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残月村の異聞│むっつめ

ざっ、ざっ。

複数の足音がすぐ側まで聞こえた。

息を殺し、過ぎ去るのを待つ。

――なんでこんなことに……。

やがて足音が遠のいた。

――とにかく、村から出るんだ。

軒下から這い出し、駆け出す。

バク、

バク。

心臓が爆発しそうなほど大きく鳴る。

はっ、

はっ。

息が上がった。

――あいつが誘わなかったら……!

頭をよぎった言葉を振り払う。

――今は逃げることだけを考えろ!

集落を抜け、森へ飛び込む。

どれだけ走っただろうか。

足がもつれ、その場に座り込む。

もう限界だった。

とっくに日が暮れていた。

荒い呼吸を整えながら、周囲を見渡す。

少し欠けた満月が、古びた境内を照らし出していた。

――あそこで、少し休もう。

――夜が明けたらすぐに出ればいい。

そう自分に言い聞かせ、古びた境内へ入った。

蝋燭が灯っている。

奥に祭壇があった。

その手前には藁で編まれた敷物が四つ並んでいる。

不自然に盛り上がっている。

その形に、嫌な想像をしてしまう。

ぎぃ……。

ぎぃ……。

床を鳴らしながら近づく。

鼻を押さえ、一つの敷物を一気にめくる。

――ひっ!

悲鳴をあげ、尻もちをついたまま後ずさる。

――な、なんで……。

ガタン。

不意に鳴った音に心臓が跳ねた。

家鳴りとは違う。

蝋燭の灯りが大きく揺れ、かき消えた。

細い煙が暗闇に薄く残る。

ぎぃ…。

ぎぃ……。

床の軋む音がする。

コン。

コン。

自分の足音とは違う。

まるで杖を突くような乾いた音だった。

後ろから近づいてくる。

息遣いは聞こえてこない。

聞こえるのは自分の呼吸だけだ。

ひゅ……。

ひゅ……。

音が近づいてくる。

バクン。

バクン。

大きく脈打つ心臓の音を聞かれまいと、必死に押さえた。

そんなことをしても無駄だと分かっているのに。

コン。

コン。

耳元で音が途絶えた。

――嫌だ……!

――嫌だ……!

――嫌だ……!

自然と涙が溢れた。

――死にたくない。

人の温もりを欠いた冷たいものが、ゆっくりと首筋を包み込んだ――。


むっつめ、ひどい目にあい続けた人形は、とうとう泣き出しました





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