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越境2025⑦|パーイ:骨折

Hula Hula Sunset Viewpointの日々

Hula Hula Sunset Viewpointでの日々は、こんなふうに過ぎていった。

毎日、バイクであちこちへ出かける。

ある日は温泉、ある日はパーイキャニオン。
またある日は、朝霧に煙る中国人村へ。
週末になれば、街ではナイトマーケットが開かれる。

何もすることがなくても、レストランの座敷に腰を下ろし、東の山から太陽が昇り、やがて西の山の向こうへ沈んでいくのを、ただなんとなく眺めている。

それだけで、今日も素晴らしい一日だったと思えた。


毎日訪れるサンセットショー

日が傾き始める頃になると、どこからともなく人が集まってくる。

毎日繰り広げられるサンセットショーを、飽きもせず眺めていた。
そこにいる皆んなが、山の端に太陽の最後の光が消えていくのを、身じろぎもせずに見つめている。

やがて最後の青い残光が、ゆっくりと漆黒の闇へ溶けていく。
その時間の流れごと味わうように、何もしない贅沢を楽しんでいた。

去り際の気配

そんな日々の中で、ふと頭の片隅を横切る思いがあった。

そろそろ、パーイを去らなければならない。

帰国まで一週間を切った頃、街ではフェスティバルが開かれていた。

祝祭の熱気の中へ

コロンビアの二人組に誘われ、現地で落ち合う約束だけをして会場へ向かった。

場所は町外れの公園。

音に身を委ねる人たち。
ヨガに没頭する集団。
飲食やアートのブースが並び、祝祭の熱気が辺りを満たしていた。

スラックラインの一瞬


そんな喧騒の中、スラックラインに興じる一団が目に入った。

引き寄せられるように近づき、「自分にもやらせてほしい」と頼む。
若者は快く順番を譲ってくれた。

いつもより少し高く張られたライン。
慎重に立ち、呼吸を整え、一歩ずつ進む。

十メートルほどを渡り切り、最後に飛び降りて着地した。

——その瞬間だった。

踵を地面に思い切り打ち付けた。

凄まじい衝撃が走り、そのまま立ち上がれなくなった。

やっちまった。

異国の病院へ

平静を装って木陰へ移動する。
だが、歩けない。

途方に暮れていた時、目の前のホテルにバイクで戻ってきた旅行者がいた。

「通りの向こう側のバイクまで乗せてほしい」

彼はあっさり頷いた。

ようやく自分のバイクに辿り着く。
これは医者に診てもらうしかない。

パーイで一番大きな病院へ向かった。

現実へ引き戻される

病院に着いて、現実へ引き戻される。

がらんとした待合フロア。
今日は土曜日——受け入れは救急のみ。
自分のケースは、間違いなく救急だろう。

しかし、受付のカウンターにいる若い事務員は笑顔ひとつ見せず、対応は素っ気なかった。

支払いは現金のみ。
保険での精算は出来ない。
費用は、検査と診断をしてみないと分からない。

同じ説明が繰り返され、話は前に進まない。

痛みと堂々巡りに疲れ、いったん宿へ戻ることにした。

川の水と呼吸の音

帰る途中、川へ降りて足を流れに浸し、熱を奪う。

杖代わりに棒切れを拾い、身体を支えながら、這うようにして宿へ辿り着いた。

祝祭のざわめきは遠ざかり、代わりに自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえた。

旅の正体

旅は、思い通りに進んでいるときよりも、こういうときの方が、はっきりと姿を現すのかもしれない。

次回はこちら
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→ こちらもどうぞ、「越境1981 タイ、ネパール

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