第4話【母は病院へ行かなくなった】
父の浮気がきっかけで、お母さんは抗がん剤治療へ行かなくなりました。
最初の頃は、月に一度の定期検診だけは通っていました。
でも、そのうち定期検診も行ったり行かなかったり…。
少しずつ、病院から足が遠のいていきました。
私はまだ子どもでした。
だから、お母さんがどんな気持ちで病院へ行けなくなったのか、その時は分かりませんでした。
これは、私が中学校へ入学する前のお話です。
お母さんは笑顔でこう言ってくれました。
「入学式には行けるように頑張るからね。」
私はその言葉を信じていました。
制服姿を見てもらえる。
一緒に写真を撮れる。
そんな当たり前の未来が来ると思っていました。
でも、その願いは叶いませんでした。
がんが再発し、お母さんは再び入院することになったのです。
結局、お母さんは私の中学校の入学式には来ることができませんでした。
その後、一度は退院することができました。
でも、以前のお母さんとは少しずつ違っていました。
体には痛み止めの貼り薬。
それがなんの為の薬なのかは、当時の私は知りませんでした。
「痛い…。」
そう口にすることが増えていきました。
それでも私は、その痛みがどれほどのものなのか、まだ理解できていませんでした。
それから約一年。
お母さんは歩くことさえ難しくなりました。
そして…。
寝たきりになってしまいました。
その時、私は中学2年生。
一年生から続けていた部活動も辞めました。
あの日を境に、
私はただの「娘」ではいられなくなりました。
次回──。
私は、お母さんの介護をすることになります。
