変わっちまったなぁこの町も
十年くらい前までは自宅の周りは田んぼと畑しかない鄙びたのんびりエリアだったのだが、農家さんの高齢化で跡を継ぐ人が減ったのかどんどんそれらが売却されていった。
売れた後の土地にはものすごい勢いでアパートがドカンドカンと建っていった。
建設時の敷地の境界線の確認に不動産屋さんが尋ねてきて、そこで初めて設計の図面を貰った。
それから日を改めて確認作業をしたのだが、初めて会う田んぼの所有者だったお爺さんが寂しそうな何かを諦めたような何とも言えない顔をしていたのが今でも忘れられない。
工事はすぐに着工されてものの三か月足らずでピカピカのアパートが二軒建った。
道を挟んで向かい側には別の不動産屋さんが建てたちょっとリッチなアパートがずらりと並んだ。
この家に住み始めた頃は今くらいの時期になるとカエルの大合唱が聞こえてきたものだが最近では自宅の庭でほんのわずかな生き残りが必死に鳴いている。
この辺りではちょうど田植えの時期だが家から少し離れたところでまだ田んぼを作っている農家さんが数件残るのみとなった。
最近になって去年まで畑だった場所にボーリング調査が入っているのを見かけた。
そこは自宅から歩いて三分もかからない所でかなり広い場所である。
地質の検査が行われるという事はもしかしたら大型の建築物、平たく言えばマンションが建設される可能性が高い。
もしドデカいマンションが立ったらのどかで穏やかだったご近所がますます騒々しくなることは想像に難くない。
よく十年一昔と言うが、自宅周辺の激変ぶりに人の少ない場所で静かに暮らしたかったのにという本音からしたら複雑な気分である。
ご近所さんからもたまにここら辺も賑やかになったわねぇ、昔はこの町の軽井沢と呼ばれるくらい閑静で良い場所だったのだけれどもと言われる。
私がその軽井沢気分を味わったのはほんの二年ちょっとだったなぁと切なくなる。
いや、その環境を味わえただけでも幸せだったのかもしれない。
耕作放棄した田んぼや畑の土地はまだまだ残っているので更に土地開発が進む可能性は大である。
我が家に渋沢栄一さんが唸るほどあれば土地買い占めも可能だが全く現実的ではない。
まだローンだって残っているし家自体には愛着が深いのでそう簡単に引っ越すことは無いので激変する周辺環境には慣れるしかない。
頭の中に中島みゆきの「時代」が流れてきそうな気分になってきたので愚痴っぽい話はここまでにする。
わしゃぁのんびりと静かに暮らしたいだけなんじゃがのう。
