不祥事を防ぐのはルールではない。「声を上げられる職場」が組織を守る
鉄道事業を行なっていると、時に不祥事が起きてしまいます。
設備の不具合や設計ミス、基準を満たしていないことなど、安全上の問題です。
中には、その事実を隠してしまいまうこともあります。
問題が公になれば社会から批判され、責任を追及される。
担当している人は、そうしたプレッシャーの中で、「言わない」という判断をしてしまったのでしょう。
その後、隠蔽が発覚すると、世間から厳しい批判を受け、組織の信用は大きく失われます。
【本当に「悪意」で隠したのだろうか】
もちろん隠蔽は許されるものではありません。
しかし、私は別のことを考えます。
「なぜ、隠した人は声を上げられなかったのだろう。」
問題を報告すれば責められる。
失敗すれば評価が下がる。
迷惑をかけた人として見られる。
そんな空気が組織にあったのではないでしょうか。
企業倫理の制度そのものというよりも、「問題を口にできない風土」が隠蔽を生んでしまったのではないでしょうか。
最近、私が所属していた組織で、同じような不具合が見つかりました。
担当者は違和感を覚え、上司に報告しました。
その報告から調査が始まり、設計ミスであることが判明しました。
組織は速やかに公表し、報道機関にも説明しました。
当然、一時的に厳しい批判も受けました。
しかし、社会的ダメージは最小限で済みました。
何よりも組織は迅速に設備を改修し、速やかに安全を確保することができたのです。
【違いは「設備」ではなく「組織文化」だった】
この出来事をみると、大きく変わったものがあります。
それは設備ではありません。
組織の文化です。
担当者が安心して
「おかしいです。」
と言える空気がありました。
さらに、その上司は、報告を受けたときにまずこう伝えていました。
「報告してくれてありがとう。」
この言葉はとても大きいと思います。
責任を追及する前に、まず報告した行動を評価する。
だから次も誰かが声を上げることができる。
その積み重ねが心理的安全性をつくり、企業倫理を支えているのです。
【問題は「隠すこと」で大きくなる】
企業活動にミスはつきものです。
人はミスをします。
設備も人が設計する以上、設計ミスは起こります。
ゼロにすることはできません。
ミスをなくすことは大事ですが、ミスを早く見つけて組織全体で対処できることはさらに大切です。
担当者一人が抱え込むのではない。
チーム全員でテーブルに載せる。
そして会社として最善の対応を考える。
その姿勢こそが企業を守ります。
【管理職の一言が企業倫理を育てる
私は20年近く管理職を経験してきましたが、企業倫理は研修だけで身につくものではないと感じています。
日常の何気ない上司の言葉が、組織文化をつくります。
「どうしてこんなことになった。」
ではなく、
「知らせてくれてありがとう。」
その一言が、次の報告を生みます。
そして、その積み重ねが、不祥事を未然に防ぐ企業文化になります。
企業倫理とは、立派な理念を掲げることではありません。
問題が起きたときに、誰もが安心して「おかしい」と言える組織をつくること。
私は、この二つの出来事から、そのことを強く学びました。
不祥事を防ぐ最大の仕組みは、厳しい監視でも、分厚いマニュアルでもありません。
「ありがとう。報告してくれて。」
そう言える管理職がいること。
その積み重ねこそが、組織の信頼を守る一番の力なのだと思います。
