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ギブス

 足の骨折のことで荒井医院へ行った。
 荒井医師からあんまり歩くなと云われていたのを、そう云われたって困るとばかり、この二週間普通にスタスタ歩いていた。まる一週間出張が入っていたから、普段よりも歩いたかも知れない。
 ことによると悪化していて、ギブスを架せられるようなことになるとかなわない。もしそうなったら平謝りに謝って、ギブスだけは勘弁してもらうつもりでいた。
 もっとも先生だって、謝られてどうなるものでもない。治そうとして謝られるのでは、何がしたいのだか一向わからない。

 じきに名前を呼ばれて診察室へ入ると、荒井先生は撮ったばかりのレントゲン写真を見ていた。そうして「ああ百さん、えぇとね」と話し出した。
 妙なのは、その写真がどう見たって手の骨格なのである。
 こいつ大丈夫かと思いながら黙って見ていると、先生はじきに「あ、これ違う」と言って写真を取り替えた。今度は足首なので、どうやら自分の写真である。
「ほら、ここのところがね、こう来て、ここ。ね? 折れてるんです」
 写真を指しながら教えてくれるが、全体こちらはどこがどうなっていれば正常なのかを知らない。だから指されたって一向わかるものではない。ほぉ、あぁ、など云って、感心した風を装った。
 それが好かったのか、結局ギブスはせずに済んだ。また、前回は金属の板を脚に沿わせて包帯でぐるぐる巻にされたが、もうそれは無くていいそうで、代わりに足首を固定するサポーターをもらって、巻いて帰って来た。


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