「ハグしちゃった♥️ てへぺろ☆」って言われた話
夜の設備点検とか、正直クソだるい。
誰もいない建物に一人で来て、
止まった機械を相手にするだけの仕事。
やる気なんて、あるわけがない。
その日も、最低限だけやって帰るつもりだった。
地下の機械室。
湿った空気。
ポンプのくぐもった音。
「……またここかよ」
制御盤のランプが点滅している。
いつも止まる場所だ。
軽く叩いて直らないかな、と手を伸ばしたとき。
「ねえ」
後ろから、声がする。
振り返ると、女の子が立っていた。
20歳くらい。
黒髪で、妙に整った顔。
場違いなのに、自然にそこに居る。
「ここ、止まってるよ」
「見れば分かる」
即答する。
関わりたくない。
こういうのって、絶対ろくなことにならない。
「ねえ、直して」
「無理。今日もうやる気ない」
無視して通り過ぎようとする。
コロン。
軽い音。
振り向く。
女の子の首が、床に転がっていた。
体は、立ったまま。
首だけが、こっちを見ている。
にこっと笑う。
「やって」
「……は?」
理解が追いつかない。
一歩、後ろに下がる。
膝が、勝手に震える。
「点検して」
首が、ころころと近づいてくる。
「来るな来るな来るな来るな」
声が裏返る。
そのとき。
背中に、衝撃。
冷たい腕が、がっちりと絡みついた。
「捕まえた」
耳元で、声。
反射的に振り向こうとして
できない。
首が、ない。
そこにあるのは、首のない体だけ。
「なにそれ怖い怖い怖い」
床の首が、楽しそうに言う。
「ハグしちゃった♥️」
「やめろ!!」
本気で叫ぶ。
でも、腕は外れない。
むしろ、じわじわ力が強くなる。
耳元で、息がかかる気がした。
「逃げるの?」
声が、すぐ近くで聞こえる。
「逃げたらね」
少しだけ、間。
「次は、中から触るよ?」
ぞわっとした。
意味が分かる前に、嫌悪感だけが走る。
「やる!やるから!!ちゃんとやるから!!」
泣き叫ぶ。
一瞬で、腕の力が消える。
振り返る。
女の子は、普通に立っていた。
首も、ちゃんとついている。
「最初からそう言えばいいのに」
少し不満そうに言った。
「誰のせいだよ……」
呼吸が戻らない。
足に力が入らない。
這うようにして、制御盤の前に行く。
震える手で、開ける。
「あ……エア噛み……」
「でしょ?」
すぐ横から、顔を覗き込んでくる。
距離が近い。
さっきまでのアレが嘘みたいに、普通にかわいい。それが、いちばん怖い。
「ここ、痛い音するの」
「……痛いってなんだよ……」
「ギュってなるとき、やだよねぇ」
さらっと言う。
まるで、自分のことみたいに。
工具を回す。
手が震えて、うまく入らない。
「ちゃんとやってねぇ?」
にこっと笑う。
「ちゃんとやらないとぉ」
少しだけ顔を近づけて、
「中、触るから」
「やります!!」
即答した。
必死で作業する。
エア抜き。再起動。
ポンプが、安定した音を取り戻す。
「……終わり……」
力が抜ける。
振り返る。
女の子は、じっと機械を見ていた。
それから、小さく頷く。
「うん。もう大丈夫」
その顔は、少しだけ安心していた。
ふと、足元のプレートが目に入る。
埃を払う。
2019 保守担当者 水城ミナ
顔を上げる。
いない。
完全に、消えていた。
しばらく動けなかった。
やっとのことで立ち上がり、記録を書く。
「異常なし」
ペンを置く。
その横に、文字が増えていた。
また止まったら、呼ぶね♥
手が止まる。
震える。
ゆっくり、後ろを見る。
ポンプの影。
そこに、“首だけ”が浮かんでいた。
「次はねぇ」
にこっと笑う。
「もうちょっと奥、触って あ・げ・る❤💀❤」
また、腰が抜けた。
おわり

ちゃんと読んでくれる人、大好きだよ。
だから、また来てね。
……逃げても、分かるから。
コロン。
あ、落ちた。
…..
…..
ま、なにわともあれ、迷走中の作者です。
変なものを書いてしまいました。
逃げても分かるらしいです…..
次はちゃんとした物語を出す予定です。
よろしくお願いいたします。
コロン。
あ!
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