日本の漁協(農協)は時代遅れ
35年くらい前、私は札幌の水産業界誌の編集記者として働いていた。
毎年、年始に発行するものはページ数を増やし、表紙をカラーにするなど手間をかけていた。
その年始の号で私は社内座談会の記事を書いた。
社内で座談会などしなかったのだが、4人でしたことにし、私の言いたいことや考えを各参加者たちにしゃべらせた(そういう架空の座談会を私はよく書いた)。
抑える役目の人物をひとりだけ設定し、残りの参加者にはもう言いたい放題にしゃべらせた。
その中で私は、ひとりの参加者に「漁業者にとって漁協(漁業協同組合)は邪魔者と言っていいんだ。漁協がすべての水揚げ物を一手に扱うようなシステムになっているから、漁業者は直販とかができない。このシステムは時代遅れだ」といったことをしゃべらせた。
そういう座談会記事を載せた新年号が発売された。
そしたら北海道漁連(北海道漁業協同組合連合会)から会社に電話が来て、「あの座談会記事をまとめた責任者を寄越せ」と言ってきた。
仕方なく私が魚連に行くと、下っ端の職員が出てきて、私が書いた座談会記事のページをめくり、前出の発言部分を指差し、「これは誰の発言ですか?」と聞いてきた。
「誰とは言えません」と私は答えた。
それからその職員と何だかんだと言い合いをした。
しかし、最終的には私が謝罪した。
漁連を怒らせては会社が危ないと思ったからだ。
しかし、その記事で私が指摘した問題は大きいという確信は揺らがなかった。
数年前、テレビドラマ『ファーストペンギン!』が放映された。

実話をもとにしたドラマである。
主人公のモデルは、山口県萩市で60人の漁師たちを束ねて「萩大島船団丸」を設立し、朝獲れした水産物を箱詰めして消費地へ直送する「鮮魚ボックス」事業で「漁業6次産業化」を成功させた坪内知佳さんである(冒頭の写真)。
あのドラマでは、主人公を演じた奈緒がいきなり漁業の世界に飛び込み、水揚げした魚介類を漁協に渡すのではなく、消費者に直接送るシステムを作ることで漁業者たちの収入を上げ、やる気も上げさせようと考える。
しかし、漁協がそれを阻もうとする。
漁船には、ガソリンのほか、水揚げした魚介類の鮮度を保たせるために氷が必須で、それらは漁協が有料で提供していた。
主人公の考えに賛同した漁師たちが集まると、漁協は彼らにガソリンも氷も提供しないという暴挙に出た。
昔は漁業者たちが魚介類を水揚げしても流通させたりすることができなかったので、その代行をする組織を作ろうという経緯で漁協ができた。
その面では漁協の功績は大きい。
しかし現代では、その組織は古臭くなっていて、漁業者にとって本当に必要なのか怪しくなってきている。
代行料が漁協の主な収入である。
代行が減ったら漁協の収入が減る。
それで漁協が邪魔をしたというのが、前出のドラマの粗筋だ。
この実話はごく最近の話である。
観ていて、今でも漁協はそうなのかと残念で仕方なかった。
35年くらい前に私が指摘した問題点がまだ解消されていないのだ。
農協はどうなんだろうか。
各地で生産者が育てた作物の直販が活発に行われているから、漁協と比べて農協は一歩か二歩くらい先を進んでいるかのように見える。
しかし、直販所で売るにしても農協は20パーセント以上の手数料を取るという。
漁協や農協っていったい何なんだ!
今の漁協も農協も、漁業者や農家のためになっていない。
消費者のためにもなっていない。
漁業者や農家や消費者のために一番いいのは、産地から直接、消費地に産物を届けることだ。
その際、漁協や農協はその邪魔をするのではなく力を貸すべきだ。
そうすれば消費者は安い価格で産物を手に入れることができ、漁業者や農家は手数料を取られないので、まっとうな利益を手にすることができる。
近年、米の価格が爆上がりしている。
なのに農協は、卸問屋にとんでもなく高価な価格で米を売った。
農家の収入を増やすためだと農協は言いわけするのだろうが、米がさらに高くなれば米はもっと売れなくなり、結果的に農家にメリットはない。
消費者のことなど少しも考えていないとしか思えない。
漁協や農協は変わらなければならない。
