【MBTI(建築家)】緻密な地図と、迷子の楽しみ。
第一章 旅の始まりはスプレッドシートと共に
旅に出ようと決めるや否や、私の頭の中では高速でタスクが分解され始める。
まず最初に行うことは、旅行サイトを眺めることではなく、白紙のスプレッドシートを開くことだ。
私のような建築家タイプにとって、旅とは「楽しむもの」である以前に「完成させるべきプロジェクト」として定義される。
目的地を決め、移動時間を分単位で計算し、交通費の合計を算出し、宿泊施設の評価を四つの項目で点数化する。
この作業がたまらなく愛おしいのだ。
誰にも頼まれていないのに、完璧な旅の行程表という名の要塞を作り上げることこそが、私の至福のひとときだ。
例えば、電車の乗り換え時間が四分しかないようなタイトなスケジュールの空欄を埋める作業には、まるでパズルを解くような知的な興奮がある。
もし私が旅の幹事を引き受けたなら、参加者は全員、私が作成した緻密な旅のしおりを渡されることになるはずだ。
そこには各観光スポットの滞在時間、ランチの予約状況、さらには万が一の悪天候に備えた代替案までが、まるで軍事作戦のように記されている。
友人に「ここまでやらなくてもいいのに」と苦笑いされることもあるが、私には理解できない。
効率を無視した旅など、それはただの彷徨いにすぎないのではないだろうか。
無駄な時間こそが旅の醍醐味だと誰かが言っていたような気もするけれど、私にとっては無駄な時間はストレスの源泉に他ならない。
計画通りに物事が進む、あのカチリと歯車が噛み合うような快感を味わうために、私は今日もせっせとセルを埋め続けるのだ。
第二章 崩れ去る要塞と、見知らぬ路地裏
しかし、完璧なはずの計画には、いつも必ずと言っていいほど「想定外」という名の悪魔が潜んでいる。
現地の天候が予報と違ったり、お目当てのカフェが急な臨時休業だったり、バスが大幅に遅延したりするたびに、私の計画という名の要塞はガラガラと音を立てて崩れ去る。
そんな時、かつての私は必死で立て直そうとあがいたものだ。
代替案の代替案を考え、分刻みの修正を脳内でシミュレーションし、焦燥感で胃がキリキリと痛むような感覚に襲われていた。
まるで自分の人生そのものが失敗に終わったかのように感じて、ひどく落ち込んだ時期もあったと思う。
けれど、ある旅先で全く予定外の路地裏に迷い込んだ時、ふと、その景色が妙に美しく見えたことがある。
計画していたメインストリートにはない、湿ったコンクリートの匂いと、どこかの家から漂ってくる揚げ物の香ばしい香り。
そこには私のスケジュール表には一行も書かれていない、生々しい世界が広がっていた。
あの時、私は計画という名の檻に閉じ込められていたことに気づいたのかもしれない。
すべての事象をコントロールしようとするのは、結局のところ、自分という人間の器を小さくしているだけではないかという疑念が頭をもたげる。
完全に無計画で旅に出る人を見ると、羨ましさと同時に、どうしてそんなに無防備でいられるのかと不思議に思う気持ちが混ざり合う。
しかし、私のガチガチの計画が台無しになった時に見せるその無防備な笑顔には、私がどんなに時間をかけても手に入れられない何かが宿っているような気がして、少しだけ嫉妬してしまうのだ。
第三章 戦略的思考の脱ぎ方
最近では、あえて「余白」を作ることを覚えた。
計画の中に「何も予定を入れない時間」という項目を設けるのである。
これは私にとって、ものすごく勇気のいる戦略的撤退に近い決断だ。
何もしない時間をあらかじめ計画に組み込んでおくことで、計画が狂った時の精神的ダメージを最小限に抑えようという、極めて建築家らしい、計算高い防衛策とも言える。
これぞまさに、私の強みである長期的な目標達成力と、柔軟性を融合させた新機軸ではないかと密かに自負している。
もちろん、その余白の時間でさえ、「さて、今から二時間は何をすべきか」と効率的な過ごし方を考えてしまうあたり、根本的な性格が変わっていないことは自覚している。
それでも、カフェのテラス席でぼんやりと通り過ぎる人たちを眺めながら、自分の計画が崩れたことを笑い飛ばせるようになったのは、少しだけ大人になった証拠かもしれない。
完璧であることへの執着は、時として自分自身を縛り付ける鎖になる。
けれど、その鎖があるからこそ、私はこうして物事を深く掘り下げ、美しい建築物を設計するように人生を構築していけるのだとも思う。
完璧主義は欠点であると同時に、私の武器でもある。
だから、すべてを投げ打って自由になることはできないけれど、時々、その武器を置いて、道端で咲く名もなき花を眺める余裕くらいは持ち合わせていたい。
旅の本当の価値は、計画通りに運んだ満足感と、計画が裏切られた時の切なさの、ちょうど狭間にあるのではないだろうか。
次回の旅行の計画を立てる時、私はまたスプレッドシートを開くはずだ。
だけど、その最後の一行には、わざと薄い文字でこう書いておこうと思う。
「ただし、風の吹くままに」と。
そう書き添えるだけで、不思議と旅への期待が少しだけ軽やかに膨らむような気がしている。
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