左様とは?(挨拶言葉のルーツ)
「さようなら」という挨拶言葉は、昔の特に武士が「左様なら、これにてご免」と言っていたことから来ている。
「そうであれば(その通りなので)、これにて失礼する」という意味だ。
「左様でござる」「左様でございます」ともよく言っていた。
正確に言うと、江戸時代よりももっと以前の平安時代から「左様」は使われていた。
朝廷の左大臣は右大臣より位が高かった。
昔は、右より左のほうが上だと考えられていたわけだ。
だから「左様」といえば、自分より上位の人に対して使う言葉だった。
「あなた様がそのようにおっしゃるのであれば」という意味なのだ。
それが江戸期の武士が例えば自分よりも下位の人に対してまで「左様なら」「左様でござる」と言うようになったのは、たぶん謙遜してのことだったろうと思う。
言ってみれば、受け入れて引くといった印象を持つ言い方である。
つまり「左様なら」も「左様でございます」も敬語なのだ。
では「右様」と言うことはないのか?
ないようだ。
「そうであれば」という言葉が「さようなら」という挨拶言葉に変わったのは、明治になって元武士たちが「左様なら」をよく使ったのが民間にまで広まり、別れるときに使われるようになったのだろう。
東北や北海道では、別れるとき「したっけね」と言う。
これは「そしたらね」が訛ったものだ。
きっと、「左様なら」が変化して「そしたらね」になり、「したっけね」が生まれたのだろう。
「こんにちは」は、「今日はお日和がよろしいようで」という挨拶言葉が省略され、「こんにちは」になった。
昔の人は「今日」を「コンニチ」と言うことが多かったのだろう。
いま「今日」は、昔と対比していう場合のみ「コンニチ」と言う。
「今日は昔と違う」というように。
東北では「おみにょうにち」という挨拶言葉も使われている。
これは「お明日」のことで、「またあした」という意味である。
「こんばんは」はもちろん「今晩は」で、本来はその後に「お元気ですか」とか付けていたのだろうが、いつの間にか「こんばんは」だけで済ませるようになったのだろう。
日本人は言葉を短縮させたり省略させるクセがあるので、そのせいもあってそういう短縮型の挨拶言葉にしたのに違いない。
英語の挨拶言葉は「Good bye」にしろ「Good night」にしろ、そのまんまの意味だ。
「Good bye」を直訳すれば「良いお別れ」だし、「Good night」は「良い夜を」という意味で、まさに挨拶の意味である。
中国語では「おはよう」は「早」や「你早」と言う。
「你」は「あなた」の意味で、だから「你早」は「あなたは早いね」という意味だろうか。
「你」を使う言葉としては「你好」(ニーハオ)がよく知られている。
これは「こんにちは」とか「お元気ですか」という意味である。
日本の挨拶言葉と少し似ている点はあるが、言葉そのものの意味に挨拶の意味がもともと含まれているという点で日本の挨拶言葉とは違う。
日本語の「じゃあね」は「では」が変化した言葉だと思う。
「これにてご免」という挨拶言葉からは、「ごめんなさい」「ごめんください」といった挨拶言葉が生まれた。
「ごめんください」は、訪問したときにも、帰るときにも使う。
「ご免ください」は「失礼します」という意味も持つので、そういう使い方がされるようになったのだと思う。
日本人は言葉の意味をあまり考えず、みんなが使うからとか、便利そうだからといった理由で、多くの挨拶言葉を作ってきたのだろう。
