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社員が動けない会社で見落としていたこと

「主体性がない」のではなく、判断する場所がなかった。

「うちの社員は、もう少し主体性を持ってほしい」経営者や管理職から、何度も聞いてきた言葉だ。

そして私自身も、同じように感じたことがある。
何度も確認に来る。
自分では決めない。
会議で意見を言わない。
改善案も出てこない。

そんな姿を見ると、
「もっと自分で考えてくれればいいのに」
と思う。

でもあるときから、少し違う見方をするようになった。
その人には、本当に「自分で判断できる場所」があるのだろうか。


「自分で考えて」と「勝手に決めないで」

例えば上司が、
「いちいち聞かずに、自分で判断してほしい」と言う。

部下が考えて進める。
すると後から、
「なぜ相談しなかったの」
と言われる。

次から部下は確認する。
すると今度は、
「それくらい自分で考えて」
と言われる。

上司側に悪意があるわけではない。
状況によって、相談してほしいことと、自分で決めてほしいことが違う。
ただ、その境界線が言葉になっていない。
だから部下から見れば、
どこに正解があるか分からない。
最も安全なのは、

「聞いてから動く」になる。

それを見た上司は、
「主体性がない」
と感じる。両方の言い分が成立してしまう。

主体性は、本当に性格なのか

主体性という言葉は便利だ。
「あの人は主体性がある」
「あの人は受け身だ」
そう言えば、個人の特徴として説明できる。
もちろん、人による違いはある。
自分から動くことが得意な人もいる。
慎重な人もいる。
でも、組織の中の主体性は、性格だけでは決まらないと思う。
どこまで判断してよいか。

上司と違う意見を言っても大丈夫か。
失敗したとき、どう扱われるか。
必要な情報を持っているか。
こうした環境によって、行動は変わる。

だから私は、

主体性とは性格ではなく、判断できる余白と、その判断を受け止める環境との掛け算なのかもしれない

と考えるようになった。

一度怒られた経験は、ルールになる

会社に正式なルールがなくても、人は経験から学ぶ。
提案したら否定された。
自分で決めたら怒られた。
会議で違う意見を言ったら、その後少し空気が悪くなった。
一度なら偶然かもしれない。
でも何度か続けば、
「ここでは余計なことをしない方がいい」
という非公式なルールができる。

そして経営側は数年後、
「最近の社員は意見を言わない」
と悩む。

組織には、書かれたルールだけでなく、
人が学習したルールがある。
主体性を求めるなら、
「主体的に動いても大丈夫だった」
という経験も積めるようにしなければならない。

判断の場所をつくる

では、全部を自由にすればいいのか。
そうではない。
会社には、経営が決めることがある。
管理職が決めることもある。
現場が決めていいこともある。
大切なのは、その境界をある程度見えるようにすることだと思う。

例えば、
10万円までの顧客対応は現場判断。
それを超える場合は上司へ相談する。

日々の業務改善は現場で試してよい。
契約条件を変える場合は経営判断。

そんな形でもいい。

完璧でなくても、
「ここまでは自分で決めていい」
が分かるだけで、人は動きやすくなる。
主体性を求めるとは、
「もっと頑張って自分で考えて」
と言うことだけではない。

判断する場所を渡すこと

でもある。

「主体性がない」と思う前に

私は、社員に主体性がないと感じたとき、
三つを確認したいと思っている。

本人が決めていい範囲は明確だろうか。

自分で決めて失敗したとき、どんな扱いをしているだろうか。

上司と違う意見を言った人を、実際にはどう扱っているだろうか。

ここに矛盾があれば、
主体性を求める言葉より、日々の経験の方が強くなる。

人を変える前に、場所を見る

もちろん、すべてを組織のせいにするつもりはない。
任されても動かない人もいる。
考えることを避ける人もいる。
本人の課題もある。
ただ、人の性格を結論にする前に、
その人が置かれている場所を一度見たい。

私自身も、
「もっと自分で考えてほしい」
と言いながら、
自分で考えた結果を本当に受け止める準備ができていただろうか。

主体性がないのではなく、主体性を出せる場所がなかった。
そんな可能性はないだろうか。
社員を変えようとする前に、私たちは「どこまで自分で決めていいか」を、どれだけ渡せているだろう。

問いの足跡への思い

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問いの足跡|現場経験20年×CEO・COO・CHRO|小さな組織を構造で読み解く戦略家 記事が、仕事や組織について考えるきっかけになりましたら、応援いただけるとうれしいです。いただいたチップは、記事作成やデザイン制作など、「問いの足跡」を続けるための活動費として大切に使わせていただきます。

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