「(再)あなたは、冷やしたぬきが好きですか?(8月23日)」
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健やかにお過ごしですか。
現在、noteの夏休みをいただいています。
この日曜日という大切な余白のなかに、
過去に反響をいただいた言葉たちを、
「毎週アンコール再録」としてそっと置いておきますね。
今週は、夏の終わりにふさわしい、等身大の食文化のお話です。
お休みのひとときに、どうぞゆっくりとお楽しみください。
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「あなたの今日のお昼ごはんは、麺類ですか?」
もしかすると、朝ごはんもまだなのに、もう昼食を尋ねてしまう失礼を許してくださいね。
でも、お休み日のお昼って、夏場ならお素麺に、お蕎麦や、おうどん。かつてはエスニックだったけど、すっかり日本の食卓に馴染んだ冷麺なども。
それにしても、麺類のオンパレード。やたら、麺類を食していると思いませんか?
「ねぇ、何で、お昼ごはんには麺類なの?」
今回は、そのあたりの食の事情からお話しを進めて行きますね。
どうぞ、しばらくの間、お付き合いください。
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さて、わが家のお昼ごはんに視線を向けると、あらためて麺類の登場回数が抜きん出て多いことに気付く。むしろ麺類以外のメニューを探すほうが難しいのである。
特に、どうしてお昼ご飯に麺類を摂るのかの理由については、これまで考えたことはなく、漫然と親、あるいは祖母からの《食の習慣》を、何の疑問もなく引き継いだのであって、疑問を挟もうとは微塵にも思いつかなかった。
だけど、あらためて考えれば、どこかのタイミングで《お昼は麺類》という流れに、棹さす切っ掛けはあっただろうに、それを当然のことと受け止め、疑問にも思わなかった。
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ひとつ思ったのは、昼食の麺類は、もしかすると、江戸時代まで遡る私たちの食文化、《日本人の生活サイクル》によるものではないかということだ。
当時は、平成・令和の今日とは違って、スイッチONでお水も調理の為の熱源も整うはずもなく、全てが人力で、しかも密集して立つ江戸の長屋暮らしでは、火の不始末であっという間に焼け野原になってしまう。
そんな住環境に合わせて、江戸ではお米を炊くのが朝、私の住む関西では夕方。
つまり、お昼は冷えたご飯か、そもそもご飯が残らないのではないか。
文献に当たると、長屋住まいで"外働き"をしている大工さんを始めとする職人さんの胃袋を支えたのは、移動式の屋台の食べ物屋さんであるという。
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そこには、今日のお寿司の原型で、シャリと呼ばれるご飯部分が今の2倍ほどもあるものや、ひょいと片手で摘んで食べやすいよう串に刺した天ぷら。いずれも目の前の江戸前の海からの"いきの良い"食材ばかり。
そして、江戸落語の定番中の定番の『時そば』。
それが上方に上って食材が蕎麦からうどんへと変えられた『時うどん』でも語られる麺類。
『江戸喰いの蕎麦』という言葉があったかは定かではないが、《二八蕎麦》のそば粉8:つなぎ2の割合のそばは3分で茹で上がる。
(※当初のかけ蕎麦の値段が『ニハチ・ジュウロク、16文だったからとも言われている。)
せっかちな江戸っ子には、注文して間髪入れずに出てくるおそばが受けたのも分かるような気がする。
シンプルなかけ蕎麦が16文で手繰(たぐ)れて、すぐに空腹が満たせる。
『早い・安い・美味い』の三拍子が揃っているのだ。これでウケないはずがない。
ということで、江戸時代末の万延元年(1860)には、江戸のそば屋は3,763店にのぼったといわれている。(そば屋「いんば」調べ。)

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お話をタイトル「あなたは、冷やしたぬきが好きですか?」に進ませる。
これは、私が初めて東京を訪ねた時のこと。
すでに時間はお昼を過ぎていて、おなかを空かせた私は、東京駅構内のお蕎麦屋さんの暖簾をくぐった。
季節はちょうど今頃で、いつでもどこへ行っても人だらけ。その熱気にも当てられていた。
『涼しくての喉ごしの良い麺類はないかしら?』と思案を巡らせながら、周囲の様子を伺っていた時に、目にも涼しいガラスの器、こんもりと盛られた冷やし中華っぽい姿を目にした。
お店の人に、わざとらしくない程度に指で、私が美味しそうと思って見てた、それを示して名前が『冷やしたぬき』と知った。
『冷やしたぬき』とは、冷たい蕎麦またはうどんに、揚げ玉(天かす)と刻みネギ、場合によってはわかめやきゅうりなどを乗せた、冷たい麺料理を指す。
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私に出された『冷やしたぬき』には、甘辛く煮含められ、刻まれた油揚げ。黄色が鮮やかな錦糸卵。緑で苦味のカイワレ大根がトッピングされていた。
たしか、『ワサビはつけるか?』との問いかけに、首をカクンとさせて応じた記憶がある。
冷やされた器に濃いめのお出汁を張り、茹でたてのお蕎麦を大量の冷水でしっかりと締め、加えて水っぽくならないように、キッチリと水切りされたそばの麺の上の、目にも嬉しいそれらのトッピングが誇らしい。
期待通りの冷たいお出汁と腰のあるお蕎麦。
"混ぜて食べること"など思いもつかない。とても美味しかった。
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それに関西のお蕎麦屋さんでは、ついぞ見かけない丼もののラインナップ。そこに名前を記されていた『かき揚げ丼』。
サクサクした歯触りと、小エビの香ばしい『かき揚げ』。そこに甘辛いタレがたっぷりと染みたご飯の美味しさ。
思わず丼を高々と持ち上げて、ワシワシと喉へと、かき揚げご飯を詰め込みたくなった🤭
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だけど、しばらくして、私に『冷やしたぬき』を教えてくれたお店が、別の蕎麦屋さんに代わっていたのを知った時は、本当に落胆したのを覚えている。
今も、あの絶品だった冷やしたぬきに、肩を並べられるお店とは巡り合っていない。もしかすると、『思い出補正』もあるのかもしれないが、いつか極上『冷やしたぬき』との再会を果たしてみたいと強く心に決めている。
いかがですか?
今日のお昼ごはん、『冷やしたぬき』に決まりですよね。🤭
今日も、良い一日になりますように。
(🎹MIYABI)
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