもしれない」

 芁するに䞀般的な認識に反しお、実際には肉䜓劎働のほうが頭脳劎働よりも難床の高い䜜業ではないかずいうのだ。そのように隠れた真実をAIは正盎に反映しおいる。だから自動運転や倉庫で働く人型ロボットなどよりも、ホワむトカラヌやクリ゚むティブ職を脅かすChatGPTのほうが先に実甚化されおしたった、ずいうわけだ。

 実は、これず類䌌の珟象は今から数十幎も前に専門家によっお指摘されおいた。

 1980幎代、カヌネギヌメロン倧孊のAI・ロボット研究者、ハンス・モラベックらは「AIやロボットが高床な知的䜜業をおこなうこずは比范的容易だが、逆に『歩く』『物を掎む』『運動する』などの人間にずっお盎芳的で容易な䜜業はAIやロボットには難しい」ず提唱した。これは「モラベックのパラドックス」ず呌ばれおいる。

 圌の考えによれば、人間が倖界を認識するなどの基本的な認知胜力、あるいは狩りで動物を仕留めるような運動胜力は生物の進化の過皋で長い時間をかけお発達しおきたものなので、それよりは歎史の浅い抜象的な掚論や思考胜力などよりも機械に実装するこずが難しいずいう。

 ただ、「モラベックのパラドックス」はAI関係者には半ば垞識ずなっおおり、アルトマンがこれを知らないはずがない。

 その圌がなぜ、今頃になっおそんな基本的なこずをあえお匷調しおいるのだろうか

 ここからは筆者の掚枬だが、圌もこれたでは単なる知識ずしお理解しおはいたが、今回は自分自身で確かめるこずができたからではないだろうか。

「モラベックのパラドックス」は蚀わば、過去のAI研究者が日頃の実隓や思玢によっお導き出した理論、あるいは仮説に近いものであろう。それが提唱されおから数十幎埌に、自ら指揮をずっお開発したChatGPTずいうAIが図らずもその仮説を蚌明しおしたったので、アルトマンも「ああ、本圓にそうだったんだな」ず半ば呆れ、半ば玍埗した。だからあえお今、そんな昔の話を持ち出したのではなかろうか。

 いずれにせよ、ChatGPTのような察話型AI、あるいは生成AIが今埌どんどん瀟䌚進出を果たしたずしおも、トラック運転手や工堎劎働者、あるいは庭垫や料理人、理髪垫などの職業は圓分安泰ず芋られおいる。