ピストリー#1 「あらよっと」の世界(巻頭言)
▼はじめに
勤め先の事業に「自分史(Life Stories)」というコンテンツがある。簡単に言ってしまうと、「大きな歴史」に対置される生活者個人の歴史だ。
第二次大戦後、市井の人々による戦争体験や、「ふだん記」運動を発端に広まった「自分史」の活動は、担い手の高齢化が課題となって、規模の縮小を続けてきた。
他方で、文学フリマでは、「日記」本や「エッセイ」集などが一大ジャンルとして規模を拡大し続けている。
社会学者の岸政彦さんが日本各地で展開する聞き書き活動「生活史」の記録もまた、大文字の「Histoire」に対するカウンターとして位置付けることも可能だろう。
つまるところ、「身の上話を書き残したい」という人は年代関係なく一定層いるものの、それが「自分史」の旗印に集まっていないだけ、と考えるのが自然な流れに思える。
「自分史」という字面がとっつきにくいのかもしれない。だから、わたしはチャーミングな名前をつけたいと考えた。
そう思って、「Personal History」を文字った「ピストリー(Pistory)」、あるいは「フィストリー(Phistory)」はどうだろう?と、ふとしたときに考えた。
歴史なんか修正しなくたって、歴史化されずに存在したオルタナティブな個人の生を好き勝手語れるように。
あるいは、誰かの生きた証や愛しき隣人から授かった哲学を封緘したいときに使えるツールとして。
もし、「ピストリー」と聞いて、書きたい出来事や記憶が思い浮かんできたとしたら、この生まれたばかりの単語を好きに使ってほしい。
これを読んでくれた人が、「フィストリー」を起点として、思い思いのテキストを書いてくれたとしたら、この上ない喜びになる。
そうやって、書き残したい「個人史」や「生活史」が、世の中に少しでも流通して溢れかえることを願って、
この人類史に、類稀なる善性が存在していたのだという手がかりを残す、小さな希望を託した祈りを込めて、
本シリーズを、わたしの大学時代の恩師である津村俊充先生と、わが人生の恩人・荒木孝司氏に捧げます。
▼つんつん記念館
故・津村 俊充(南山大学名誉教授)メモリアルページ
▼「『あらよっと』の世界から、日常の気づきを学びへ」 -荒木孝司(ソーシャルクリエーター)
人間関係研究 (5)[172-198, 2006-03-01,南山大学人間関係研究センター]
https://rci.nanzan-u.ac.jp/ninkan/publish/item/05_06_02.pdf
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