やめるつもりだったAudibleが、いちばんの楽しみになった
退職後のルーティンとして、毎朝散歩に出かけています。散歩のお供はAudible(Amazonが提供するオーディオブックサービス)です。いつも25分くらいのコースを歩いていますが、Audibleが聞きたくてわざと遠回りすることもあります。
特に小説を聞いていると、いいところで家に着いてしまいそうになるので、あえて引き返すのを先延ばしにしたりします。それでもまだ続きが聞きたくて、そのままイヤホンをつけっぱなしで家事をすることもよくあります。
退職と同時に、解約を考えた
実は退職したときに、Audibleを解約しようと考えていました。本のサブスクならKindle Unlimitedがあるし、読書のために2つもサブスク代を払うのは少しもったいないかなと思ったのです。
それに毎日の通勤時間もなくなったので、もうAudibleの出番はあまりない気がしました、働いていた頃はビジネス書を聞くことが多かったので、仕事を辞めたらそんなに意識高くインプットする必要もないと思っていました。
映像のない映画という発見
働いていた頃は、紙や電子書籍による読書もビジネス書が中心でした。小説にも興味はあったのですが、時間も気持ちも仕事優先になっていて、楽しみだけのための本をゆっくり味わう余裕がありませんでした。
話題になっている小説を書店で目にしながら、こういう本をいつかゆっくり読みたいなあ、などと考えていたものです。
そして、退職後に時間の余裕ができたらやりたいことのリストに「小説をゆっくり楽しむ」と書いていたのを思い出しました。そこで、Audibleを解約する前に、気になる小説を聴いてみようと思い立ったのです。
そして図らずも、Audibleで小説を聴くことが退職後の生活の大きな楽しみのひとつになりました。
Audibleはプロの声優さんが本を読み上げています。ビジネス書もプロの方が朗読されていましたが、正直デジタルボイスとの違いはそこまで大きく感じませんでした。
ところがAudibleで小説を楽しむようになると、まったく違う世界が広がった感じがしました。
Audibleによる小説は、ただの朗読ではなく、映像のない映画そのものだったのです。1人の声優さんが声色を使い分けて、何役も演じられています。男性の声優さんが女性のセリフを、女性の声優さんが男性のセリフを朗読することがありますが、なんの違和感もなく、頭の中にすっとそのキャラクターのセリフとして自然に入ってきます。
たとえば、新海誠監督の『言の葉の庭』をAudibleで聴いたときのことです。新海誠監督といえば、『君の名は。』や『天気の子』がよかったので、これも面白いのかなと期待して聴いてみることにしました。
後でレビューを読むと「気持ち悪い」という感想が結構多いようで、確かに私もこのストーリー設定には少し違和感がありましたが、何より声優さんの演技がすばらしくてとても楽しめました。Audible版『言の葉の庭』も、アニメーション映画のキャストと同じ声優さんが演じているのだそうです。中でも主役の男の子の母親の声がどうも聞きなじみがあるなと思ったら、子どもの頃によく観ていたアニメ『うる星やつら』のラムちゃん(平野文さん)でした。
これまでも文字で小説を読むことはありましたが、これほどの臨場感はありませんでした。文字で読むときは、頭の中で音読しているわけではないからです。また、文字で読むときはすべてを均等に理解しようとしますが、音声で聴くときはなんとなく聞き流すところと、意識しなくても頭に飛び込んでくるところがあります。
以前、NLP(神経言語プログラミング)の講座を受けたときに、情報処理の得意な感覚は人によって視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、身体感覚(Kinesthetic)に分かれると習いました。私は聴覚優位らしく、耳から受け取る情報がいちばん自然に入ってくる感じがします。Audibleとの相性がいいのは、そのせいなのかもしれません。
同じサービスで、違う価値を受け取っていた
会社員だった頃に通勤電車で利用していたのも、退職後の現在利用しているのも、まったく同じAudibleというサービスです。なのに、自分の状況の変化により、受け取る価値はまったく違うものになっています。
働いていた頃は、仕事の課題解決や効率化のための学習インプットが目的でAudibleを聴いていました。退職した今のAudibleは、さまざまな人生ドラマを味わわせてくれる音だけの映画です。
同じサービスから受け取る価値がこんなにも変わったことが不思議な感じがしますが、それは私自身が変わったからなのだと思います。
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