無用の用
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無用の用[1](むようのよう、無用之用[2]、无用之用[3])は、古代中国の老荘思想の用語。「役に立たないものが却って役に立つ」という思想。
解説
[編集]「無用の用」の思想は、『荘子』逍遙遊篇・人間世篇・山木篇・知北遊篇などで説かれる[4]。その多くは荘周と恵施の対話のなかで説かれる[5]。
「材木に向かない樹木は伐採されず天寿を全うする」というたとえ話を用いることから、樗櫟散木(ちょれきさんぼく)という熟語にもなっている[6]。その他、「車輪が回転するのは中心の轂(こしき)のおかげ」[1]「身体障害者の支離疏は徴兵や労役に駆られない」[7]といったたとえ話を用いている。
「有能な人間は危害に晒され、無能な人間は長生きする」という処世術でもあり[1][2]、老荘思想の「養生」[4]や「無為」[1]、儒家思想の「明哲保身」[8]とも結びついている。
受容
[編集]「無用の用」の思想は後世にも継承された[8]。例えば、明代の文人陸樹声は『苦竹記』で「甘いタケノコは取り尽くされ、苦いタケノコは却って天寿を全うする」と説いている[10]。
日本の松尾芭蕉は『荘子』の愛読者であり、『許六離別の詞』で「予が風雅は夏爐冬扇のごとし、衆にさかひて用る所なし」と述べ[11]、自身の俳諧を「夏炉冬扇」(夏の暖炉、冬の扇)にたとえている[12]。
脚注
[編集]- 1 2 3 4 金谷治、小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)『無用の用』 - コトバンク
- 1 2 澤田 2013, p. 1159.
- 1 2 池田 2014, 人間世篇 第9章.
- 1 2 池田 2014, 逍遙遊篇 第4章 解説.
- ↑ 楠山 1984, p. 395.
- ↑ 八重樫一. “No.1747【樗櫟散木】チョレキサンボク|今日の四字熟語・故事成語|福島みんなのNEWS - 福島ニュース 福島情報 イベント情報 企業・店舗情報 インタビュー記事”. fukushima-net.com. 2026年5月21日閲覧。
- ↑ 澤田 2013, p. 1160.
- 1 2 八木章好「「明哲保身」考 : 中国の文人精神の表象として」『慶應義塾大学言語文化研究所紀要』45、2014年。NAID 40020051279。141;154頁。
- ↑ “太宰治 惜別”. www.aozora.gr.jp. 青空文庫. 2026年5月21日閲覧。
- ↑ 『大学入試センター試験問題評価委員会報告書 平成26年度 (本試験) 第3作成部会見解(国語)』NDLJP:10195762/1/7
- ↑ 金谷治「芭蕉における荘子 江戸期の老荘受容と対比して」『日本思想史学』30、日本思想史学会、1998年。CRID 1520572360027467904。109頁。
- ↑ 堀信夫、平凡社 改訂新版 世界大百科事典『夏炉冬扇』 - コトバンク
- ↑ “北川さん、「無用の用」未来を開く 批判に負けず、新分野―空気から資源・ノーベル賞:時事ドットコム”. 時事ドットコム (2025年10月9日). 2026年5月28日閲覧。
参考文献
[編集]- 池田知久『荘子 全訳注 上・下』講談社〈講談社学術文庫〉、2014年。上: ISBN 978-4062922371 下: ISBN 978-4062922388
- 楠山春樹 著「無用の用」、日原利国 編『中国思想辞典』研文出版、1984年、395頁。ISBN 9784876360437。
- 澤田多喜男 著「無用之用」、尾崎雄二郎; 竺沙雅章; 戸川芳郎 編『中国文化史大事典』大修館書店、2013年、1159-1160頁。ISBN 9784469012842。