「とたん屋根とコールタール」
子供の頃の記憶。
真夏の強い日差しの中、
焼けたトタン屋根に上がる。
足の裏からじりじりと熱が伝わってきて、
長く立っているのもつらいほどだった。
それでも、手には刷毛。
黒く重たいコールタールをすくい、
ゆっくりと屋根に塗り広げていく。
独特のあの匂い。
少しむせるようで、
でもどこか懐かしい。
風が吹けば熱気と一緒に流れていき、
遠くで鳴くセミの声がやけに大きく聞こえた。
作業は決して楽ではなかったけれど、
塗り終えたあとの屋根はつやつやと黒く光り、
どこか誇らしい気持ちになったのを覚えている。
あの頃は、それが当たり前の夏の仕事だった。
今では見かけることもなくなった風景。
けれど、あの照りつく暑さと
コールタールの匂いは、
不思議と記憶の奥にしっかり残っている。
しあわせのあおいねこ 2026.7.1
