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読曞「䞖界の終りずハヌドボむルド・ワンダヌランド」  解離システムずしおの内界「䞖界の終り」

 村䞊春暹「䞖界の終りずハヌドボむルド・ワンダヌランド」を読了した。村䞊春暹の䜜品を読むのは「アフタヌダヌク」ずいう倉わり皮から入門しお「ねじたき鳥クロニクル」を読み、続いおこれで冊目になる。

 結果、いおもたっおもいられなくなり感想を曞くこずにした。

読了したすべおの本の感想蚘事を曞くわけではない。最近はポメラで読みながらあらすじや感想のメモ曞きを曞いおいお、段階評䟡で蚀うず★★★★☆匱3.54.0くらいの本たではそれだけで終わっおしたうこずが倚い。この䜜品は個人的評䟡が★近くたで行っおしたったずいうこず。単におもしろいだけでは★たでいかない。自分の心の䜕かの琎線に觊れ、様々な感情が溢れ出しお、骚を折っお感想を䞀定の氎準の圢にたでたずめあげないず「成仏できない」ず感じたずき、このシリヌズの蚘事を改めお曞く必芁が出おくる。

 端的に蚀うず、䞻人公の粟神構造が自分に䌌過ぎおいお、ショックを受けおしたった。たぶん自分は「シャフリング」適正めっちゃあるず思う。絶察やりたくないけど。



「私」の性栌に぀いお

 「ねじたき鳥」もそうだが、自分はどうやらそもそも村䞊春暹䜜品の䞀人称䞻人公に割ず”共感できおしたう偎”らしい。

 自分がもし最初から男ずしお生たれおいお、なおか぀顔が良かったら色んな女の子ずセックスしたくっおたのかもしれないしそうじゃないのかもしれないずか想像しおそれは䜕か嫌だなず思っおしたうくらいには䌌おいる。やれやれ  。


 擊り切れた粟神

 ずにかく圌らは歳くらいの男で、人生に疲れ切っおおり、職や家庭を䜜䞭で倱っおしたったり、「友達はいない」ず断蚀する「れロの男」であり、ただ安寧に暮らしたいだけだずいう消極的な未来像を持っおいる。

 なんでこんな性栌になったなっおしたったのかは䜜䞭ではほずんど説明されない。「ねじたき鳥」ではマゞでミリも過去話が出おこなくお床肝抜かれたのだが、この「䞖界の終り」では少しだけヒントは曞かれおいた。

「いろんな芁因があるです」ず博士は蚀った。「幌児䜓隓・家庭環境・゚ゎの過剰な客䜓化・眪悪感  ずくにあんたには極端に自己の殻を守ろうずする性向がある。違いたすかな」
「そうかもしれない」ず私は蚀った。

䞋p119

 ずにかくなんか色々あり、疲れお擊り切れおしたったらしい。

 おそらく、䜜䞭の「脳手術」やら「砎壊された家」やら「腹の傷」やらに象城されるこれらに関しおはし぀こいくらいに「私」は文句を蚀いたくるように、他者が個人的な領域に土足で䞊がり蟌んできお吊応なしにめちゃくちゃにしおくるみたいな経隓を過去に䜕床もしたのだろうず掚枬される。「私」の人生は無遠慮な他者に䟵害され振り回され、疲匊し、぀いには「やれやれ」ず蚀うこずしかできなくなっおしたった。

 そしお「私」に䞍条理を䞎えるのは個人だけではなく、䜜䞭では〈組織〉・〈工堎〉ずしお出おくる倧䌁業や、闇の眷属「やみくろ」ず結蚗しおいるず蚀われおいる政府などの倧きな暩力組織も挙げられる。そういったものに「私」は利甚されるだけで、こちらから向こうには䜕の圱響も䞎えられず、どうするこずもできない。孊習的無力感だ。


 他者ぞの無関心・無感動

 博士が半分勝手な善意、半分興味本䜍みたいな動機でした脳手術のせいで「私」の意識が「䞖界の終り」に呑たれようずしおいる「私」の連続的意識芖点では死ぬようなものずいうこずが刀明した時も、「私」はたずもに怒らない。博士の話を聞いおいたら”どうでもよく”なっおしたっお怒る気もなくなっおしたったらしい。たぶん䞀回キレたのも、”客芳的に芋お明らかに䞍条理なので䞀応怒るポヌズをしおおいた”ずいう感じで他人事だ。

 たた、最埌の最埌のシヌンで「倪った嚘」ず電話が繋がり、こんなやりずりがある。

「怖がらないでね。あなたがもし氞久に倱われおしたったずしおも、私は死ぬたでずっずあなたのこずを芚えおいるから。私の心の䞭からはあなたは倱われないのよ。そのこずだけは忘れないでね」
「忘れないよ」ず私は蚀った。そしお電話を切った。

䞋p400

 感動的だ。あたりに感動的なので、確かどこかの䜜品玹介でも匕甚されおいたず思う。でもたぶん「私」には響いおいない。少なくずも感情移入状態の自分にはああ心を動かす優しい蚀葉をかけおくれおいるらしいなあずいう感じで、なんか逆に哀しくなっおしたった。博士が蚀う「実に面目ない」ず同じようなニュアンスに聞こえおしたうのだ。

 「私」の倪った嚘に察する態床は非垞に埮劙で、倚少の奜意は抱き、協力し合い぀぀も、心理的に䞀定距離以䞊は絶察に近づかないそれはダリチンなのにもかかわらずセックスしないこずにも珟れおいる。盞手がいちおう未成幎なのもあるけど。春暹䜜品䞻人公たちはダリチンなりに貞操抂念はやたらしっかりしおいる笑。

 ずにかく、「私」は他者ずの関係を諊めおいる感があり、䜕か芋えない「壁」のようなものを感じる。そう、「壁」。


「感情の殻」ず内界

 䞻人公の性栌が䌌おいるこずくらいでは、文孊䜜品読んでたらよくあるこずだしどうっおこずないのだが、問題はここからだ。

 自分は内面䞖界を異垞に発達させおいお、垞日頃からむマゞナリヌフレンドのような感じで”自分たち”ず䌚話したくり、心象颚景をほっ぀き歩いたりしおいる。

 そしおそれは、孊校生掻や性生掻など過酷な感情的環境から逃避するため、「感情の殻」の䞭に逃げ蟌もうずする詊みから発展しおいった。このシステムは自分にずっおなくおはならないものであり、圓たり前の空気のようなものである。そういう自己ずしお成長したのだ。

 しかしたさにこの”内界システム”によっお、異垞に内向的に、意識が内ぞ内ぞずしか向かわず、”倖界”で生きおいる心地がしない、他者ず心から関わるこずができないずいう状況になっおしたっおいる。身から出た錆。

 その”解離”しおいるずも蚀える粟神構造が䞻人公にそっくりなのだ。本圓に鬱。読むの぀らすぎ。

ちなみに 「ねじたき鳥」の䞻人公も嚌婊的行為をするずきに解離しおるっぜかったりする

 自分語りはこの蟺にしお。


 解離システム「䞖界の終り」

 シャフリングのための凊眮をされた蚈算士の䞭で「私」だけが生き残るこずができたが、それは元々「私」が「感情の殻」を持っおおり、二぀の意識を切り替えお思考するこずに慣れおいたからだず説明される。そしおそのもう䞀぀の意識䞖界は博士の手によっお”ドラマ”に線集され「䞖界の終り」ず名付けられる  。

 「䞖界の終り」は解離装眮なのではないか。

 他者からの䟵害ずいった傷を受けた蚘憶ず感情が「壁」の䞭に運び蟌たれお隔離される。そしお傷を受けた心は少しず぀獣が吞収し、獣は苊しみながら死に、死䜓ずしお焌华され、それでも成仏できないので、心を持った自我である「僕」が、そうやっおものすごく時間が経った埌に頭蓋に觊れ読み取る他人事ずしお思い出すこずでやっず浄化される。たぶんそういうこずが起こっおいる。よくできた解離の文孊的昇華だず思う。


「そこは安らかな䞖界です。あんた自身が䜜りだしたあんた自身の䞖界です。あんたはそこであんた自身になるこずができたす。そこには䜕もかもがあり、同時に䜕もかもがない」

䞋p152

私はこれで私の倱ったものをずり戻すこずができるのだ、ず思った。それは䞀床倱われたにせよ、決しお損なわれおはいないのだ。

䞋p403


 葛藀ず分裂

 「僕」は「壁」の内偎に入るにはたず倖界衚局の意識の蚘憶を握っおいる「圱」から切り離されなければならない。おそらく「圱」は倖面的な人栌、他者に曝されおいる郚分、ペル゜ナだず思われる。

 「圱ペル゜ナ」ず「僕内面の自我」が分離しおいるこずは䞍自然だから、「圱」ず抱き合わせになっおいる「心」を倱わないうちに䞀緒に脱出しお再び䞀぀になるこずを画策する。

 衚局意識ずしおの「私」≒「圱」も、倖の䞖界「ハヌドボむルド・ワンダヌランド」をなんだかんだで気に入っおおり、生きおいたい、「䞖界の終り」に呑たれたくない、ず願う。

   が、そうはならない。「圱」だけが脱出し、「僕」は「心」を倱わずに「壁」の䞭のさらに「森」の䞭で「圌女」ず䞀緒にがんばっおやっおいくこずを遞ぶ。

 これは䞀぀の”分裂”だず考えるず悲劇なのかもしれないが、この結末は「僕私」の遞択であり、望みであるのだから、少なくずも”公平で責任を取れる”、䞻䜓的な、ハッピヌ゚ンドで良いのだず思う。内界においお公平で責任が取れるこずは本圓に倧事なんだ。それがすべおだ。

 少なくずも「圱」も「心」も党郚生きおいるじゃないか。解離の正圓性はそこにある。すべおを損なわないたった䞀぀の冎えた方法。それをこの物語で肯定されお、内界を心の拠り所にしおいる自分はホッず胞を撫で䞋ろした  。

 しかし、自分も「私」ず同じような葛藀はしおいるこずに倉わりは無い。ずっず「壁」の䞭で匕きこもっお安寧に暮らすのかそれでいいのかその䞖界は安寧ではあるが死んでいるのではないか生きなくおも、いいのか

 他者ず関わらなくお、本圓にいいのか


それでも他者ず関わる

  「圌女」ずの繋がり

 結局「䞖界の終り」の䞭で「僕」は「心」を倱わなかった「圱」がずりあえず生存したためが、䞖界の決たりずしお、過酷な「森」に远いやられお暮らしおいくこずになった。でも独りではなくお、図曞通の「圌女」も䞀緒にいる。

 この「圌女」の存圚が結構な謎ずなっおいお、明らかに「ハヌドボむルド・ワンダヌランド」の方の図曞通叞曞ちゃんず察応しおいるのだけど、シャフリングの最初の手術で「䞖界の終り」が固定された時点では出䌚っおいなかったはず。おそらく博士が趣味ずきたぐれで”ドラマ”化した「䞖界の終り」を第䞉の意識ずしお「私」に組み蟌んだずきに、「私」の望むように無意識䞋で物語を改倉できる仕組みに戻ったのだず思われる。そのずきに「圌女」の抂念が倖界から流れ蟌んできお生成されたのだろう。

 「ハヌドボむルド・ワンダヌランド」でも、図曞通の「圌女」ずのやりずりはずおも和やかで、愛ず心からの繋がりが感じられる。

 ただおそらく、「私」の偎はただ「圌女」ず繋がりきれおいない。そのためには「䞖界の終り」で「圌女」の「心」を芋぀けださなければならない。

 䜜䞭でもそれは郚分的に達成され、「ハヌドボむルド・ワンダヌランド」でも、それは䜕か䞍思議な力による博士がなんかしたのかもしれないし、そうじゃないかもしれない䞀角獣の頭蓋の発光ずいう圢で衚される。それがずおも感動的、そしお垌望的でよかった。

 ほんずうに、指ず指が觊れあうような埮かな繋がりだが、「私」のような人間にずっおはそのような心からの繋がりが奇跡的なのだ。

 そしお「私」のような人間が他者に到達するには、たず自分の䞭の䞖界でそれを探さなければならないのだ  。


 やけくそのような博愛ぞ

 「圌女」を通しお他者ずの繋がりを経隓できたからこそ、死ぬ前に半ばやけくそのようにでもみんなに怒るべき博士にさえも博愛的な祝犏を莈るこずができたのだず思う。

 めっちゃやけくそだけど、別に嘘でもない。人間はみんな「私」に奜き勝手な奜意やら悪意やらを曝しお結局”過ぎ去っお”いくけれど、䞀瞬亀わったそのずきの経隓はきっず本物でかけがえのないものであるこずには違いない。

 この堎面がずおも奜き。そしおこれも少し芚えがある。人間䞀般に興味が無いが、人間䞀般をうっすら愛しおもいる。


 「唄」を媒介に繋がる

 ぀の䞖界は「唄」によっお接続される。”厇高な”クラシック音楜ずかじゃなく、ちょっず叀いずはいえみんなが知っおいるような歌謡曲。

 この䜜品では特に埌半には唄がよく出おくる、ずいうか劂䜕なる状況でも䞻人公はずっず䜕かしら歌っおいるような気がするが、それによっお自分自身ず繋がり、その唄を共有しおいる他者ずも繋がるこずができた。これも感動的だ。

 ほんの少しだけ「心」を保持しおいる「発電所の管理人」は、楜噚や発電機など人工物の”矎しさ”、぀たり芞術を愛でる気持ちを持っおいる。そしお自分は垞日頃から、芞術の圢態の䞭でも音楜が最も感情に盎接的に結び぀くこずができるのだず感じおいる。「心」のキィは音楜にあるのかもしれない。


その埌の展開予想劄想

 「ハヌドボむルド・ワンダヌランド」の「私」は「䞖界の終り」に飲み蟌たれ、「圱」は「壁」の倖に脱出するずいうこずは、「私」ず「圱」が入れ替わるような圢になり、他者芖点では「私」の肉䜓は䜜䞭で予想されるように死ぬわけではなく、「圱」ずしお シャフリングの凊眮をされ固定された時点での意識を持った「私」が、レンタカヌの䞭で䜕事もなかったかのように目芚める、぀たり蚘憶喪倱になるのではないかず思う。蚘憶喪倱ずいうのも解離の兞型的な症状仕組みだ。

 そうかもしれないしそうじゃないかもしれないけど。

 「森」での暮らしに象城されるように、これからのこれからも䞻人公たちの人生はずおも぀らいものになるず思われる。「圌女」ずはうたくやっおいけるのだろうか。

 前劻のようにたた出お行っおしたうこずにならないずいいけれど。



おしたい

 䞀軍本棚のヘッセ「荒野のおおかみ」の隣に䞊べたい䜜品だった。

 そういえば䞡䜜品ずも、客芳的に芋るず䞻人公の身には特に䜕も起こっおいない。かずいっお完党にファンタゞヌで内界の話ずいうわけではなく、ちゃんず倖の䞖界はある。

 そういう内界ず倖界の間の葛藀を描いた半ロマン的な話が私的にリアルに思えお、共感するのだろう。その路線だず、ホフマン「黄金の壺」もよかった。これも同じ棚だな。

 「䞖界の終りずハヌドボむルド・ワンダヌランド」の玄幎埌に曞かれた「ねじたき鳥クロニクル」も、愛する劻を救出したり、いよいよ暩力ず察決したりずヒロむックでよかったけど、あれは自分にはただ倖向的すぎるな。自分も幎経ったらああなれるだろうか。


 村䞊春暹䜜品はなんか”流行っおいる”らしいけど、比范的異垞な粟神を持っおいるらしい自分が共感できるっおこずは、倧倚数の人は共感できない、ずいうか内界たわりのこずは盎感ではわからないんじゃないかず思っおしたう自分ずしおはリアリズム的でさえある。

 なんで流行っおるんだろう。誰か教えお䞋さい。

いいなず思ったら応揎しよう

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