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覚えてないのに残ってる

ミステリー小説が読みたくなって、図書館で一冊の本を借りていた。
読み始めて五行、おや、と思う。一瞬、文字を追う目が止まる。
これ、読んだことがある。

読みたい本は、山ほどある。このまま本を閉じようかと迷った。
でも、この先の展開も結末も、まったく思い出せない。
続きが気になりページをめくっていくと、どの場面にもやっぱり覚えがある。
「うわぁ……ここ、やな感じだ」と思った気がするし、今もやっぱりやな感じだ。

結局、最後まで読むことにした。
話は新鮮に面白い。「そうだった」と思い出す瞬間もあって、二度おいしい。


再読の醍醐味って、前に読んだ時とは違うところに心が動いて、自分の変化を感じられることだと思っていた。

だけど、今回はそもそもなーんも覚えてない。
多分、引っかかるところは、前も今も同じなんだと思う。
感性の癖って、そんなに変わらない気がするだけかもしれない。曖昧だけど。

断片は思い出すのに、結末は思い出せない。初読のような再読という不思議な読書体験。
ストーリーは忘れていても、心が動いた痕跡は奥底に残っているのかもしれない。

忘れてしまうって、悪いことばかりではない。




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