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米国の雇用が減ったのに、S&P500は最高値──「悪いニュースで株が上がる」相場について考えたこと【ニュース×投資心理】

8月7日に発表された米国の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月から2万3,000人減少しました。

市場では8万人の増加が予想されていましたので、予想を大きく下回る結果です。

さらに、5月と6月の雇用者数も、合わせて10万3,000人下方修正されました。

雇用が減り、過去の数字まで引き下げられた。

これだけを見ると、米国経済にとってはあまり良いニュースとは思えません。

ところが、この日の米国株式市場では、S&P500が0.62%上昇し、史上最高値を更新しました。NASDAQ総合指数も1.30%上昇しています。

雇用が悪化したのに、株価は下がるどころか最高値を更新した。

一見すると、少し不思議な動きです。


悪いニュースが、利上げを遠ざけた

今回の株価上昇には、米国の金融政策が関係しています。

中東情勢や原油価格を背景にインフレへの警戒が続き、市場ではFRBが9月に利上げする可能性が意識されていました。

金利が上がれば、企業の資金調達コストは増えます。
将来の利益を現在の価値に置き換えたときの評価も下がりやすくなるため、株式市場、なかでも成長株には重しになります。

ところが、今回の雇用統計では、雇用者数が予想外に減少しました。

雇用が弱くなっているときに、さらに金利を引き上げれば、景気を必要以上に冷やしてしまう可能性があります。

そのため市場では、FRBが9月に利上げする可能性が低下したと受け止められました。
市場が織り込む利上げ確率は、雇用統計の発表前の約55%から、発表後には約44%まで下がっています。

雇用の悪化そのものは悪いニュースでも、それによって利上げが遠のくなら、株式市場には良い材料になります。

今回は、「悪いニュースで株価が上がる」相場でした。

もちろん、この日の株価が雇用統計だけで上がったわけではありません。

原油価格の上昇が一服し、企業決算も市場を支えていました。

それでも、雇用統計を受けて金利上昇への警戒が後退したことは、株価が最高値を更新する一つのきっかけになったようです。

同じニュースでも、意味は変わる

ただし、雇用統計が悪ければ、いつでも株価が上がるわけではありません。

市場がインフレや利上げを強く警戒しているときには、雇用の悪化が金融引き締めを遠ざける材料になります。

一方で、市場が景気後退を心配しているときに雇用が悪化すれば、「企業業績もこれから悪くなるのではないか」と受け止められ、株価が下がることもあります。

同じ「雇用者数の減少」でも、市場がそのとき何を心配しているかによって、意味は変わります。

これは雇用統計に限りません。

物価が上がった。
金利が下がった。
円高になった。
企業が増益を発表した。

ニュースだけを見れば、良い材料なのか悪い材料なのか、なんとなく判断できそうに思えます。

しかし、株価はニュースそのものではなく、事前にどこまで予想されていたのか、そのニュースによって次に何が起こりそうなのかによって動きます。

ニュースに分かりやすい答えを求めてしまう

私も投資を始めた頃は、景気に良いニュースが出れば株価は上がり、悪いニュースが出れば下がるものだと思っていました。

ところが実際の相場では、好決算でも株価が下がり、経済指標が悪くても株価が上がることがあります。

そうした動きを見るたびに、「なぜ、悪いニュースなのに上がるのだろう」と不思議に感じていました。

私は以前、ニュースを見たときに、良いか悪いかをすぐに決めたくなる傾向がありました。

「雇用が悪化したから売り」

「利上げが遠のいたから買い」

そのように分かりやすい答えが見つかると、相場の動きを理解できたような気になります。

しかし、その答えは市場の関心が変われば、簡単に反対になります。

今回の雇用統計で株価が上がったからといって、次に雇用統計が悪化したときも上がるとは限りません。

「悪いニュースで株が上がる」という法則を見つけたのではなく、今回は市場が雇用悪化よりも利上げを警戒していた。

その違いは分けて考える必要があります。

株価の反応を見てから考える

経済指標が発表された瞬間に、その意味を正確に判断するのは簡単ではありません。

予想との差だけでなく、金利や為替、原油価格、企業業績など、いくつもの材料が同時に動いているからです。

そのため私は、ニュースを見てすぐに売買を決めるのではなく、まず株価や金利がどのように反応したのかを見るようにしています。

そして、

「市場は、このニュースのどこに反応したのだろう」

「発表前には、何が心配されていたのだろう」

と、一呼吸置いて考えるようにしています。

相場の反応を見たあとなら、すべてが分かったような気にもなりますが、それでも次の値動きを確実に予想できるわけではありません。

ニュースを正しく読むことと、株価の動きを当てることは、同じではないからです。

おわりに

今回の雇用統計では、雇用者数が予想外に減少したにもかかわらず、S&P500は最高値を更新しました。

雇用の悪化によって利上げへの警戒が後退し、悪いニュースが株式市場には良い材料として受け止められたからだと考えられます。

ただ、それは「雇用が悪化すれば株価が上がる」という意味ではありません。

ニュースの意味は、そのとき市場が何を期待し、何を恐れていたかによって変わります。

相場の反応を毎回当てることはできません。

だからこそ、一つの見出しだけで良いニュース、悪いニュースと決めつけ、急いで売買しないことが大切なのだと思います。

ニュースの意味が分からないときは、無理に答えを出さなくてもよい。

市場が何に反応しているのかを少し離れて眺め、自分の投資判断に本当に関係する変化なのかを考える。

「悪いニュースなのに株価が上がった」という、一見すると不思議な動きは、相場に決まった答えがないことを、改めて教えてくれたように感じました。

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