⚪️企画作品|呪文
洗面所で食べるキツネうどんは最高だ。
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説明しよう。
キツネうどんとは、温かいうどんの上に砂糖や醤油などで甘辛く煮付けた「油揚げ」をのせて食す日本の麺料理である。
その歴史を紐解けば、大阪船場のうどん店「松葉家(*1)」が発祥らしく、明治二十六年(1893年)頃に、元は別皿で供されていた油揚げを客がうどんに入れて食べたことが始まりだそうだ(*2)。
(*1)現在の「うさみ亭マツバヤ」
(*2)リスクヘッジのため一応「諸説あり」としておく。
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男を二種類に分ける方法は無数にあるが、中でも特に有名なのは「ローランドか、ローランド以外か」というものだろう。無論、私はローランド以外だ。
「日傘を差す男か、差さない男か」というのもある。最近は差す男が増えた。
「1月始まりの手帳か、4月始まりの手帳か」というのもあるかもしれない。だがこれはダメだ。そもそも手帳を使わない男が可哀想だ。
そして「キツネうどんを洗面所で食べるか、洗面所以外で食べるか」
ひとつ言っておこう。キツネうどんを洗面所で食べるのはやめておけ。キツネうどんだけは、決して洗面所で食べないと約束してほしい。でないと大変なことになる。
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吉岡里帆が出るのだ。
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しーーっ! 静かに! 騒ぐんじゃない!
ふう。
これはキツネうどん界隈では有名な怪談話だ。にしても、大阪のキツネが京都で化けるとは良く言ったものだ。知らんけど。てかたぶん意味違うけど。
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深夜二時。丑三つ時。
洗面所の鏡を見ながらキツネうどんを食す。はふはふ、ずるずる、ごくり、ぷはっ。
額に汗が滲む。
だが出ない。
まだ早い。
ピークは夏の土用が過ぎた頃。
出直して来よう。
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深夜二時。丑三つ時。
きみはうどんを食い終わる。
だが出ない。
ここで焦ってはすべてが台無しだ。
きみは喉を垂直に立ててどんぶりを煽る。そして最後の一滴を飲み干すと鏡に女の姿を見るだろう。
見れば必ず命を落とすと言われている。
そう。
真夏の吉岡里帆だ。
ど、どんぎつねさん、などと焦って口走ってはいけない。
生きて帰りたければ黙って聞くことだ。
数少ない生還者の証言を集めてみれば、そこには確かな共通点がある。
「立派な尻尾はどこにやったの、お兄さん?」
そう訊ねてくるらしい。
吉岡里帆が。
だからきみはこう答える。
「洗面所で食べるキツネうどんは最高だ」
それさえ言えば命は取られないという。それ以外はただの一言も発してはならない。むろん振り返ってもならない。
ただし、証言には少々曖昧なところもある。
「洗面所で食すキツネうどんは最高だ」
「洗面所で食うキツネうどんは最高だ」
どうもはっきりしない。
確実なのは、正しく言えた者だけが「またいつでも会いに来てね」という言葉を頂戴出来る。それだけだ。
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命が惜しいなら悪いことは言わない。洗面所でキツネうどんなど、絶対にやめておくことだ。
(おわり)
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