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私たちが「集めること」をやめられない理由──切手と昭和の喫茶店マッチに宿る物語 @有吉のお金発見 (元教授、定年退職870日目)

牛乳瓶のフタから始まった、僕たちの「ときめき収集史」

小学生の頃、さまざまなものを集めることが流行りました。メンコに始まり、ビー玉、牛乳瓶のフタなど、今思えばなぜ集めていたのかわかりませんが、当時は夢中になったものです。そうそう、牛乳瓶のフタは積み上げたものをひっくり返して遊ぶゲームがあり、たくさん持っている子はクラスの英雄でした。そのため私は、給食のたびに皆からフタをもらって集めていました。親からもらったお菓子の空き缶に入れていたのですが、「そんなもの、捨てなさい」と言われたことを覚えています。そこは昭和の小学生です。近所の空き地に秘密基地がありましたので、そこへ持っていって保管していました。もっとも、その秘密基地も、ある日行ってみると跡形もなく取り壊されていましたが ・・・ (泣)。今となっては、それも懐かしい思い出です。高学年になると、切手収集が始まりました。友人のコレクションを見ると、きれいな切手がずらりと並んでいて、羨ましかったのです。最初は家にある使用済み切手を集め、少しずつ小遣いを貯めて切手屋へ買いに行きましたが、もちろん高価なものは買えません。当時の憧れは「月に雁」や「見返り美人」などでしたが、数千円もしていて、指をくわえて眺めていました。私が買えたのは、当時の万博の切手や、定価に少しだけプレミアのついた尾形光琳の「紅白梅図屏風」くらいだったでしょうか。それでもうれしかったのです。(タイトル写真もどうぞ:注1)


ドイツのフリマで化学切手に出会う

十数年前にドイツを訪れた際、フランクフルトで日曜日に散歩をしていると、偶然フリーマーケットが開かれていました。何気なく見て回っていると切手のコーナーがあり、驚いたことに、切手帳ごと売られていたのです。「ドイツにも切手収集家がいるんだ」と、妙に感激したことを覚えています。そのときは奥様と一緒だったのですが、思わず足を止め、しばらく見入ってしまいました。すると、化学に関する切手がずらりと収められた冊子を見つけ、うれしくなって購入しました。しばらくは自分で眺めて楽しんでいましたが、そのうち授業でドイツの化学事情について話す際に、学生たちに見せるようになりました。そして最後には、「欲しい人がいれば譲ります」と言ったところ、意外にも大人気で驚きました。化学か切手のマニアがいたのかもしれません。(下写真もどうぞ)

ドイツで手に入れた切手の一部(ベンゼンと PET)


『有吉のお金発見』で収集家の特集

さて、そんなコレクションに関する話題を、NHK『有吉のお金発見』で特集していました。王道の切手に始まり、鉄道関係、そしてマッチの収集家まで登場しました。まず切手に関しては、5万枚もの切手を所有する収集家や、独自の工夫を凝らしてデザインを生み出す切手デザイナーが紹介されました。番組に登場したコレクターは、とにかく情熱的でした。収集歴 60 年以上で、アルバム 100 冊に約5万枚もの切手を所有しているのです。そのコレクションには、1948 年発行の浮世絵を題材にした「見返り美人」切手や、4年前に 100 万円以上という高額で入手した使用済み切手もありました。驚いたのは、この世界では、どのような経緯で使われたかという「使用実績」も重要だということです。なんと、場合によっては使用済み切手の方が、未使用のものより高く評価されることもあるそうです。(下写真もどうぞ)

『有吉のお金発見』でコレクションの特集。まずは王道の切手(注1)


切手デザイナーの遊び心とコレクションの奥深さ

日本の切手は、これまで累計 1万2000 種類以上発行され、今も毎年約 30 件が新たに発行されています。そのデザインを一手に担う日本郵便の「切手デザイナー」は、国内にわずか7人しかいないそうです。彼らの仕事には、うれしいことに、徹底したこだわりと遊び心が詰め込まれていました。たとえば、あるデザイナーは見やすさと使いやすさを重視しつつ、自ら現地を訪れて感動した景色をデザインに採用しています。「北海道編」の切手には、羊の放牧風景や富良野の花畑、ウニ・いくら丼などが並びます。さらに面白いのが、切手シート全体にストーリー性を持たせていることです。63 円切手で収穫された果物が、84 円切手ではシロップ漬けになっていたり、干されていた洗濯物が、アイロンがけされていたりと、眺めているだけでも楽しい仕掛けが施されていました。もう一人、デザイナー歴 28 年の方は、切手の枠を超えたリアルさを追求していました。和食をテーマにした切手では、実際に粘土でミニチュアを自作して撮影し、クッキーの切手では、なんと4日間もクッキーを焼き続け、その写真を使ったそうです。興味深かったのは、近年では、お気に入りの写真を切手にできる「オリジナル切手」を作成するサービスもあることです。110 円切手 30 枚セットで 3720 円とのこと。比較的手軽な価格で、家族の記念品としても人気を集めているそうです。(下写真もどうぞ)

切手デザイナーがこだわって作っている。オリジナル切手も購入可能(注1)


マッチ箱に刻まれた喫茶店の記憶

そして、番組を見ていて「これは一番ハマっているな」と感じたのが、24 歳のコレクターでした。彼女は、喫茶店で出会ったマッチ箱を収集していました。ちなみに、これは私にもよくわかります。大学生の頃、数年間喫煙していたので、喫茶店に行くとマッチをもらうことがよくありました。それぞれの店に独自のデザインがあり、私も引き出しいっぱいになるほど集めていました。収集と呼べるほどのこだわりはありませんでしたが、眺めるのが楽しかったのです。それも禁煙とともに捨ててしまいましたが、今考えると少し勿体なかったですね。番組で紹介されたコレクターは、100 円ライターの登場や禁煙化によって失われつつある「昭和の光景」を求めて、喫茶店を巡っているそうです。現在約 400 個を所有しており、店名の由来や創業時期などを聞き取り、アーカイブ化も進めていました。特に彼女が好む「ブックマッチ」は、4年前に国内生産が終了しており、今や貴重な文化遺産です。(下写真もどうぞ)

喫茶店のマッチのコレクション。これも気持ちはよくわかります(注1)


国内生産は激減、でもマッチ箱に込められた情熱

かつて世界を席巻した日本のマッチ産業ですが、現在の国内生産量は最盛期の 200 分の1にまで激減し(上写真、右下)、国内で一貫生産を行う工場は、兵庫県姫路市などわずか2社を残すのみだそうです。番組の企画で、コレクターの彼女は1日に 600 万本ものマッチが製造されている工場を訪れました。製造は軸木の乾燥から始まり、それと並行して硫黄や膠などを使った「頭薬」が調合されます。その後、パラフィンを塗布し、丸い形に整えるため、微動させながら3回に分けて頭薬を塗布します。乾燥後に箱詰めされ、最後に箱の側面へ側薬を塗布するという、実に緻密な工程でした。製造業者も、頭薬の色をカラフルに特注できるサービスや、軸木を藍色にした新しいデザインのマッチを開発するなど、新たな需要を生み出そうと、日々試行錯誤を重ねていました。(下写真もどうぞ)

全国で2社しかないマッチ工場での製造工程の一部(注1)


コレクターたちは、自分の好きなものについて語るとき、表情がパッと輝きます。番組内でも、興奮して方言が出てきたりする人などがいて、「本当に好きなんだな」と伝わってきました。このくらい夢中になれるものがあるのは、少しうらやましいですね。私も、また何か集めてみようかしら。それでは、また。


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注1:NHK『有吉のお金発見』の特集「コレクション」より

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