歯医者さんに褒められたい
「綺麗な状態を保ててますね」
そう言われると、
よっしゃ。と思う。
「ありがとうございます」
と、普通の顔をして答える。
でも心の中では、かなり喜んでいる。
昔は歯医者が大嫌いだった。
子どもの頃、おじさんの歯医者さんに
「このままだと虫歯チャンピオンになるよ」
と言われた。
今思えば、優しく諭してくれていたんだと思う。
たぶん。
でも子どもにとっては、なかなかのパワーワードである。
私はすっかり「自分は虫歯チャンピオンなんだ」と思い込み、その後も歯医者に行くのが怖くなった。
その歯医者さん、麻酔してくれなかったし。
虫歯ができる。
→でも歯医者には行きたくない。
→行かないから、また虫歯ができる。
完全に悪循環である。
ちなみに、その虫歯チャンピオンおじさん(歯医者)はヘビースモーカーで歯が黄色かった。
子どもながらに
「……いや、あなたに言われたくないんですけど」
と思っていた。
もちろん口には出せないが。
そんな私も大人になり、歯医者さんで麻酔をバンバン打ってもらえることを知った。
あれ?思ったより痛くない。
いつの間にか歯医者がそこまで怖くなくなった。
そして、いい加減虫歯ゼロを目指したいと思うようになった。
今では虫歯になるのが怖すぎて、月1で歯医者に行っている。
昔の私からしたら、かなりの進歩。
しかも歯医者に行く前は、いつもより念入りに歯を磨く。
「普段からちゃんと磨いてますけど?」
という顔をしながら、ちょっと頑張っている。
そして診察を受ける。
このとき、私は密かに期待している。
今日も褒めてもらえますように、と。
「しっかり磨けてますね」
よっしゃ。
コレだよコレ。
私は月1、褒めてもらうためにお金を払っている。
もちろん、歯の健康のためでもある。
でも、褒めてもらえるとやっぱり嬉しい。
私は「字が綺麗ですね」と言われるのも嬉しいし、「面白いですね」と言われるのも嬉しい。
容姿よりも、そういうところを褒められると特に嬉しい。
……いや、
容姿でもいい、もうなんでもいい、
とにかく褒めてくれ!
だから私は、次の歯医者でも褒めてもらえるように、今日も歯を磨く。
月1の「綺麗ですね(※歯)」を楽しみに。
