うきは市——白壁の町と、フルーツの実る山すそ

山の麓に、桃やぶどう、柿が、季節をかえて次々に実る。少し下れば、白い漆喰(しっくい)の蔵が連なる古い町並みが続く。うきは市は、「フルーツ王国」と「白壁のまち」というふたつの顔をあわせもつ、欲ばりな町だ。一年中なにかしらの果物が食べごろを迎えるこの土地を、ゆっくり歩いてみよう。
●歴史——宿場町の繁栄と、大火が生んだ白壁の町並み
うきは市の中心、吉井(よしい)地区は、江戸時代に宿場町として栄えた。久留米と日田(大分県)を結ぶ豊後街道(ぶんごかいどう)の宿場として、人と物が行き交うにぎやかな場所だったのだ。明治以降は、はぜの実からとる木蝋(もくろう)づくりや、酒造業、油づくりなどで富をたくわえ、商家が立ち並んだ。
ところが明治の大火で町の多くが焼けてしまう。そこで人びとは、火に強い土蔵づくりの白壁の家を競って建てた。これが今に残る「白壁の町並み」のはじまりだ。なお「うきは」は、2005年に浮羽町(うきはまち)と吉井町が合併してできた、比較的新しい市である。
●地理的な特徴——耳納連山の山すそに広がる、実りの傾斜地
うきは市は、福岡県の南東部、筑後川の中流域に位置する。市の南側には耳納(みのう)連山がそびえ、その山すそから筑後川にかけて、ゆるやかな傾斜地が広がっている。
この水はけのよい傾斜地と、昼夜の寒暖差が、果物づくりにうってつけなのだ。うきは市は果物の産地として全国でも有数で、農業の産出額にしめる果実の割合がとても高い。いちごにはじまり、桃、ぶどう、梨、柿、いちじくと、四季を通じてさまざまなフルーツが実る。山あいには清らかな水が流れ、棚田や滝など、美しい風景もあちこちに残されている。
●観光スポット
★外国人向け——つづら棚田
つづら棚田(たなだ)がおすすめだ。約三百枚の小さな田んぼが山の斜面に折り重なる、四百年の歴史をもつ棚田で、「日本の棚田百選」にも選ばれている。水を張った春、黄金色に実る秋、そして9月中旬に畦(あぜ)を真っ赤に染める彼岸花。どの季節も、日本の原風景そのものだ。
○日本人観光客向け——フルーツ狩りと調音の滝
なんといってもフルーツ狩りを。果樹園では、桃やぶどう、梨、柿など、季節ごとの果物の摘み取りが楽しめる。もぎたての一個を頬ばる瞬間は格別だ。あわせて、夏なら調音(ちょうおん)の滝へ。江戸時代、久留米藩主の奥方が「水の音がまるで音楽のようだ」と感じたことから名がついたという、高さ27メートルの涼やかな滝で、夏の水遊びの定番だ。
◎地元の人向け——白壁のまち吉井
白壁のまち吉井をすすめたい。古い町並みを国がまるごと守る「重要伝統的建造物群保存地区」に選ばれた吉井の町並みは、観光地化しすぎていないのがいい。漆喰の蔵をそのまま生かしたカフェや雑貨店が点在し、地元の人がふらりと立ち寄る。古い町家の路地を、あてもなく歩く時間が心地よい。
●実りと白壁の、ぜいたくな田舎
うきは市をひとことで言うと、「実りと白壁の、ぜいたくな田舎」だ。山すそでフルーツを摘み、白壁の町でひと休みする。そんな一日が、無理なく成り立つ町である。次の休みは、季節の果物を目あてに、うきはへ出かけてみよう。
