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映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」に観る、 文学者政治家の肖像

⚠️ 軽いネタバレを含むのでご注意ください

ウィンストン・チャーチルという政治家を深く理解する機会はなかった。パイプを燻らせ、記者に意気揚々とVサインをした老練な政治家。ノーベル文学賞まで後年に受賞した文学者としての一面。日本が敗戦に向かう時、遠い大西洋上で悠々と敗戦後の構想をアメリカとともに考えていた連合国のリーダー。第二次世界大戦後、冷戦の幕開けを告げる「鉄のカーテン」演説を行った徹底した反共主義者。映画を通じて、それら知識の水面下に潜んでいた、奇妙な人柄が浮かび上がってきた。

時代を代表する政治家を理解することはその時代の変遷を理解することでもある。政治家の行動には人々の社会像と希望が宿る。政治家はその時代を先頭に立って未来を切り開く先駆けでありながら、今ここに存在する社会の写し鏡でもある。

大戦と呼ばれる形態の戦争は、異質な社会同士の正面対決である。第二次世界大戦のイギリスはその最前線であった。しかしこの映画はその日々が狭い政治空間における党派争いに過ぎないことを映し出す。それは結局、戦争が一部のエリートによって意思決定されるという古典的な指摘を改めて意識させるのかもしれない。

字幕版タイトルには「ヒトラーから世界を救った男」という副題がつく。しかし本映画でヒトラーはその姿を見せることはない。終盤、ロンドン地下鉄に乗り込み、市民一人一人の名前とともに意見と意思を確認するシーンは全体主義との対比を意識させる。自律的な政治意思を失った全体主義体制とは対照的な市民の姿がある。そこにヒトラーはいないが、いる。

チャーチルはウェストミンスター駅に到着したとき、「It's  my stop!」と言い、下車する。その時、ウェストミンスター憲章を制定し、西側陣営を率いるリーダーが誕生した。


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