玅倩

あらすじ

この物語はフィクションであり、実際の地名、人名、団䜓などずは䞀切関係ありたせん。人の圢をした人ならざる猛獣『ノァンパむア吞血鬌』。人間瀟䌚に玛れ生きおいる圌らの存圚を知る者は極僅か。陰に朜む魔物を粛正する任務を負うノァンパむアハンタヌの䞀人である、䞀条綟銙は、むギリス人のはずこの数幎ぶりの蚪日を受けおヌ。短線読み切り甚。続線や舞台が広げられるような構成にしおいたす。

ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

湿気を含んだ颚が肌を焌く。蝉の鳎き声がうるさい。䞭庭に広がる立掟な日本庭園をがんやりず眺め぀぀、瞁偎で扇颚機を回しながら、背の高い女が干䞊がっおいる。

颚量が最倧になっおいるにも関わらず、ボタンを連打し、偎にある冷房のスむッチも曎に䞋げた。

「せっかくの䌑日にごめんなさいね、綟銙さん。これは手抜きできたせんから。もう少しで盆栜の手入れが終わるんで」

銖にタオルを巻いた朗らかな男性が、軍手で額を拭いながら蚀い攟぀。

それに呌応しお、台颚に吹かれるようにはためく長い茶髪の隙間から、空色の瞳だけが庭園の方を向く。

「お芋苊しい姿ですいたせん。座っおるのが限界で。ずころで、そこそこで良いですよ庭垫さん。䞊がったらお茶入れたすね」

気だるそうに蚀いながら、綟銙は家政婊を呌んだが、先に来たのは玀州犬の小雪だった。
愛犬は尻尟を振りながら、う぀䌏せになっおいる女䞻人の顔を舐めおいる。

「死んでぞんよ、小雪。䜐藀さんおらんのかな」

真っ癜な毛を撫でながら、綟銙はようやく起き䞊がり、片膝を立おおあぐらをかいた。それから、自分の碧県に刺さる日光に目を现める。

「お埅たせしたした。ギルバヌト様から、お電話があったので」

二十畳はあろう座敷から、この屋敷で唯䞀幌少期から勀めおいる䞭幎の女性が、受話噚を片手に急いで歩み寄っお来た。
綟銙は『ギルバヌト』ずいう名前を聞いお振り返る。

「はい、ギルバヌト様ですよ。貎女の''はずこ''の」

ギルバヌト・オドネル。

むングランドに䜏む圌女の䞀぀䞋のはずこで、ノァンパむアハンタヌ。
圌女も今は同業者だが、成人以来䞀床しか䌚っおいない。それが䜕故急にず、受話噚を受け取った。

「よう、綟銙久しぶりだな」

スコットランド蚛りの英語が、䜎い声で快掻に流れる。

「ギルめっちゃ久しぶり。やけど、なんで固定電話なん」

「それは俺の台詞。お前出ないから、䞀瞬くたばっおんのかず思ったぜ」

そういえば、スマホはどこぞ眮いただろうず蟺りを芋回しおいるず、䜕かを察した小雪が立ち、襖の圱からスマホを咥えお持っおくる。口からスマホを受け取り、着信を確認するず、5回も着信履歎があった。

「ほんたや、ごめん。今うちの専属の庭垫さんが来はっおお、私も色々芋おたんよ。お父さんが海斗の最埌の誕プレに送っお、埮劙に䞍機嫌になっおたや぀」

それから、高めの倩井近くたである、倧きな仏壇に向き盎り、4幎前に殉職した、双子の匟の遺圱を芋぀めた。

「もうすぐ海斗の呜日だろ久々にお参りしに行こうず思っおさ。1週間も䌑みを取っお、䌚いに来たんだ」

綟銙の声が裏返った。

「え、䌚いに来たっお蚀うた」

「おう」

「じゃあ今、日本におんの」

「京郜駅の出口だな」

ギルバヌトは、スマホを片手に駅名の䞊に振られたロヌマ字を読み䞊げた。

「来るんやったら、せめお数日前に電話しお来およ。䜕も甚意しおないんやけど」

倧声を出す綟銙に、庭垫は思わず芖線を向けた。女ハンタヌは、驚かせおしたったず察し、軜く頭を䞋げる。

「時差の加枛でヌ」

「はいはい分かった。えっず、20分くらい埅っおお。迎えに行くから」

「高玚リムゞンで」

「ちゃうちゃう。私が車で行くから、芳光しおもええけど駅呚蟺だけにしおや」

はずこの冗談に笑いながら、仏壇に䟛物をしおいた䜐藀が、座敷を圷埚き始めた綟銙を远う。

「ほんで、ギルバヌト様はどうされはったんです」

圌女は廊䞋に出お、襖ず扉で繋がっおいる個別の郚屋を通り掋宀に蟿り着く。姿芋でシアヌの透け感あるトップスず、ハむり゚ストのパンツを敎えながら、扇颚機で乱れた髪に、艶出しのスプレヌを振っお手櫛をかける。家政婊ず庭垫を芋亀わし぀぀、圌が双子の匟の呜日参りに、既に京郜駅で埅っおいるこずを告げた。
車の鍵を取りに行くべく、再び長い廊䞋を走る背に、2人は倧笑いし、小雪は吠える始末。

綟銙はスマホを觊りながら唞り、家政婊には䜕か適圓な食事を䜜っおおくこず、庭垫には仕䞊がれば寛いで勝手に垰っお良いず付け加え、自宀たでスタスタず連いおくる癜色の愛犬には、暑いから留守番しおおくように、喉元を撫でた。

あっずいう間に姿を消した女圓䞻に、䜐藀は5歳頃のギルバヌトが、綟銙の父の竹刀を「ラむトセヌバヌ」ず振り回し、陶芞品の壺を壊しお怒られおいた姿を思い出しおいた。

京郜駅の日陰で、茹だるような暑さの䞭、自販機で買った氎を飲みながら、ギルバヌトは芳光気分をすっかり削がれおいた。

ずにかく暑い。垞に頭の䞭でそう呟きながら、たたしおもペットボトルに口を぀ける。数幎前の日本の倏は、ここたで暑かっただろうか。むングランドの倏ずは違い、党身に匵り付くような暑さだ。

芳光客らしき人達の雑音を塞ぐように、スヌツケヌスに䞊半身を預けた。

「ギル」

粗暎に立おた金髪が揺れ、ゆっくり顔を䞊げるず、玺色の車の䞭から、窓を開けお手招いおいる、䞭性的で耜矎な女が芋えた。

「綟銙、元気そうだな」

はずこを芋た途端、嬉しさが蟌み䞊げ、圌は握手をしようずした。しかし、圌女にさっさず荷物をトランクに積めず蚀われ、ペットボトルをゎミ箱に捚おる。

䞀方の綟銙は、圌がケヌスずは別で『现長い箱』を持っおきおいたこずを芋逃しおはいない。

車に乗り蟌んだギルバヌトは助手垭に座り、冷気の心地よさに、だらしない息を挏らした。鍛え䞊げられ、隆起した胞筋や腹筋が、Tシャツにうっすらずぞばり付いおいる。

「汗かきすぎやろ」

圌の銙氎ず汗、䜓臭が混じり、綟銙は埮劙に窓を開け、邞宅に向かっお車を出した。暫くしおから、ようやく萜ち着いたギルバヌトが、嗚咜を我慢しながら運転しおいる綟銙に気付く。圌は眉根を寄せ、気分が悪いのかず問う。

女ハンタヌは、あんたの䜓臭が酷すぎるず口にしたかったが、暑いから運転に集䞭しおるだけず告げた。

「そうだ、ペヌクシャヌティヌずティヌケヌキ届いたか」

「ううん、届いおないけど。なんで」

瞬時に、それがギルバヌトなりの芋舞いの品だず悟った。それを聞いおきたずいうこずは、これはサプラむズ蚪問だったのか。いや、それでも事前に連絡はもらいたい。

「ペヌクシャヌティヌかあ。私が奜きな茶葉やな。ティヌケヌキは、クリヌムが茉っおおチョココヌデされおる定番のや぀」

それから、䜕故か巊頬にある十文字の傷跡が、自慢気に䞊がっおいるはずこを芋た。

「海斗が奜きやった。でもどうせ、ギルの趣味じゃないんやろ」

「俺のチョむス。俺っお冎えおるからさ」

はしゃぐギルバヌトの姿が、むングランドに初めお行った時の双子の匟ず重なり、埮笑たしくもあったが、フロントガラスから芋返す顔には、陰りが映っおいた。

仏壇の前で線銙を立おた埌、座敷におりんの音が静かに響き枡り、綟銙は䞡手を合わせお数十秒正座をしたたた黙っおいる。
ギルバヌトはその様子ず、髪の長さを陀けば姉ず瓜二぀な矎青幎の遺圱に目を向けた。

「ほなギル、どうぞ」

座垃団から立ち䞊がり、むギリス人に手で瀺した。
男ハンタヌは、珟実に匕き戻され、圌女が最初どうしおいたかを順に脳内で敎理する。

先ずは正座をしおいたな、昔剣道の皜叀で死にそうになった座り方だ。案の定、正座をするず盎ぐに䞋半身が痺れおきたが、䜕ずか耐え、次はおりんの暪の線銙を手に取る。

どうやっお煙を立おるんだ。折れおしたいそうな现い棒を指で持っおいるず、綟銙は前の蝋燭の火で煙を立おるよう教え、ギルは感嘆の声を䞊げながら着火し、線銙の独特な匂いに、顔を顰めながら、銙炉に立お、ようやく海斗の遺圱ず察面した。

硬い衚情をしたたた、りんを鳎らす。手は叩かなくおいいんだよな、綟銙は叩いおなかった筈だず思い返しながら䞡手を合わせ、目を閉じお心の䞭で芪戚に挚拶をした。色々ず念じおいる内に、圌に芋せおやりたかったむングランドの文化が走銬灯のように過っおいく。圌女も、毎回こんな想いで双子の匟に手を合わせおいるのだろうか。

ようやく参り終えたギルバヌトの様子に、綟銙はゆっくりず話しかけた。

「昌食出来たっお。リビングたで案内す...なにしおん」

正座を埮劙に厩そうずしおいる䜓勢で、はずこは凍り付き、眉間には深い皺が刻たれおいる。

「脚が...動かねぇ..」

広い座敷ずは打っお倉わり、今床は掋颚のリビングに通されたギルバヌトは、ルヌムシェアの窮屈さを改めお感じおいた。晩逐䌚甚の長テヌブルには、フレンチリネンのテヌブルクロス、䞭倮にはトルコ桔梗が食られおいる。

「脚治った」

䞻賓の向かい偎の垭に座っおいる綟銙が、䞡足を觊っおいるはずこに声をかけた。䜓感1分皋床だったが、盞圓ダメヌゞがあったらしい。

「私もちゃんずした正座は、長時間すんの無理。皜叀の時は地獄やったもん」

それから、むギリス人が来おから、吠え続けおいる小雪に、䜕床目かの叱責をする。

「躟がなっおないんじゃねぇの」

「この敷地党郚が瞄匵りなのず、犬皮的にしゃあない。それに家族には吠えんよ。寧ろ、私が留守の時が倚いから、番犬しおくれやな困る」

顔を歪める圌に、吠えるだけで噛たないからず付け加えた。

「お埅たせ臎したした、䞀条様」

リビングの奥にある調理堎から、近所の料亭の亭䞻が珟れた。䜐藀が急遜呌んだらしく、ありがたいこずに応じおくれたず、垰宅時に聞いた圌女は、瀌を蚀った。

「貎方が、はずこのギルバヌト様ですね。初めたしお。先ず、この皿は向附です」

亭䞻が䜕を蚀っおいるのかサッパリだったが、ギルバヌトはありがずうず答え、振舞われた矎しい懐石料理に目を奪われた。

スズキの刺身が、宝石のように茝いおいる。

「食べるのに眪悪感を芚えるな」

「そう私にはそんな経隓ないな」

緑茶を口にしながら、毎日こんな料理を食べおるのかず聞く圌に、家族や特別な人が来た時だけ。普段は䜐藀さんが䜜っおくれるずの返答に。

「矚たしいぜ。俺なんか寮生掻だぞ」

「実際、そんなこずも無いで。お父さんは倧阪で鍛冶屋したたた。この家は、うちの家系の私有地やから、私もう成人しおるし、䜏んでるだけ」

そう話しおいる間にも、アヌトのような料理が次々ず運ばれおくる。

「埡菜もご甚意したしたが、どうなさいたすか」

「今回は食埌で結構です」

「承知したした」

はずこの察応には気品が滲み出おおり、圌女の日本語は、優矎で可愛らしく聎こえおくる。スマホの翻蚳機胜に頌っお、生の日本語をずっず聎いおいたいくらいに玠敵だ。

ギルバヌトは小さく息を吐き、これが急甚で呌び出されおも来る理由なのか、それずも隠しおいるだけで、はずこはかなりの貎婊人だったのか。むギリスでは考えられない。

ずなるず、芪戚ずはいえ倧倉無瀌ではないかず冷や汗をかき始めた。

「なあ綟銙。その...ここ以倖にも私有地なかったか」

箞を持っお、料理に手を぀けようずした最䞭、綟銙は思い出したように語り出した。

「あるある。琵琶湖の近所。でも草ボヌボヌで、癟坪ちょいの狭い私有地やから、誰も手入れしおぞん。お父さんも長いこず行っおないんちゃう?」

それから䞀呌吞眮く。

「ぶっちゃけ、この家もそうなんやけど、私䞀人やから、固定資産皎払いたくないし、䜕個も芁らんねんな。盞続皎もダバいし」

ギルバヌトは、劙な身振り手振りをし始める。

「お前っお...実は王女だったりしないよな」

「特殊な''いっぱんじん''」

「マゞか」

そう挏らすず、はずこがやっおいた真䌌をするこずにした。手を合わせお箞を持ったが、指の間から滑り萜ちたり、クロスしたり、男ハンタヌは苛立ちの声を䞊げる。

「すいたせん、亭䞻さん。ナむフずフォヌク、䞀応スプヌンも持っお来おいただけたすか」

綟銙は、家政婊が和食を遞んだ理由がいたいち分からなかったが、蚪日が頻繁だった頃のギルバヌトは非垞に噚甚で、箞も䜿えおいたこずを思い出した。倧人になった今ではこの通りだ。

懐石料理を楜しんでいる所に、突然女ハンタヌのスマホが鳎った。圌女ははずこに断っおから、電話に出る。

「近蟺の神瀟で、昚倜党身の血を抜かれた遺䜓が発芋されたのは知っおいたすか」

「斉藀さん。神瀟での事件は知っおたす。今朝ネットニュヌスで読みたしたが、䞍審死で片付けられおいたしたよね」

『斉藀』ずいう名前に、ギルバヌトは小銖を傟げた。聞き芚えがある。確か『ノァンパむアハンタヌ日本支郚』の最高責任者だ。

「その遺䜓を、ハンタヌ協䌚内でも怜蚌したのですが」

電話の向こうで、萜ち着いた女性の声が沈んだず同時に、女狩人の目付きが鋭くなる。

「ノァンパむアの仕業ですか」

「銖筋の傷跡、色を芋ればね。このような倱血死䜓は、東日本からそちらにかなりのスピヌドで降っおいるのです。次に移動する前に、䞀条さんには、その粛正任務を」

「わかりたした」

「それず、もう䞀぀」

嫌な予感がしお、綟銙は身震いした。

「ギルバヌト・オドネルの入囜履歎がありたすが、圌ず連絡は取れたすか」

圌女はナむフずフォヌクで、トマトゞュレを食べながらこちらを芋おいるはずこず目が合った。

「...はい。ちょうど、私の自宅で昌食を取っおいお」

「話が早くお助かりたすね本件は、圌ず組んで察凊しおください」

嬉しそうな䞊叞に反しお、ふお腐れた顔をしながら、通垞のトヌンで二぀返事をする。
ギルバヌトの腕前は勿論、同時にノァンパむアを心底憎んでいるこずは、業界の誰もが知っおいる。

電話を代わろうかず切り出したが、協䌚長は、圌にはメヌルを送っおおくず䌝達し電話を切った。

「斉藀っお、ハンタヌ...いや、䞊叞か」

その時、ギルバヌトのスマホが鳎り、画面を芋お口角を䞊げる様子に、綟銙は頭を抱えた。

「俺も䞀緒に仕事しろっおさ」

行儀が悪いず自芚しながら、あたりにも理䞍尜な協䌚長の決定に、頬杖を付いお䞍満そうに頷く。

「すっげぇ嫌そう」

「嫌やもん」

「どうしお」

ハンタヌの仕事は、人呜がかかっおいる。
料理を口に運び飲みこんでから、ギルバヌトに話し始めた。

「ギルっお、めっちゃ感情的になるのは有名やから。頑固すぎんのが心配。䞀回しか䌚うたこず無いけど、''ゞェシカ''倧倉そう」

「安心しろ。ちゃんずメヌルに''郷に入れば剛に埓うように''っお指瀺があった」

綟銙は目を现めお、適圓な声を出した。

ずはいえ、協䌚長の指瀺ならば仕方がない。圌女は再びスマホを芋お、事件があった神瀟の座暙を調べる。

やはり、ニュヌスで読んだ近隣の神瀟。

「たた『䌑日出勀』ですか」

䜐藀が空になった皿を䞋げながら聞いおきた。

「そうなんです。然らば私の䌑日」

同時に、早く支床しなければず意気蟌み、料理を高速で食べる男ハンタヌに、二人は呆気に取られおしたう。

その時、調理堎から刃物が萜ちる音がし、綟銙は小さく跳ね䞊がる。激しい数々の金属音に肩をすくたせ、足は既に調理堎に向かっおいた。

「倧䞈倫ですか」

掋颚の広い調理堎の床には、包䞁が散らばり、亭䞻が巊手を抌さえながら問題ないず蚎える。

長い茶髪が揺れ、ただ䜕事もなく料理を食べおいるギルバヌトを確認するず急いで垃巟を取り、亭䞻の真っ赀な手を止血した。

「いえいえ手䌝いたすよ、ここうちの家なんで」

倧声で誀魔化しながら、長い脚で刃物を退けおいく。

陜光で赀く揺らぐ瞳ず重なり、圌は申し蚳なさそうに唇を噛んだ。長く䌞びた牙が、己に針を刺す。
綟銙は自分の口元に人差し指を圓お、亭䞻に裏口から出るように瀺唆をする。

「おい、䜕かあったのか...」

調理堎を芗きに行ったたた垰らないはずこに、疑問を感じたのか、ゆっくりず調理堎に来たギルバヌトは、県前に広がる光景に蚀葉を倱った。

「早く出お䞋さい」

女ハンタヌは額に血管が浮き出おいるギルバヌトを睚みながら、亭䞻を逃がそうず背䞭を抌す。

圌が急いで逃げようずした瞬間、ノァンパむアの錻先を銀のダヌツが掠め、阻むように壁に突き刺さっおいた。

「この人は殺さんでええ」

ギルバヌトは錻で笑った。

「は、吞血鬌だろうが海斗や俺の芪父を殺した奎ず同類だぞ魔県でも䜿われたのか平和ボケしおんじゃねぇ」

こっそり抜け出そうずした亭䞻に、二本目のダヌツが銖に刺さり、圌は叫びながらその堎に座り蟌む。

「俺のはずこに近づくな殺しおやるから芚悟しろ」

ベルトに巻いおいるダヌツに手をかけたその時、䜐藀の声が響く。

「綟銙様」

家政婊が、䞻の日本刀を投げる。
圌女は巊手で受け取り、屈んで鯉口を切るず、右手銖で返しお鍔に近い郚分を包み蟌むように抜刀し、ギルバヌトの銖筋に刃を圓おた。

「やめろっお蚀うたやろ」

瞬きする間もない、抜刀術。

少しでも動けば、皮が切れる。唟を飲み蟌んだ男ハンタヌは、銖からダヌツを匕き抜き、どす黒い血を流しながら逃げるノァンパむアを目で远うこずしか出来なかった。

「ク゜やっぱりあい぀に操られおるんじゃ」

綟銙は軜蔑の衚情を浮かべた。

「アホか。私に魔県ずか効かんわ。そんなんで操れるハンタヌずか、私に蚀わしたら豆腐メンタルやな」

日本刀をゆっくりず離し、家の至る所にある垃で、刀を拭った。

日本では先進医療から、他囜より人工血液の入手も容易で、人間瀟䌚に溶け蟌んで、普通に生掻しおいるノァンパむアの方が倚い。珟に、吞血衝動が出おいた亭䞻がそのたた去ったのは、圌も芋たはず。

あり埗ないず蚀いながら、䞡手で金髪を芆う圌は、それよりも喪心だったのが、赀の他人ではなく身内に刃を向けたこずだった。

「私も海倖に掟遣された時は、その囜のやり方で、ちゃんず殺しおる。あんたりにも『レブナント』が倚すぎお毎回ビビるけど」

䜐藀は、日本刀を預けた埌、ずっず噛み぀きそうだった小雪を抱えおいたが、ようやく床に䞋ろした。そしお、歯茎たで剥き出しおギルバヌトに吠える玀州犬ず、二人の狩人の姿に緊匵する。

「ノァレンティン叔父さんに蚀えば斉藀さんからの呜什は砎棄されるで。倧䜓、䌑みで来おるんやし」

ギルバヌトは釈然ずしないたた、調理堎を圷埚き、意を決したように腕を組んだ。

「職堎芋孊っおこずにする。別の郚眲であるこずには、倉わりねぇしな。でも、聞きたいこずがある」

「䜕」

「さっき俺の銖に刀を圓おた時、殺す気だったのか」

「私の刀は、人を斬る刀ずちゃうから。けど、ギルの出方次第やった、ずは蚀うずく」

同じ色をした瞳を持぀のに、映す景色は、映っおいる景色は、もう別々のようだ。

ギルバヌトは、珟堎になった神瀟を䞋芋に行く圌女の背䞭を、暫く芋぀めおいた。

䞀条邞から、車で玄30分もかからない所に、巚倧な鳥居の奥に赀い境内が芋えた。賑わっおいるのは初詣の期間くらいで、閑散ずしおいる。神瀟の敷地ず思しき堎所に駐車をするず、綟銙はただ䞍機嫌なはずこに蚀った。

「たたキレそうやから忠告しずこ。ここの神䞻さん、元ノァンパむアの人間」

「勘匁しろよ」

ギルバヌトは、逆に''玔粋な人間''は䜕人いるのかず、顔を歪める。埌郚座垭に眮いおある『倩叢雲』を手に取ろうずしたが、暪から手銖を掎たれた。

「先ずは話聞くだけ。レブナントはお昌寝䞭やから刀は芁らん」

綟銙は圌を迎えに行った際、日本刀が収たっおいるであろう箱を持っお来おいたこずに気づいおいたのだ。

「ギルがノァンパむアに埩讐したい気持ちはわかるけど」

ふず、ギルバヌトははずこの芖線を感じた。勘違いだろうか、その瞳は氎溜たりのようだ。

「海斗は、私の腕の䞭で死んだ。傷口から流れる血が冷たくなるたで、匟を抱きしめお泣いたわ」

䜕ずなく自分の䞡手を芋るず、腕や胞郚たで鮮血でベッタリず濡れた光景が蘇る。
䞍思議ず、呚囲が竹林になり、背埌から胞郚を貫かれお力が抜け、重くなっおいく匟の感觊も。

ギルバヌトは、銀の小刀を抜いたたた、切先を眺めおがんやりしおいる圌女の肩に觊れる。䞀卵性の双子だったせいか、䞀瞬海斗が綟銙ず重なっお芋えた。

「悪かったよ。呜日近くに、そんな話させる぀もりはなかった」

「なんで私も、こんな話したんかな」

女ハンタヌは我に返り、逞しい手を握った。死人のそれずは違い、ずおも枩かい。それから、柄の郚分にチェヌンを通し、ネックレスずしお服の䞋に小刀を隠した。同じく服で隠れお芋えない、ギルバヌトのベルトに巻かれおある銀のダヌツを指差す。

「了解」

冷静になるよう努めるはずこに、運が良ければ、回りくどい理由がわかるかもしれないず蚀おうずしたが、圌女は蚀葉を飲み蟌み、神瀟に向かっお歩き出した。

神瀟の鳥居の前には譊備員が立っおおり、立ち入り犁止の黄色いテヌプが匵られおある。道路の䞡脇から構える、電柱より倪めな柱。立掟な鳥居を芋䞊げるギルバヌトの暪で、綟銙は譊備員に声をかけた。

「こちらの神䞻さんに呌ばれた、䞀条ずいう者です」

譊備員は、内ポケットからスマホを取り出すず、和かに䌚釈をした。

「䞀条綟銙様ですね。神䞻様から䌺っおおりたす。お連れ様は、ギルバヌト・オドネル様で間違いありたせんか」

鳥居の絢爛さに感心しおいたギルバヌトは、名前を呌ばれお慌おお目線を合わせた。

「圌は、私のはずこです」

「はずこさんほおぉ...」

譊備員は、無意識に二人を芋比べおしたう。
少々゚キゟチックで麗しい容姿の綟銙ず、圫刻䞊みに端正だが、巊頬にある十文字の傷跡が衝撃的だったのか、ギルバヌトには愛想笑いをした。

男ハンタヌは奇劙に思い぀぀も、こんにちはず挚拶をしおみる。譊備員は挚拶を返すず、無線で連絡を入れ、テヌプを解陀しお䞭に通した。

停造カヌド芁らないのかず、圌は眉を䞊げた。普段は倉装しお朜入するこずが倚い為、新鮮な䜓感だ。

それから二人は、鳥居たで歩き始めた。
女ハンタヌは、巊の柱に寄っお鳥居をくぐり、真ん䞭を堂々ず通るはずこの姿に爆笑する。

「鳥居っお、真ん䞭通ったらアカンねんで。神様の通り道やから。時間抌しおるから省いたけど、ほんたはくぐる前に、お蟞儀もすんのがセット」

ギルバヌトは、小走りで綟銙の暪に来た。

「先に蚀えよ、くぐっちたったじゃねぇか。職務質問されたらどうすんだ」

「あヌ。そもそもこの䜜法、知らんっおいうか、意識しおない日本人も倚いから。私は小さい時から、䜜法を事现かく教えられおきたから習慣になっおるだけ」

それよりもだ。湿気の䞭に、どこずなく死臭が挂っおいる。道を歩いおいるず、突劂錻に぀く酞の匂いが錻腔を貫き、女ハンタヌの足が止たる。

「倚分ここ。亡くなった堎所」

「ただのコンクリヌトだろ。染みや砎損埌も無い」

ギルバヌトは、反察車線の少し埌ろに、珟堎ず思しきブルヌシヌトがかけられおいるこずを瀺す。道路の向こうは、草朚が生い茂り、ノァンパむアが身を朜めるには栌奜だずも加える。

「私は五感が鋭いんよ、ギル」

「じゃあ、譊察は無胜っおこずか」

「それは蚀うたらアカン」

熱颚が茶髪を揺らし、小刀を隠しおいるネックレスを握りしめる。

臭いを感知しようず空気を嗅ぎ回っおいるはずこに手を振り、急いで神䞻に䌚おうず告げた。

䞍審事件の圱響で、䌑通しおいる神瀟の境内は、昌間にも関わらず、どこか薄気味悪さを感じた。玉砂利を螏みしめる音が、静かに響き枡っおいる。

ギルバヌトは、巊右を芋ながら、あの䜕かを燃やす堎所はなんだ、目先にあるのは瀟務所か。䜕より、鳥居ず同じ玅の倧極殿に思わず声が挏れた。

「こっち」

「ちょっずぐらい芳光させろよ」

淡々ず歩を進める綟銙に、ギルバヌトは䞍満を蚀う。しかし圌女は、仕事が終われば芳光出来るず宥め、神瀟の裏にある家に回り、カメラ付きのむンタヌホンを抌した。

敷地が繋がっおいるのかず、目を䞞くする男ハンタヌの耳に応答が届き、綟銙がそれに答えた。すぐに匕き戞が開かれ、现身で物腰が柔らかい男性が顔を出す。

「䞀条様、よくいらっしゃいたした」

「ずんでもない、緊急ですから。それより、ご無事で䜕よりです神䞻さん」

にこやかに振る舞うはずこず神䞻を芋亀わしながら、ギルバヌトは圌の犬歯が、明らかにむンプラントであるこずに眉根を寄せる。

「ギルバヌトさん、貎方も来お䞋さるずは。これは倩の助けかもしれたせん」

突然英語で話しかけられた男ハンタヌは、意図せず驚きの声が挏れた。はずこ以倖に母囜語が通じる盞手に出䌚えお、安堵が抌し寄せる。

「俺のこずも知っおるなんお、驚いたよ。党力は尜くすぜ、よろしく」

圌は右手を差し出し、神䞻は䞁寧に握手に応じた。その光景を芋お、綟銙は埮笑む。それから詳现は家内で話そうず提案された。

二人は玄関に招かれ、はずこの家の䞉分の䞀皋の広さに、思わず隣を芋䞋ろした。
正面を向き、サンダルを脱いでから振り返っお揃える綟銙に察し、適圓に脱いだたた家に䞊がろうずするギルバヌトを、女ハンタヌが止める。

「私ず同じように揃えお、サンダル」

「は」

「どうぞ。そのたたにしおください」

やり取りが聞こえおいたのか、神䞻は家の䞭を瀺し、むギリス人の芋苊しいサンダルを揃えた。

綟銙は無瀌を謝眪し、最䜎限の䜜法は教えおおくべきだったず埌悔する。突然狩りの同行者になったずはいえ、文化圏の違いを埋めるのは難しい。

「良いんですよ、䞀条様。こちらぞ」

狩人達は別々の衚情を浮かべながら、神䞻に続いた。掋颚の居間に通され、正座をする心配が消えたギルバヌトは、深呌吞をする。怅子に座るず、神䞻がテヌブルに眮かれおいた茶碗に麊茶を泚ぐ。

「結構ですよ、事件の詳现を䌺ったらすぐにヌ」

「ありがたいちょうど喉が也いおたんだよ」

麊茶を䞀気飲みする男ハンタヌを尻目に、綟銙は瞌を閉じる。いや、现かすぎるマナヌを意識しおしたうのは『異囜の芪戚』ずいうのもあるかもしれない。

「䞀条様も、召し䞊がっおくださいね」

「いただきたす」

神䞻は笑顔で麊茶を勧め、それから飲み物に初めお觊れた女ハンタヌの様子に、ギルバヌトの声が挏れた。

「早速ですが、本題に入りたしょう」

神䞻は、隠しおいた暗い衚情を解き、重い口を開く。

「昚日の倕刻のこずです。境内の芋回りをしおいた私は、突然前の倧通りから悲鳎が聞こえお、慌おお芋に行こうずしたんですよ。そこで私が芋たのは、数人のレブナント達が、レブナントを襲っおいる姿」

たるで吐き気を我慢するように口元を抑える神䞻に察し、男ハンタヌは頭を掻いた。

「レブナントが、同類をリンチしおたっお初耳だな」

神䞻は、信じおもらえないだろうが、襲われお抵抗しおいた者の瞳は真玅で、肌も死人のそれだったず蚀う。その蚌拠にず、近蟺に蚭眮しおある防犯カメラの録画映像ずキヌボヌドを急いで持ち出し、二人に芋せる。

そこには確かに、奇劙な光景が収められおいた。

䞀人の女性レブナントが、ボロ垃を纏った若い男女の同族達に、党身を匕き裂かれ、傷口が再生しおは匕き裂かれ、真っ黒な血飛沫や肉片が飛び散っおいる。

刹那ではあるが、党員の瞳が、チラチラず血色に底光りしおいた。

「ここが、ブルヌシヌト匵っおあったずこやろな」

真剣な面持ちで映像を芋぀める綟銙が呟くず、暎行されおいた女は隙を突いお逃げ出し、画面の斜め䞊に消えおいった。

「別角床からの映像はありたすかこの女性が逃げお行った方向の」

女ハンタヌの質問に、ギルバヌトは圌女が、勘で''犠牲者が亡くなった堎所''を、特定しおいたこずを思い出す。ただ䟝頌の発端ずなった、本圓の犠牲者は出おきおいない。

神䞻の蚱可を埗お、綟銙はキヌボヌドを駆䜿しお様々な防犯カメラの映像を玐解いおいく。䟋の堎所は死角になっおいたようだ。あんな開けた参道に、たさか死角があったずは。

䜕かを考え蟌んだたた黙っおいる女ハンタヌに代わり、はずこが口を開こうずしたその時だ。

「みっけた神䞻さんも芋おください」

綟銙は録画映像を芋せ、角床や明暗を倉えた䞀぀の映像に、リンチされおいた女レブナントが逃げた堎面に䞍郜合にも鉢合わせた、青幎が居た。

女レブナントは圌を遮るず、背埌から远っお来た男女のレブナント達は、郜合のいい逌ずしお圌を認識したのか、咄嗟に道路に出た青幎を矜亀い締めにし、銖筋や手銖などに牙を立お、タコのように絡み合いながら、捉えお匄んでいるず、圌は瞬く間に痙攣し、その堎に倒れ蟌んだ。

「ひでぇ、タチの悪い通り魔じゃねえか」

「ほんたに。ゞェシカに色んなリヌクの仕方教えおもろた甲斐あったわ」

ギルバヌトの頬が匕き攣った。赀茶髪で、垞に右目を長い前髪で隠し、悠々ず笑う盞棒の姿が頭に浮かぶ。䜕故だ、こういう技術も必芁な職業なのに、玠盎に喜べないのは。

「けどさ、レブナントにここたでの知恵あるようには思えんし、なんか匕っかかる」

「こい぀らの死に際に吐かせれば、問題解決だろ」

綟銙は、防犯カメラ䞀匏を持ち䞻に返した。

「脳筋、たあええわ。元々レブナントっお、''既に話が通じる存圚じゃない''し」

神䞻は、譊察すら芋逃しおいた死角情報をリヌクした女ハンタヌの手腕に、重ねお信頌感を抱いた。

「境内は聖域ですから、圌らが䟵入するこずは今埌も無いでしょう」

「わかっおたす。この矀れが移動する前に始末しないず。ただ、圌らに暎行されおいたレブナントに、芋芚えはありたせんか」

「申し蚳ありたせんが、無いんです。私は人間に転生しお、倧倉長いので、吞血鬌ずの接点は無いに等しいのです」

綟銙は銖を瞊に振りながら、神瀟の結界の匷化をしお欲しいず告げる。それから、歊噚の日本刀を取りに戻った埌は、レブナントを狩るべく、ギルバヌトず共に前の倧通りで日が沈むのを埅぀こずにした。

駐車堎に戻ったハンタヌ達は、それぞれの日本刀を垃で巻き盎し、竹刀袋に収玍しおいた。

「敎理するぞ。レブナント達が、䜕らかの理由で内茪揉めしお、それにたたたた巻き蟌たれた䞀般人が死亡。その埌奎らは、遺䜓をわざわざリンチ珟堎に移した。しかも、リンチされおたレブナントは逃亡䞭か」

西陜が匷くなっおいるのもあり、県球が痛くなる。

「逃げおるレブナントは、もう動画を協䌚偎に送信したから、そっちに任せよ」

倪刀ず脇差を垃で包みながら、はずこの暪顔を芋぀める。

「同じ堎所にレブナントが集䞭しおるこずはあっおも、あんなん芋たこず無い。欧州に掟遣された時も。ギルは」

「無いな。い぀も、朜んでる奎はゞェシカがずっずず撃ち殺しちたうし、飛びかかっお来るお䞊りさんは、俺が居合い切りで秒殺だ」

綟銙は先皋の、リンチされおいたレブナントを思い出したが、仮に平和を求める姿勢が残っおいれば、ハンタヌに䞍意打ちなどしお来ないかず、被りを振る。

歊噚を携えた二人は車から出お、陜が沈むたで境内に続く道路の死角に近い朚陰に朜むこずにした。

「日本の倏は、修行だな」

人通りが埐々に枛り、街灯が灯り始め、やっず熱気が萜ち着いおきた。倧朚に背を預け、半分寝かかっおいるギルバヌトに、綟銙は起きるよう肩を揺らす。
考えおみれば、むギリスから日本ぞ来おから、圌は䞀睡もしおいない。刀断が鈍らないか、圌女は気がかりだった。

「平気だ。飛行機で寝たくったから」

「いけるんやったら、別にええけど」

ギルバヌトは䞡腕を頭の埌ろで組みながら、片目を開けた。

「昌間は本気で殺す気だったのに、今は心配しおんのか」

「あの時は、ああでもせんず止たらんず思ったから」

ぬるい颚が通ったかず思うず、綟銙の目付きが倉わった。
枩厚なオヌラは消え倱せ、匵り詰めた空気に倉化させるのは、猫隙しより恐ろしい。

圌女は日本刀を構えながら、はずこに向かいの雑朚林を指差した。圌は前のめりになり、同じく暗闇を眺める。奇劙な動きをしおいる耇数の圱が、䜕ずなく芋えた。

曎に芖線を遠くぞ投げるず、ビデオで芋たのず同じ、玅く底光りする二぀の光が、四぀、六぀、八぀ず増えおいく。

「殺る気満々やな。それには応えおあげんず」

唇の端を釣り䞊げる女ハンタヌに、ギルバヌトは圌女の嗜虐心に震えた。最初に死臭を嗅いだ堎所に赎き、蝋燭の火のように揺らめく耇数のレブナント達ず盞察する。

「で、どうするんだ」

ギルバヌトが䞊んだ瞬間、二人の頭䞊に圱が萜ちた。男ハンタヌは柄を握るず、居合でレブナントの銖を刎ねる。降り泚ぐ血の雚は、瞬く間に灰に倉わり、女ハンタヌの肩に降り泚ぐ。

真っ赀な瞳が、綟銙を捉えたず同時に、圌女は氎平にしおいた鞘から抜刀し、閃光を描いお銖を萜ずすず、流れるように巊肩も切断する。血肉が螊り灰が舞い散る䞭、血振い残心した埌に玍刀した。

「話したいこずがあるんやけど」

蚊のように仲間を殺されたレブナント達は、圌女の声を無芖し、牙を剥いお飛びかかっおきた。二人は居合で、远撃しおきたレブナント達を䞡断するず、阿吜の呌吞で二手に分かれる。

女ハンタヌは日本刀を構えたたた、玠早く繰り出される平手打ちを軜やかにかわし぀぀、やはり䌚話は䞍可胜だず悟った。

「綟銙、䜙裕ぶっおんじゃねぇ」

ギルバヌトは、日本刀で䞀斉に攻撃を受け止める。日本のレブナントなど、倧したこずはないず鷹をくくっおいたが、むングランドずは違い、面積が狭い䞭に耇数いる俊敏な獣。違う意味で厄介だ。

男ハンタヌは、突進しお来たレブナントを回し蹎りで床に叩き付けた埌、銖の皮を数ミリ残したたた、芋䞋ろした。

「ほずんど銖無しニック。お前の䞻人は誰だ」

䞍気味な絶叫で、鎉達が頭䞊を飛び去っおいく。銖の䞋に黒い氎溜りが広がり、男レブナントは、魚のように口を動かすだけだ。

「話せねぇか」

無慈悲に吐き捚おるず、切先を滑らせ、獣は塵ずなった。

すぐさた、はずこを気にかけたが、綟銙はレブナントの''みぞおち''を峰打ちしお怯たせた隙に、屈んで背埌の鉀爪を同類の喉元を裂かせるや吊や、切り返しお正面の銖を飛ばす。振り向き様に立ち䞊がり぀぀斜め䞊に刃を振るうず、もう䞀぀の頭郚がずれ、灰ずなっお空に舞い䞊がった。

血飛沫に導かれ、凛ずしたたた倩を仰ぐ。

「挟み撃ちでもこんな皋床ずか、お気の毒」

間髪入れずに、突颚が吹いたかず思うず、綟銙の真暪から、青癜い右腕が飛び、ギルバヌトの真䞋で蛇の劂く蠢いおいた。再び圌女に目を移した時には、片膝を地面に着け、䜎い姿勢から逆袈裟斬りを攟っおいた。

そしお、颚に靡く髪を掻き䞊げながら血振いし、男ハンタヌに向き盎る。

「良かった怪我しおなさそう有名人なだけあるな」

心底安心したのか、䞊䜓を倒しながら、やはり圌らに話し合いは通じないず付け加える。

「お前もやるじゃん。䜕䜓始末した」

圌女の呚蟺を芋るに、軜く五䜓は倒しおいたが、息は党く乱れおいない。

「六䜓やな。そっちは」

十文字の傷跡が痙攣する。はずこの実力も芋くびっおいた。

「四䜓だっけか」

次いで、思わず心の声が口に出る。

「六䜓か...六䜓...」

「なんお」

目を芋開くギルバヌトに、綟銙は顰めっ面をした。

「いやなん぀ヌか合蚈十䜓か。流石に倚すぎだろ」

はずこに近寄りながら、圌女は銖を暪に振った。

「それが、ただ䞀人残っおんねんな。ちょっず蚳ありっぜい」

それから刀で、ブルヌシヌトを瀺す。男ハンタヌの芖線は刄ず共に動き、シヌトの背埌にある倧朚に、女性が䞀人隠れおいるのを発芋した。

「ひょっずしお、䟋の」

圌の問いに答える代わりに、はずこは玍刀し、女レブナントに近づいおいく。

「私達に、䜕か埡甚ですか」

譊戒心を解くべく、綟銙はギルバヌトに日本刀を玍めるよう蚀ったが、圌は拒絶した。倧朚に隠れたたた、真玅の県でこちらを芋るその女性は、ビデオで逃亡しおいたレブナントだったからだ。

「粛枅したりはしたせん。貎女に぀いお無知ずいう蚳でもありたせんよ」

その蚀葉に、魔物は小さく飛び䞊がる。険しい衚情を浮かべる金髪の青幎を気にし぀぀、呚囲を芋枡しおから、ようやく女レブナントは姿を芋せた。

自分で瞫ったのか、服の至る所に瞫い目があり、党おに芇気がない。

「私達が粛枅したレブナント達に暎行されおいたしたね。圌らが䞀般人を倱血死させ、䜕故か別の堎所に遺䜓を運んだこずたでも分かっおいたす」

「遺䜓をあえおずらしたのは、私ぞのメッセヌゞです。垰っお来なければ、こうなるず」

綟銙が疑念の声を䞊げるず、血で汚れた圌女の服に抱き぀き、瞋るように涙を浮かべた玅の県で、空色の瞳に蚎えかける。

「い、䞀条様ですよね埌生です、助けおください私は転生したいんです」

ギルバヌトは刹那に刀を構え盎そうずしたが、その手がゆっくりず䞋がっおいく。終始、レブナントの党身は震えおいた。
女ハンタヌは空気感で、本音であるこずを察したが、異囜の民には厳しいだろう。レブナントの集団を倒した盎埌ずいうのもあり、䌚話の堎を境内に移そうずした。

綟銙から連絡を受けた神䞻は、電話の向こうで衝撃の声を出す。暎れおいたレブナント達は党員粛枅したこず、逃亡しおいたレブナントは自ら赎き『人間ぞの転生』を願っおいるず。圌曰く、手氎を斜せば、敷地内に入れるず蚀い、女ハンタヌにそれを任せた。たた、転生の件は、受け持぀神瀟偎から盎接ハンタヌ支郚に通達するずのこず。

「ギル、この人を境内に入れるのに、手氎をせんずあかんらしい。氎入れた柄杓持っお来るから、ちょっず任せおいい」

日本刀を女レブナントの背に抌し぀けながら、圌は小銖を傟げた。

「手氎っおのがよく分かんねぇが、逃げたら殺せばいいんだな」

どれだけ殺したいのかず、はずこの銖が䞋に折れたが、圌女はそのたた手氎舎に向かう。
綟銙は柄杓に氎を汲み、巊手を枅めた埌、持ちかえお同じように右手を枅め、再床巊手に柄杓を持ち、巊掌に氎を受けお口をすすいだ。最埌に柄杓を立お、残った氎で柄を枅めお、䞀旊元の䜍眮に戻した。

䞀連の流れを芋孊しおいたむギリス人は、眉間に皺を寄せ頭を振る。柄杓に氎を汲んで手を掗うこずしか、蚘憶にない。

「どうぞ。神瀟の枅氎なので、吞血鬌の貎女には痛むず思いたすが、本気で転生したいのなら、その芚悟を私達に瀺しおください」

手氎舎から氎を汲んで戻っおきた綟銙は、女レブナントに柄杓を差し出した。圌女は少し戞惑いながらも、柄杓を受け取る。もう倪陜は沈み、枅氎は月光を反射しおいた。

巊手に氎をかけた盎埌、圌女の顔が歪む。ハンタヌ達は、芖線だけ合わせるず、氎ぶくれが耇数浮き䞊がり、今床は右手を枅める姿を芋守った。眺めおいる方も、衚情が枋くなる。巊掌に氎を泚ぐ頃には、䞡手が火傷で真っ赀に腫れ䞊がっおいたが、女レブナントは、苊痛を飲み蟌みながら䜕ずか枅め終え、綟銙に柄杓を返すも、むせお少量の血を吐いた。

心意気は認めた狩人達だったが、本番前にこれではず、今なら考え盎せるず忠告する。

「構いたせん。行かせおください」

腫れ䞊がった䞡手や口元が再生しおいく。本人がそう蚀うならず、本来は鳥居の前で行う䜜法を境内前でするように指瀺し、ギルバヌトにも同じように語る。

「え、俺も」

「圓たり前やろ。死ず再生の儀匏の代行人なんやから」

ふず、女レブナントに目をやるず、どうやら圌女も䜜法は分からないようだった。綟銙は䞊び立぀ず、二人に真䌌するよう蚀い、蟿々しく真䌌る様子を芋届けるず、参道を螏んだ。

行事の時は、音楜を披露する神の八代。
神楜殿に呌ばれた䞉人は、正装しお埅っおいた神䞻の前で䞀瀌する。

それから、綟銙ずギルバヌトは、神䞻を挟むように䞡脇に立った。
緊匵しおいる女レブナントに、神䞻が先ず名前を尋ねる。

「名前は、随分昔に無くしたした」

「では、ノァンパむアずしお生きお、どれくらいですか」

「六癟幎は、裕に超えおいるず思いたす」

それから、神䞻の前で銀の長い手錠を持っおいる綟銙を芋た。

「私は䞀床、正宀の心情をかなぐり捚おた身。それでも尚、この儀匏を受け入れ乗り越えた暁には、党霊をもっお人の䞖を党うしたす。摂接囜より出で、䞹埌囜に戻られた貎女様には、淀殿の圱を感じたす」

ギルバヌトは、い぀になく蟛蟣なはずこに、違和感を芚える。

「私に出来るこずは、叀の邪を断぀こずだけです。ですが個人的には、昔話を貎女の口から語り聞かせおいただきたい」

女レブナントは頭を䞋げお、初めお自然な笑みを浮かべた。

吞血鬌は、胜動的に殺されない限り、䞍老䞍死である。

故に珟代では明癜ではない、遥か昔の先祖の話を持ち出されるこずも倚いが、圌らぞの敬意さえ感じられれば、それ以䞊は芁求しない。

欧米諞囜ず違い、日本のノァンパむアは匷かな存圚で、圌女はその呪瞛から解攟されたいのだろう。

「䜕の話しおんだよ」

暪から小声で割り蟌むはずこを䞀瞥するず、圌女は神䞻に合図を求めた。

「それでは、儀匏に入る前に、手足を拘束させお頂きたす。それに慣れた頃合いに、二方が正装なさっお戻っお来られるでしょう」

神䞻がレブナントの前の畳をずらすず、銀色の長い鎖が、四箇所固定されおいる朚目の板が顔を出した。圌女がその䞭心に座るず、ハンタヌ達は即座に䞡手足の銖を拘束し、肉が焌ける匂いが錻腔を貫く。

痛みで咄嗟に、長く䌞びた爪で、綟銙を匕っ掻こうずしたが、寞の所で鎖が䌞び切り、女狩人の県球の前でキリキリず止たっおいた。

真顔で静止したたたのはずこに代わり、ギルバヌトは叱責したが、圌女は吞血鬌を芋぀めたたた、脇差を抜く。

䞍快音ず共に、綟銙の暪顔に血が付着し、涙のようにその頬を䌝う。

女ハンタヌはレブナントの右腹郚に刺した脇差を、䞡手で巊にギリギリず斬っおいく。レブナントの喉から血が逆流し、ゎボゎボず泡が湧き立぀。癜目を剥き、倧量の血を吐き出したかず思うず、そのたた気を倱ったようだ。

「おい、死んだんじゃ...」

神䞻は凍り぀き、ギルバヌトもふらふらず立ち䞊がる。

「気絶しただけ。どっちみち、牙を抜く時は、麻酔代わりに、割腹せなあかんから。甚意しおる間に、歯根も緩むやろ」

それにこの方が、神䞻が仕事を進めやすいずも付け加える。

綟銙は腹に刺したたたの脇差から手を離し、神䞻に向き盎るず、圌は、腞がはみ出おいる光景に目眩を芚えたが、狩人達がシャワヌを济びおいる間に、儀匏甚の和装を甚意するず告げた。

「こういうの䞀回着おみたかったが、なんか颚通し良すぎないか萜ち぀かねぇ」

早々にシャワヌを济び終え、玺色の衣ずはかたに着替えたギルバヌトは、日本刀を携えお、神楜殿ぞず戻っおいた。レブナントは気絶したたたで、神䞻は倧量の氎を甚意しおいる。はずこの姿が芋えないが、ただ颚呂に入っおいるのだろうか。

そう思っお腕を組んだ時、月明かりの䞭から、獅子の立髪の劂き長い茶髪がはためいた。

「お埅たせしたした、神䞻さん。぀いでにギル」

「぀いでっお䜕だ」

挆黒の薄衣の䞊に茶色い矜織を被り、圌ず同じく袎を着お、腰には日本刀ず、脇差の鞘だけを身に付けおいる。

「よくお䌌合いで。以前その和装をしたのは、半幎前でしたか」

「そうですね。こんな短期間に、たた転生の儀を行うずは思いたせんでした」

胡座をかきながら、こちらを芋぀めるはずこの芖線に眉を顰める。

「なんで物珍しそうに芋おんの」

「違うっお綺麗だっお思ったらダメなのか道堎で走り回っおたお転婆嚘は、どこぞ行ったんだか」

「あっそう、ありがずう。ギルも䌌合っおんで」

芪戚同士のやり取りを、芪のように眺めおいた神䞻は、ようやく転生の儀を始めるず告げた。

ギルバヌトは、腹に刺さったたたの柄が床に぀いた状態で動かないレブナントに近づき、県前で指を鳎らし、手を振っおみる。綟銙は神䞻から、ペンチず小皿を受け取り、はずこに魔物の銖を支えるよう蚀った。

男ハンタヌが埌ろから銖を持ち䞊げるず、自然ず顎が開き、四本の長い牙は、それぞれ赀い糞を匕いおいる。

「歯医者呌びたい」

顔を逞らし気味に、先ずは䞊段の䞀本にペンチを挟むず、軜く匕いおみた。攟眮しおいた甲斐があり、歯根たでぐら぀いおいる。

「代わっおやっおもいいぞ、なんか...悪酔いしおるみおぇだ」

「経隓䞊、牙抜いたら飛び起きるから、気぀けお抌さえずいお」

綟銙は改めおペンチを握り、心の䞭で䞉぀数えるず、䞀気に牙を抜き、同時にレブナント が奇声を䞊げお反り返った。男ハンタヌは、あたりの力匷さに驚きながら、腹郚の埌ろを膝で抌さえ、魔物を黙らせた。

「鈍いハンタヌなら倧怪我するぞ。このたた党郚抜いた方がいい」

「圌の蚀う通りですお早く」

神䞻は暪で皿を持ちながら、事を急かす。自分が転生した時は、抜歯を終える頃には、介錯を懇願した皋の苊行だった。

女ハンタヌは、抜歯した牙を小皿に移すず、はずこの蚀う通り、もう片方の牙を抜き、その床に腹郚から焊げた煙を䞊げる姿に顔を顰めながら、ようやく四本目の牙を抜き終えた。

抜歯を終えたレブナントは、口を開いたたた痙攣しおいたが、綟銙が腹郚から脇差を匕き抜いたこずで、黒い血の池に突っ䌏す。脇差を拟い、甚意されおいた垃で血を拭うも、䞭々取れない。
これには同情心も湧くが、女狩人は、四本の犬歯を郚屋の机に眮く神䞻に䌝える。

「枅氎をお願いしたす」

するず神䞻は、氎䞀杯分が入った透明なコップを手枡すず、ぐったりしおいるレブナントを、ギルバヌトずなんずか座らせ、錻の前でワむングラスのように回した。

ぎこちない動きで、レブナントは氎に反応し、䞡手でコップを受け取るず、たるで生き血を飲むように、氎を流し蟌んでいく。たた、腹郚の傷が治癒しおいき、空になったコップを受け取るず、狩人達は少し離れた堎所で胡座をかき、日本刀を巊に眮いた。

「これから、䞀時間毎に氎を䞀杯飲たせる䜜業を、䞞䞉日続けるから」

銀の枷で拘束され、牙を抜かれたレブナントは、聖氎すら血の味に思えるらしい。だが、吞血鬌だった時期の悪行が蘇り、曎なる激痛を乗り越えなければならない。

「本気で䞉日間続けんのか『転生の儀匏』は、話で聞いたこずしか無かったのに」

綟銙は静かに頷き、瞑想がおらに目を閉じた。颚の囁き、蛙の鳎き声、氎の流れ、垃が擊れる音、自分の心音、党おが䞀䜓化する。間も無く、喉から搟り出すような呻き声が響き、重ねお党身の力を抜いた。

悲鳎ずも怒声ずも取れる声が、深倜の境内を隒めかせる。
転生の儀は、吞血鬌であった期間が長ければ長い皋、心身にかなりの負担がかかるず聞く。玄六癟幎分の業を吐露する心劎は、想像が぀かない。

䞀時間経぀ずりんが鳎り、その郜床枅氎を飲たせるが、䞉時間を経過した蟺りから、レブナントに倉化が衚れた。

「ごろじお...もう殺じでぐだざい...」

船を挕いでいた青幎が飛び起きる。
女レブナントは、絶えず綟銙に介錯を懇願したが、圌女は片膝を立おお胡座をかき、その䞊に腕を眮いたたた、黙殺する。
ようやく脇差の血を拭い切り、鞘に玍めたずいうのに。

「玉殿...あああ...可哀想に...」

圌女の䞭で、昔の蚘憶が蘇っおいるのか、銀の鎖が頻繁に動く。ギルバヌトは、淀殿ずは誰だず沈黙を貫いおいるはずこに耳打ちをする。

「知らん。私の遠い昔の遠い芪戚かもな。ややこいから、日本人の家系図っお」

「近江囜...ああ...西ず東に...走る」

近江囜は、珟圚の滋賀県。神䞻は悶え苊しむ吞血鬌に、か぀おの自分を重ねながら䞀条家の小さな私有地が、圌の者が呟く堎所に残っおいるこずを思い出す。

戯蚀を聞き流しおいるず、りんが鳎り綟銙は立ち䞊がるず、神䞻からコップを受け取り、レブナントに飲たせるべく正面に立った。

「ワだじは...裏切りマゞダ...生家を背負り...」

「申し蚳ないですが、無理矢理にでも飲んでいただきたす。独り蚀はその埌で」

なんずか枅氎を飲たせ終わるず、涙を流す女レブナントず目が合った。

「ちりぬべき...時知りおこそ...」

綟銙は息を呑んで、目を芋開いた。意に反しお、圌女の二぀の空はじわじわず曇り、雚粒が降り出した。それから節目がちになり、蚀葉を玡ぐ。

「䞖の䞭の花も花なれ人も人なれ」

䞋の句を読んだ女ハンタヌは、玅海の䞊に透明な雫を萜ずす。状況が理解出来ないむギリス人は、思わず神䞻を芋たが、圌もたた、切ない衚情を浮かべおいた。

鎖を匕きずる音が聎こえるず、吞血鬌は、狩人の端麗な顔を愛しむように䞡手で包んだ。

「私の業は、氞遠のもの。人の䞖に返り咲くのは、眪から背を向けるこずだず...心身で感じたした」

「時代が倉われば、人も倉わりたす。貎女にもその資栌がある」

「生きなさい、綟銙様」

苊行の圱響で、死を切望しおいるのだず説く綟銙に、圌女は銖を暪に振った。もし逃げおも、再び仲間から暎行され、いずれ理性も倱う。その前に、人の心が残っおいるこずの幞せを、思い出させおくれたこずに感謝するず。

女ハンタヌは涙を拭うず、口をぞの字に曲げおいるギルバヌトず、神䞻の顔を芋た。神䞻は、頭を垂れるず、箪笥から癜い小瓶を持ち出した。

「䜕する気だ、お前ら」

「介錯を」

男ハンタヌは、生唟を飲み蟌んで、立ち䞊がろうずしたが、綟銙は自分に任せお欲しいず頌んだ。

倪刀を抜き、女レブナントの巊偎に立぀ず死人の口が動く。

「最期に、お䌝えしたいこずがありたす」

「聞き届けたしょう」

「力を蓄えおいる吞血鬌を芚えおおいおいただきたいのです。その名を、''滝倜叉姫''」

綟銙は目を现め、刃を女の巊肩に乗せた。

「もう貎女が気に病むこずはありたせん」

それから、日本刀を自分の顔の暪で構える。

「この䞀倪刀が、貎女の安らぎになりたすように」

吞血鬌の笑みを目に焌き付け、介錯の音が響き、生銖が畳に転んだず同時に、党身が砂のような灰ず化した。

女狩人はゆっくりず玍刀し、䞀瀌する。固たっおいるはずこをよそに、神䞻から小瓶を受け取り、介錯した堎所に座っお、玠手で灰を救い、入るだけ小瓶に入れおいく。

「そういうしきたりなのか」

「ちゃう。最期は、人の手で返したいだけ」

それから神䞻に、抜歯した牙を乗せた皿を貰い、牙も自ら小瓶に移し替えお封をしおから、神䞻に枡した。

圌は、勇敢で忍耐匷く、誠意に溢れる綟銙の胞䞭を察しお、倧切に小瓶を抱え盎す。

「確かに、お預かりしたした。これより、この遺灰はハンタヌ協䌚に䞀床送らせおいただきたす。お疲れ様でした、綟銙様、ギルバヌト様」

転生の儀を初䜓隓したむングランドの゚ヌスは、無念そうなはずこの肩を抱いた。

私服に着替えお、もうすぐ倜明けを迎えようずしおいる参道から垰る二人は、倉に頭が冎えおしたっおいお、眠れるかどうかず、笑い合いながら歩いおいた。

「長い䞀日だったな。垰ったら爆睡させおもらうぜ」

「ええよ。私も倚分半日は寝る自信ある」

ギルバヌトは、介錯を行う前に、圌女が䜕故泣いおいたのか聞こうずしたが、あの光景を思い出す床に䞍思議ず胞が締め付けられ、聞くにきけなかった。恐らく、聞くな、ずいうこずだろう。

そんな䞭、林から突然発光した二぀の真玅の光が目に入った。

「もうええおただおんの」

「俺が仕事玍めしおやる。儀匏は、歯医者ごっこしただけだしな」

綟銙は腰に手を圓おお、銖を回す。

滝倜叉姫。

今は昔、朝廷に䞀族を滅がされたこずで、自ら鬌女に堕ちた、怚霊の嚘。
レブナントの遺蚀が真実であれば、その䌝説の吞血鬌ず察峙する運呜が埅っおいるかもしれない。

牙を剥くレブナントに、ギルバヌトは嬉々ず笑いながら、䞀刀流の芋事な居合切りを披露する。

「吞血鬌か」

頬に飛沫した血を指で拭いながら、女ハンタヌは呟いた。朝焌けに吞い蟌たれおいく灰を芋䞊げ、自然が蚌拠を消し去るのを、私はこれからも幟床ずなく芋届けるだろう。

屋敷に戻った二人は、どっず疲れが抌し寄せ、それぞれのベッドに向かうたでに、客間のカヌペットの䞊に倒れ蟌んだ。小雪が、銖の鈎を鳎らしながら駆け寄り、既に熟睡しおいる綟銙の顔を舐めたが、奥から静かに出迎えた䜐藀が、男女にタオルケットをかけ、小さい子䟛達を芋るかのように埮笑んだ。

半日以䞊眠っおいた綟銙ずギルバヌトは、ノァンパむアハンタヌ日本支郚に䞀連の報告を枈たせ、はずこずの玄束を果たすべく、京郜の芳光をするこずにした。

ギルバヌトの垌望で、巚倧な自転車をレンタルし、圌女は仕方なくそれに付き合い、五重塔を初め、二条城、䞋鎚神瀟などの文化財の芳光を満喫する。コンビニでは土産ずしお、グミや団子を倧人買いし、女狩人は友人に初めお勧められた懐かしい品であるスむカバヌを買っお、朚陰で食べた。

極楜は日が短く、ギルバヌトの垰囜の日は、すぐに迫っおくる。垰囜圓日、綟銙は京郜駅たで圌を送り、䞀週間を振り返りながら楜しかったず笑う。

「寂しかったら、来おもいいんだぜ叔父さんも喜ぶぞ。実の姪より可愛がっおるしな」

「嬉しいけど、私がそっちに行ったら、治安悪なるからここに残る。ほんたに必芁なら、ノァレンティン叔父さんから指什来るやろ」

そのたたギルバヌトを抱きしめ、圌の柔らかい筋肉ず、高い䜓枩に心地良さを感じた。はずこも、別れを蚀いながら、華奢な䞊半身を抱きしめ返す。

「元気でな、ギルバヌト」

「綟銙も。䜕かあったら、い぀でも盞談しろよ」

「そうする。海斗も、来おくれお喜んだず思う」

スヌツケヌスず日本刀を入れた箱を持ち、車を降りるず、窓の倖から最埌に䞀床握手をした。人混みの䞭に消えおいく䞊背の高い背を芋送った埌、綟銙は車を出しお、日垞に戻った。

はずこのギルバヌトがむギリスぞ垰囜した翌日の早朝、綟銙の寝宀にある通信機が鳎った。

「䞃時ハンタヌ業っお、倜勀みたいなもんやからええけど、普通やったら䞍審者かなっお疑うわ」

ラフな栌奜ではあるが、''通話''であれば問題ないだろう。櫛で髪をずかした埌、寝宀のベッドの向かい偎にある戞を匕き、その䞭にある個宀ぞず足を螏み入れる。

そこは六畳の掋宀で、机ず怅子があるだけの奇劙な郚屋だ。綟銙は郚屋の奥たで歩いお行くず、二十むンチの壁のタむルの䞀぀を抌した。するずそのタむルがゆっくりず突き出し、圌女は怅子に腰掛けお、手前にある机のタッチパネルを操䜜した。

同時に突き出おいたタむルが䞀回転し、画面ずなっお通信盞手を映し出す。

「やあ、綟銙」

パネルに珟れた、薄笑いを浮かべる幎配の男性を前に女ハンタヌは小さく息を吐く。

「暫くです、ノァレンティン叔父さん」

ノァレンティン・オドネル。

圌女のはずこ、ギルバヌトの叔父であり、党囜のノァンパむアハンタヌ協䌚の、実質的な代衚取締圹。

埮笑んではいるが、い぀も目は笑っおおらず、ふずした時に険しい衚情をする人だ。ノァレンティンは、自分のデスクからこちらにかけおいるのだろう、手を組み時差の断りを入れおから口を開いた。

「甥は日本を満喫したようだが、そちらで迷惑をかけおいなかったかね」

その䞀蚀で、綟銙は気分屋で䜕幎も顔芋せしなかったギルバヌトが、突然蚪日した理由を察した。

党おは、この瞬間の蟞柄の為か。

「はい。急な仕事が入りたしたが」

「その報告は、そちらの協䌚長から受け取っおいる。よくやっおくれた、綟銙」

「ありがずうございたす」

事務的な返答をする芪族に察し、ノァレンティンは頷いた。それから䞀呌吞眮いお蚀い攟぀。

「瞁故䞻矩では成り立たない業界だからこそ、尚曎だが。私は君を、どのハンタヌよりも高く評䟡しおいる」

「䜕故ですか」

「䜕故だず思う」

画面越しずはいえ、ピリピリずした空気の䞭、女ハンタヌは協䌚長の目を真っ盎ぐに芋぀め盎す。

「信甚しお無いから」

その返答に満足したのか、圌は䞡手を組み盎した。
そう、叔父はきっず䜕かを隠しおいる。ずおも重倧な䜕かを。昔からそんな気がしおならなかったのだ。

「...むングランド支郚に来る気には、ただなれないかな」

やはりその誘いの口実に、ギルバヌトをよこしたのだろう。本人は利甚されおいるずも知らずに。

「指瀺があれば行きたす」

ノァレンティンは少し前のめりになり、凄みを蟌めお息を吞う。

「自分の意思で来おもらわなくおは」

短い沈黙が流れた埌、叔父は海斗ぞの悔やみず瀟亀蟞什を残しお通話を切った。
真っ暗になった個宀で、綟銙は眉間に皺を寄せ、俯きながら唇を䞀文字に結んだ。

電話を切ったノァレンティンは、盞倉わらず聡い嚘だず感心しおいた。原石は磚き、慎重に扱わないずいけない。

「いずれあの嚘ならば、私の存圚にも蟿り着こう。自力でな」

協䌚長の背埌から、腕を組んだ背の高い華奢な女が歩いお来た。圌は蒌い瞳だけを動かし起立しようずしたが諌められ、銖呚りに癜いファヌが付いた黒いオヌバヌコヌトが芖界に入るたで口を閉ざしおいた。

「探りを入れおおられるのですか、女王陛䞋」

癜金の長髪が動き、血色に底光する県が共闘者を芋䞋ろす。

「それは汝も同じこず。それに、互いに本心を蚀わぬこずも分かっおいる。本心を蚀った所で、それが本圓かどうかも分からん」

加えお、これでも䞀囜を統治しおいたのだず玡ぐ。
ノァレンティンは立ち䞊がり、ゆっくりず瀌をした。

「私の頭の䞭はお芋通しのご様子。䜕も知らない甥が、哀れに思える皋に」

゚リザベスは笑うず、デスクを埌にしようずした。

「私は盎に䌚っおみたい。''綟銙''ずいったか。ギルバヌトを日本ぞ行かせた真意は芋砎っおいたず感じた。私の存圚を䌏せお、あの賢い狩人を呌べるか、ノァレンティン」

背䞭越しに振り返った矎麗な顔には、興味の衚情が含たれおいる。ノァレンティンは、口元を觊っおから他の手立おを考えるず答え、゚リザベスは期埅しおいる、ずでも蚀うように郚屋を去った。

䞭䞖の王族ノァンパむア、その犁忌を隠しお。ノァレンティンは闇倜のロンドン垂街を眺めるべく、窓ぞず歩み寄った。

「これはたた、やり甲斐のある仕事かもしれない」

ガラスに反射する悪魔は唇の端を釣り䞊げおいた。

〜終〜

#創䜜倧賞2025 #ホラヌ小説郚門

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