空手と合気道の限界(実戦性を取り戻す稽古をしている)
私は空手と合気道を習った。
最初に空手を習い、寸止め流派だったのと空手の基本的な構え方からは上段突きは難しいといった疑問が湧き、同門の友人とともに師範に隠れてフルコンタクトの組手練習をした。
するとやはり腹脇に拳を構える方法では上段を狙うのは難しいと確信でき、キックボクシングのようなパンチの使い方になっていった。
「空手は一撃必殺」とか言われていたが、それもウソだと知った。
お互い体をかなり鍛えていたせいもあり、相手の攻撃をまともに受けてもそう簡単には倒れなかった。
それと伝統派空手のスタンスは広く、素早い動きができないこともわかった。
私たちは“空手”を改良していき、実戦に通用する武術に仕立て直した。

それから何年か経ち、空手の動きが直線的なことに物足らなさを感じるようになった。
そんなとき合気道の存在を知った。
試しに入門してみると、驚きの連続だった。
まず足捌きが速い。
日本武道で最も速いと言われている剣術の足捌きを取り入れているからだ。
多くの投げ技が手首関節を極めてから投げるので、相手は抵抗できなくてあっさり投げられる。

というより、関節を極められているので、相手はその痛さから逃れるため自分から倒れてくれるのだ。
相手の力を利用する技もたくさんあった。
何よりも興味を引いたのは円の動きと入り身だった。
円の動きで相手の攻撃をかわし、相手の重心を崩し、その上で技をかけて相手を投げたり、床にうつ伏せにして動けなくする。
入り身は、攻撃してきた相手に瞬間的に素早く近寄って懐に入り込むことだ。
相手が力をまだ出し切っていない状態で入り身すれば、相手の腕やら何やらを簡単に押さえることができ、空手の技を使えば、受けと同時に攻撃もできる。
ただし、前にも書いたが、合気道には「合気」はないのではないかと疑問を抱いた。
「合気」とは説明不能の不思議なモノで、それを会得すれば、例えば相手に胸ぐらを掴まれたとしても、フッと少しだけ体を横に振るだけで相手は激しく飛ばされて畳に叩きつけられる。
しかし、合気道にそんな技はない。
中には稀な素質を持つ人が厳しい修行をして「合気」なるものを掴むケースがあるようだが、少なくとも合気会(開祖・植芝盛平氏の正当な流派)ではそんな技は教えていない。
5年ほど修行し、私は教えてもらった技では飽き足らず、自分なりの技を考案して使ってみたりした。
合気道の技の中には、「何もそんな動きを入れる必要ないのに」というものがいくつかある。
そんな面倒なことをしているうちに、相手がひとりだけだったらいいが、複数いたら、後ろや横からやられると思った。
それで技を簡略化したりして自分なりの技を考案したのだ。
正当な技しか知らない人なら、黒帯でもあっさり投げることができたし、受け身が取れないほど激しく投げ付けることもできるようになった。
そして、独自の空手と独自の合気道の技を融合させることに必死になった。
4人の敵に囲まれたと想定し、短時間で確実に次々に相手を倒していくイメージトレーニングを積み、その練習の中で空手と合気道をうまく使い分けていくコツを掴んだ。
合気道には蹴りがない。
パンチはあるが1種類だけである。
蹴りがないのは片足になると体が不安定になるかららしいが、蹴りが使えないと実戦では致命的になることが多い。
合気道の源泉になった大東流合気柔術ではパンチも蹴りも使う。
それをなぜ最低限に絞ったのか?
たぶん、蹴りのような危険な技は省こうと思ったのだと思う。
開祖は晩年、「合気は愛や」と言っていたそうだ。
敵を砕くのではなく、敵から攻撃力を奪うのが理想と考えるようになったようだ。
しかし開祖は、「実戦では当て身(突き・蹴り・頭突き等)七分に投げ三分」という言葉を残してもいる。
実戦では当て身が不可欠だと体験から知っていたのだと思う。
おそらく昔の合気道では当て身も使っていたのだろう。

しかし、それでは危険だし、合気道をそういう武道にしたくないという思いから当て身をほぼ省いたのではないか。
その点は柔道に似ている。
柔道を創始したのは嘉納治五郎である。
講道館を作った人だ。
もとは柔術をしていた。
柔術には当て身技と危険な関節技が豊富にあった。
それら危険な技を取り去り、スポーツとしての「柔道」を作ったわけだ。
柔道家と組んでみたことがあるが、押しても引いてもビクともしないので驚いた。
空手を使えばどうにかできたと思うが、それは高校の柔道の授業中のことだったので、空手を使うわけにはいかなかった。
今の柔道の試合を見ると、倒れて四つん這いになると、審判が「マテ」と言う。
投げるのではなく、転がって相手の背中が畳に付けば「イッポン」になる。
もはやスポーツと言う以外にない。
当て身を省いた合気道ももう実戦的ではなくなっていると言っていいと思う。
しかし空手には突き技と蹴り技が豊富にある。
ただし、フルコンタクト系空手の試合では、手による顔面攻撃と金的攻撃を禁じている。
だから選手たちは、近い間合いで胸や腹を叩き合うことが多い。
そんな間合いで闘うのに慣れたら、「顔面攻撃あり」のルールの試合では非常に不利になる思う。
実際、「Kー1」に出場した極真会館(フルコンタクト試合を始めた流派)の空手家たちの多くは、相手から顔面パンチを喰らってダウンした。
変なルールを作ると、実戦で役に立たない武術になる。
若いころ私が同門の友達とフルコンタクトの練習をしたときは、「顔面と金的は寸止めならオーケー」というルールで稽古した。
そのため顔面に来るパンチや金的を狙う蹴りにすぐ対応できるようになった。
実戦性のあるその空手に、合気道の基本テクニックと私が独自に考案した技を加味した闘い方で、前述したように、毎朝、イメージトレーニングしている。
火の粉がふりかかってきたら、いつでも対応できるように。
それに、何といっても、家族や友達や恋人が暴漢に襲われたときに助けてあげられるように。
