キャリアはマラソン。中盤から「一人」になったと感じたとき、どう走る?
キャリアのことを、じっくり考える時間はありますか。日々の仕事に追われていると、気づけば「なんとなく」走り続けている。このペースでいいのか。この方向でいいのか。そんな問いを、どこかに置いたまま。
私自身のキャリアを振り返ってみても、それはどこかマラソンに似ている気がしています。スタート地点はみんな一緒。新入社員として研修を受け、各職場に配属される。大きな集団の中にいて、お互いの気配を感じながら安心して走り出すことができます。
集団がばらけ始めるとき
入社から数年は、同期という集団の中で自然とペースが生まれます。評価サイクルも、昇進のタイミングも、だいたい同じ。「みんなと同じくらい」が、ひとつの安心感になっていたように思います。
でも4〜5年が経つ頃から、キャリアは構造的にばらけていきます。勿論、仕事ができる・できないという側面もありますが、人によって人生は異なり、そこから生まれる差異も大きく影響します。
育児・介護などのライフイベントが発生する人もいれば、そうでない人もいる。配属によって経験の幅に差が出る。体調やメンタルの問題で一時的にペースを落とさざるを得ない場面もある。これらはどれも、個人の努力や意欲とは切り離された、構造的な要因ではないかと思っています。
つまり「差がついた」のではなく、「それぞれの事情が表に出てきた」というのが、正確な見方かもしれません。

私自身も、2人の子供を産んでキャリアにブランクができました。1人目の育休から復帰したとき、元のポジションには戻れませんでした。
頭では「仕方がないことだ」と理解していました。でも、同期たちがどんどん新しいロールを任され、キャリアを積み重ねていく中で、自分はコースから外れてしまったような感覚がありました。ずっと走り続けている人たちは、新しいポジションなんて作らなくても、これまでの蓄積で勝負できる。でも、当時の私にはそれが無いと感じていました。
だから、自分で新しいポジションの企画書を書き、タイトルを考え、「私はこれをやります」と宣言して動き始めた時期もありました。今振り返れば、それは「自分のキャリアは自分で作るしかない」という、当時の私なりの切実な答えだったように思います。
しかし、そのポジションが大きく実を結ぶことはないまま、私は2人目の産休に入ることになりました。今振り返ると自分を構成するキャリアの1ピースに確実になっていたと思いますが、当時は「遅れている」という感覚だけが重くのしかかっていました。
キャリアは「縦一本」ではなく、もっと自由な構造だ
そんな風に「遅れている」と感じていたある日、子どもが公園で滑り台を下から上に登っているのを見ました。本来は上から滑り降りる一本道を、流れに逆らって必死によじ登っている。その姿を見た瞬間、「あ、これ、今の私のキャリアそのものだ。だからこんなにハードなんだ」と、ハッとさせられたのです。 道は一本しかなくて、周りは反対方向に流れている。少し気を抜けば滑り落ちそうで、立ち止まることも許されない。
そんな「逆流の滑り台」を必死に登り続けていたとき、ふと目にしたのが、「キャリアははしごではなくジャングルジムだ」という言葉でした。(後で調べると、Facebookの元COOであるシェリル・サンドバーグの言葉だと分かりました。)

ジャングルジムなら、途中で止まって景色を眺めることができる。横に移動することもできる。道は一本ではなく、どこにでも手がかりがある。
専門性を深める、別の領域に広げる、組織の外に出る、いったん立ち止まって足場を固める。どれも有効な動き方ではないでしょうか。「縦に速く登ること」だけが正解ではないのかもしれません。
この考え方に出会ってから、キャリアに対する見方が少しずつ変わり始めました。「何も、一直線に急ぐ必要はないんだな」と、自分のペースを肯定できるようになりましたし、ずいぶんと視野が広がった気がします。
育休・復職という経験は、私にとって状況に押し出されたものでした。でも結果として、「縦だけが正解ではない」ということを、頭でなく実感として理解できるようになった気がしています。
どのルートを選ぶかは、自分で決めていい。この構造が見えるようになってから、「遅れている」という感覚は薄れていきました。
最後に残る問いは、一つだけ
では、何を基準にキャリアを判断すればいいのか。
私が今たどり着いているのは、シンプルにこれだけです。
「自分のペースを自分で考え、納得して歩み続けること」
人と比べてどうか、ではないかもしれません。世間的な正解に近いか、でもないかもしれない。自分自身が、今の選択に腑に落ちているかどうか、ただそれだけなのではないでしょうか。
他人と比べて『なんとなく』走るのを、一度やめてみませんか。
一度立ち止まって、自分のペースを確かめてみる時間が、キャリアのどこかにあってもいい。それが、ブレずに長く歩み続けるための、土台になるのだと私は思っています。
あなたは今、どのあたりをどんなペースで走っていますか。
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筆者:都島三佳
アクセンチュアテクノロジーコンサルティング本部のマネジングディレクター。GenAIを活用した業務変革や、社内におけるGenAI活用プログラムを推進。1万人規模の組織における活用プログラムの設計・浸透に携わる。子育てと仕事を両立しながら、女性のキャリアとテクノロジーの関係に関心を持ち、Genderに関する情報発信を行っている。
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