ハプスブルク帝国/NHK 4KBS プレミアムカフェ...aaltoのちょほほ日記@2026.08.28
この「ハプスブルク帝国」の不思議な点は、武力で無く婚姻で領土を拡大したという、ある意味理解しにくいところにある。「ハプスブルク帝国」という国家の誕生・創生期から滅亡までを3日間連続して放映する。
4KBSなので、視聴出来る環境が必要だが、この番組は再放送で、数年前にBSで観た記憶がある。
https://www.nhk.jp/g/ts/YLGKWGLR2Q/blog/bl/p1WMGVeAwz/bp/prLpA4Bjdr
意外と見応えがあり、教育番組とは少し色合いが違うので、興味深く観た記憶がある。
特に領土拡大を戦争や武力で無く、平和的な婚姻で行うという、希な施策というか国家方針なので、驚くが、高校の世界史でそんなことは教えて貰わなかった様な、既に半世紀前だから定かで無いが…。
そんなエピソードが色々出てくるので、興味深く記憶に残るのだろう…。
3回のそれぞれ主役は下記の
その繁栄の始まりとなったマクシミリアン1世。
唯一の女性君主であり、帝国の発展に尽くしたマリア・テレジア。
崩壊に向かう帝国を一人背負い続けたフランツ・ヨーゼフ。
▼8月31日(月)
「ハイビジョン特集 シリーズ ハプスブルク帝国 第1回 双頭の鷲(わし)の下に」
(初回放送:2007年)
ヨーロッパに広大な領土を築き、多民族を束ねながら「太陽の沈まない王国」と呼ばれる繁栄を享受したハプスブルク帝国の歴史と宝物。スイスの小さな城から始まった黎明(れいめい)期から、15世紀、マクシミリアン一世によって、フランドルの先進的な制度や文化を取り入れ、インスブルックを拠点に繁栄を築いていくまでを描く。
▼9月1日(火)
「ハイビジョン特集 シリーズ ハプスブルク帝国 第2回 女帝 マリア・テレジア」
(初回放送:2007年)
ヨーロッパに広大な領土を持ち、「太陽の沈まない王国」と称えられたハプスブルク帝国。18世紀、ハプスブルク家の歴史で初めて女性君主となったマリア・テレジアが、多くの障害を乗り越えて権威を確立し、シェーンブルン宮殿など絢爛(けんらん)たる文化を花開かせていくとともに、帝都ウィーンを発展させていった過程を描く。
▼9月2日(水)
「ハイビジョン特集 シリーズ ハプスブルク帝国 第3回 美しく青きドナウ」
(初回放送:2007年)
ヨーロッパに広大な領土を持ち、「太陽の沈まない王国」と称えられたハプスブルク帝国。1848年の即位直後から、民族独立運動の台頭にさらされた皇帝フランツ・ヨーゼフが帝国を必死に束ねようとしながらも、第一次世界大戦に突入、やがて帝国の崩壊を招く過程を追う。皇妃エリザベートやウィーンに花開いた新しい文化を交えて描く。
何時ものようにこれも資料や小説をチャッピーに訊いてみた。
もちろん。点数は「作品そのものの優劣」ではなく、ハプスブルク帝国を知る入口としてどうかという観点で、★5点満点にしました。文学作品の場合、「歴史理解」は史実の説明量ではなく、帝国の社会・民族・官僚制・軍隊・崩壊の感覚がどれだけ掴めるか、で評価しています。
ハプスブルク帝国を知るための10冊
順位作品・著者種類読みやすさ文学性歴史理解私ならこう読む1『ラデツキー行進曲』ヨーゼフ・ロート小説★★★★☆★★★★★★★★★★まずこれ2『昨日の世界』シュテファン・ツヴァイク回想録★★★★★★★★★★★★★★★帝国の「内側」を知る3『兵士シュヴェイクの冒険』ヤロスラフ・ハシェク小説★★★★★★★★★☆★★★★☆帝国を笑いながら理解4『皇帝廟』ヨーゼフ・ロート小説★★★★☆★★★★★★★★★☆帝国消滅後を読む5『ハプスブルク家』江村洋歴史書・新書★★★★★★★★☆☆★★★★★歴史の骨格を作る6『特性のない男』ローベルト・ムージル小説★★☆☆☆★★★★★★★★★★帝国末期の精神を読む7『ハプスブルク家』菊池良生歴史書・新書★★★★★★★★☆☆★★★★☆王朝史の入門8『ドナウ』クラウディオ・マグリス紀行・文化史★★★☆☆★★★★★★★★★☆「中欧」という世界を見る9『果てしなき逃走』ヨーゼフ・ロート小説★★★★☆★★★★★★★★☆☆帝国崩壊後の人間10『反逆―ある戦争障害者の物語』ヨーゼフ・ロート小説★★★★☆★★★★☆★★★★☆帝国末期→戦後社会
特に上位4冊には、かなりはっきりした役割の違いがあります。
1位 ヨーゼフ・ロート『ラデツキー行進曲』
総合ではこれが一番です。
トロッタ家三代の栄枯盛衰と、オーストリア=ハンガリー帝国そのものの老衰が重なっていきます。1859年ソルフェリーノの戦いから第一次世界大戦までを背景にしていて、岩波文庫では上下巻で刊行されています。(千葉県立図書館)
この作品のすごさは、帝国崩壊を政治史として説明しないところです。
老皇帝フランツ・ヨーゼフ、軍服、役人、国境の駐屯地、将校クラブ、鉄道、祝祭、民族問題……。
それらが少しずつ古びていく。
読者は途中から、
「この世界はもう長くない」
と感じ始めます。
でも登場人物たちは、その世界から降りることができない。そこに強烈な哀愁があります。
読みやすさ 4/文学性 5/歴史理解 5
2位 シュテファン・ツヴァイク『昨日の世界』
小説ではありません。実際にハプスブルク帝国末期のウィーンで育った作家の回想録です。
1881年ウィーン生まれのツヴァイクが、少年時代から第一次世界大戦、帝国崩壊、ナチス台頭までを振り返ります。みすず書房版は全2冊。(MSZ)
ここでは政治制度以上に、カフェ
オペラ・音楽
劇場
学校
新聞
ユダヤ系市民
ウィーンの知識人社会
が見えてきます。
『ラデツキー行進曲』が帝国の骨格と死なら、
『昨日の世界』は帝国で暮らした人間の記憶。
この二冊は非常に相性がいいです。
読みやすさ 5/文学性 5/歴史理解 5
3位 ハシェク『兵士シュヴェイクの冒険』
これが意外に重要です。
第一次世界大戦中のオーストリア=ハンガリー軍を、徹底的に茶化した小説。
主人公シュヴェイクは、軍の命令に異常なほど忠実。しかしその結果、軍隊の馬鹿馬鹿しさが露呈していきます。
ここで見えてくるのが、
巨大な多民族帝国を官僚制と軍隊で維持することの滑稽さ
です。
チェコ人の目から見たハプスブルク帝国なので、『ラデツキー行進曲』とは世界の見え方がまるで違います。
ロート
→「失われた帝国への哀惜」
ハシェク
→「こんな帝国、そりゃ崩壊するよ」
くらい違う。
読みやすさ 5/文学性 4/歴史理解 4
4位 ヨーゼフ・ロート『皇帝廟』
『ラデツキー行進曲』を読んだら、次にこれ。
帝国がなくなった後の人間を描きます。
ここで初めて、国家が消滅するとはどういうことなのか?
という問題が浮かび上がります。
現代日本にいると想像しにくいのですが、1918年には本当に、
昨日まで自分が属していた国家そのものが消える
という経験を何千万人もの人がしています。
ロートはその喪失感を文学にしました。
読みやすさ 4/文学性 5/歴史理解 4
5位 江村洋『ハプスブルク家』
ここで一度、小説から歴史書へ。
マリア・テレジア、ヨーゼフ2世、フランツ・ヨーゼフなどを軸に、
そもそもハプスブルクとは何だったのか
を整理するのに向いています。
文学だけ読んでいると、
「なぜウィーンの皇帝がチェコやハンガリーやクロアチアまで支配しているのか?」
という基本構造が分かりにくい。
ここで王朝史を一本入れると、『ラデツキー行進曲』の理解が一段深くなります。
読みやすさ 5/文学性 3/歴史理解 5
6位 ローベルト・ムージル『特性のない男』
これは「面白いからぜひ」と気軽には言えません(笑)。
ものすごい小説ですが、ものすごく長い。
1913年、第一次世界大戦直前のオーストリア=ハンガリー帝国が舞台です。
ムージルは帝国を「カカーニエン」という半ば架空の呼称で描き、貴族・軍人・官僚・知識人が延々と議論する社会を風刺します。
日本語訳も複数あり、1960年代の新潮社版のほか、現在確認できる新しい邦訳もあります。(国立国会図書館サーチ(NDLサーチ))
読んでいると、
「これだけ頭のいい人間が集まっているのに、なぜ何も決まらないのか」
という奇妙な世界に入っていきます。
それ自体が末期ハプスブルク帝国の比喩になっています。
読みやすさ 2/文学性 5/歴史理解 5
7位 菊池良生『ハプスブルク家』
こちらも入門書。
江村洋の本と多少重なりますが、王朝の人物関係を追いやすい。
ハプスブルク家には、
「戦争は他国にさせよ。幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ」
という有名な王朝戦略があります。
スペイン、ボヘミア、ハンガリーなどへ勢力を伸ばし、ヨーロッパ史最大級の王朝になった仕組みを理解するには、まず人物中心の歴史書が便利です。
読みやすさ 5/文学性 3/歴史理解 4
8位 クラウディオ・マグリス『ドナウ』
これは少し変化球ですが、私ならぜひ入れたい。
ドナウ川を辿りながら、
ドイツ
→オーストリア
→ハンガリー
→バルカン
へ進んでいく巨大な紀行文学です。
ハプスブルク帝国を単なる「オーストリアの帝国」と考えると、本質を見失います。
むしろ、
ドナウ川流域の多民族・多言語文化圏
だった。
マグリスを読むと、この感覚がかなりよく分かります。
読みやすさ 3/文学性 5/歴史理解 4
9位 ヨーゼフ・ロート『果てしなき逃走』
第一次世界大戦後。
戦争から戻ってみると、昔の世界がなくなっている。
「帰るべき場所」が消失した人間を描きます。
ハプスブルク帝国の面白さは、実は崩壊後に一層よく分かる。
帝国が消滅したことで、
オーストリア人
チェコ人
ハンガリー人
ポーランド人
ユダヤ人
クロアチア人……
というアイデンティティの問題が一気に表面化したからです。
岩波文庫にも邦訳があります。(読書メーター)
読みやすさ 4/文学性 5/歴史理解 3
10位 ヨーゼフ・ロート『反逆―ある戦争障害者の物語』
これはちょうど2026年1月に新しい邦訳が出た作品なので、今回あえて10冊に加えたい一冊です。国立国会図書館にも関西大学出版部刊・林英哉訳として登録されています。(国立国会図書館サーチ(NDLサーチ))
第一次世界大戦で身体を傷つけた元兵士が、帝国崩壊後の社会に投げ出されます。
華麗なウィーン宮廷ではなく、
帝国に忠誠を尽くした普通の人間は、その帝国がなくなった後どうなったのか
という側から読めるのが面白いところです。
読みやすさ 4/文学性 4/歴史理解 4
私なら、この順番で読む
10冊全部を順番に読む必要はありません。5冊だけ選ぶなら、むしろこちらです。
① 江村洋『ハプスブルク家』
↓
まず「誰が誰で、どんな帝国だったか」をざっと把握。
② ヨーゼフ・ロート『ラデツキー行進曲』
↓
帝国を歴史ではなく「生きた世界」として経験する。
③ ツヴァイク『昨日の世界』
↓
実際のウィーン市民の記憶を重ねる。
④ 『兵士シュヴェイクの冒険』
↓
チェコ側から見ると帝国がまったく別物に見えてくる。
⑤ ロート『皇帝廟』
↓
1918年に帝国が消えた後まで見届ける。
この5冊を読めば、かなり立体的になります。
そして、ここがハプスブルク帝国の面白いところです。
普通なら「衰退して滅びた巨大帝国」で終わりそうなのに、文学を読むとむしろ、滅びた後になって人々が「あの帝国はいったい何だったのだろう」と考え続けていることが見えてきます。
その点では、ロートの**『ラデツキー行進曲』→『皇帝廟』と、ツヴァイクの『昨日の世界』**の3作が核心だと思います。ムージルは、その3冊を読んで「もっと深く潜りたい」と思ったときで十分です。
という事なので、ヨーゼフ・ロート『ラデツキー行進曲』を隣町の図書館に予約したが…、「地図と拳」が未だ半分も終わっていない。「反ミース部門は存在しない」はようやく読了したが...ちょほほ。
