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松脂

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
樹皮の傷ついた部分から染み出た松脂

松脂(まつやに、しょうし、英: Pine resin)は、マツ科マツ属の木から分泌される天然樹脂のこと。主成分はテレビン油とロジン。

製法と種類

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アメリカ・フロリダ州での採集作業を写した1912年の絵葉書
松の樹液を集める様子
チェロ用の松脂。木枠に充填され、皮の包装がされている

古来から木造船の防水目的で塗料や埋め材に用いられたことから、英語では海軍軍需品を意味するネーバルストアーズ(Naval Stores)とも称され、NSと略される[1]。製法により以下のように分類される。

ガムNS(生松脂、生マツヤニ、オレオレジン)[1]
本来の製法でマツの樹幹を傷つけること(タッピングという)で樹脂道を解放してヤニを流出させたもの[1]。専用の道具で樹幹の粗皮、内皮、師部の順に、木部に達するまで刻み、流出する松脂を容器で受ける[1]。数日ごとに樹幹の基部から上方に向けて刻みを増やしていく[1]。
採取法(タッピング法)には剝皮面の幅によって広幅法と狭幅法がある[1]。広幅法にはドイツ法(斜溝法)やアメリカ法がある[1]。狭幅法にはフランス法やボックス法がある[1]。狭幅法の場合、樹幹を深く刻むため材の損失が大きくなる[1]。
日本でもかつては松の幹から松脂を採取したが、地形条件が悪く高労賃で採算が合わないため昭和30年代に生産が途絶えた[2]。
ウッドNS(抽出油)[1]
マツの伐採後の切り株から有機溶剤を使って抽出したもの[1]。
サルフェートNS(トール油)[1]
マツ材をクラフトパルプ化するときに出る副産物である[1]。日本ではハリマ化成(株)が粗トール油からトールロジン等を生産している。

物性と成分

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通常、約15%の精油成分と75 - 85%の固形樹脂成分(ロジン)を有し、このほかに数%の脂肪酸を含む[1]。これらは蒸留によって分離される[1]。

世界各地で松脂採取に用いられている樹種は100種を超すが、市場性のあるものは限られている[1]。ロジンについては樹種間でジテルペン酸(樹脂酸)の構成成分の種類は似通っているが、その構成割合には違いがあり物性や品質にも影響する[1]。一方、テレビン油(ターペンチン)はモノテルペン炭化水素やセスキテルペン類からなる液体だが、主成分は樹種により違いがある[1]。

用途

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ロジンは滑り止めのほか、製紙用のサイズ剤、合成ゴム用の乳化剤、塗料、インキ、接着剤、ハンダフラックス、チューインガム、塩ビタイルなどに利用されている[3]。滑り止めとしては、野球のロジンバッグに使用される[4]。また、バレエではトレイに粗い粒状のロジンを入れトウシューズで踏み砕いて使用する[4]。

また、松脂から精製、加工されるテレビン油は、香料、殺菌剤、接着剤、農薬、情報用紙用薬剤などに利用されている[3]。

精製・加工された製品の用途の詳細については、ロジン、テレビン油をそれぞれ参照。以下では松脂の利用例について述べる。

擦弦楽器の弓の塗布剤
ヴァイオリンなどの弓には馬の尻尾の毛が使用されているが、この構造だけではほとんど音は出ず、松脂を利用して摩擦係数を大きくすることで音を出している[5]。サイレントバイオリンでも松脂は同梱される[6]。
日本人形
日本人形のうち木目込人形は木材や桐塑(とうそ)で作られるが、桐塑は桐のおがくずと生麩糊を粘土状に練ったものを松脂などで作った型で型抜きして乾燥させたものである[7]。
練り朱肉
伝統的な練り朱肉は朱の成分にヒマシ油や松脂などの油分、和紙(印泥の場合は主に藻草)などを練り合わせたものである[8]。
シャボン玉原液の添加剤
江戸時代からシャボン玉の膜を割れにくくするために使用された[9]。
弓道のギリ粉
弓を引く際に用いる弽につける滑り止めの粉末。松脂を煮切って、粉末にしたもの。
着火剤
松の木から松脂を多く含む部位を切り出したもの。ティンダーウッドやファットウッド等と呼ばれる。

脚注

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  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 林 良興「熱帯樹木の成分と利用(4)マツヤニ・天然樹脂(1)」『熱帯林業』第41巻、公益財団法人国際緑化推進センター、1998年、77-81頁。
  2. ↑ 川瀬滋「談話室-ロジン誘導体の活用」TIISニュース 2019年277号 2021年8月5日閲覧。
  3. 1 2 笹倉 充義「ブラジルにおける生松脂採集事業」『熱帯林業』第21巻、公益財団法人国際緑化推進センター、1991年、21-26頁。
  4. 1 2 “第81期中間報告書”. 荒川化学工業. p. 3. 2026年3月8日閲覧。
  5. ↑ 松谷 晃宏「楽器・写真と応用物理」『応用物理』第89巻第10号、公益社団法人応用物理学会、2020年、610-613頁。
  6. ↑ “ヤマハのサイレントバイオリン、最新モデル「YSV104」が4月下旬発売”. 財経新聞 (2017年2月20日). 2018年2月24日閲覧。
  7. ↑ “化学の目でみる日本の伝統工芸 12 日本人形”. 一般社団法人日本化学工業協会. 2026年3月8日閲覧。
  8. ↑ 馬渕 敬子. “蔵書印と練り朱肉の手入れについて”. 早稲田大学. 2026年3月8日閲覧。
  9. ↑ “第84期中間報告書”. 荒川化学工業. p. 3. 2026年3月8日閲覧。

関連項目

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