創作物語『お散歩日和』 シロクマ文芸部
熱帯夜のせいで、クマ美が楽しみにしていたチョコレートは、いつもと違う味になっていました。
「………なんか、へにゃっとしてる」
「玄関に置いておくからだよー」
お兄ちゃんのクマ太は、ぴこぴことゲームをしながら言いました。
目は画面から離しません。
テーテレッテーテテテッ…
敵が現れたときの音楽が流れます。
たしかに、玄関にカバンを置きっぱなしにしちゃったなぁ。
「うりゃ!うりゃ!」
クマ太は、ここのところ苦戦している敵キャラクターに、必死でパンチをお見舞いしています。
そうかと思えば、
「最近熱帯夜なんだから、冷蔵庫に入れろよなー」
と、突然クマ美に話しかけたりもします。
「熱帯夜ってなぁに?」
「外、暑いだろ?夜になっても暑ーい夜のこと、熱帯夜っていうんだよ」
「そうなんだ。毎日暑くてよく分からないや」
言われてみれば、とっくに太陽は沈んでいるのに不思議です。
そんなことよりも、クマ美にはもう美味しくないチョコレートをちびちびと齧るのが、なんだかずっと続くことかのように思えました。
「よし!」
画面には大きな文字で"WIN"と書かれ、クマ美が聴いたことのない曲が流れています。
黄色とオレンジの明るい色なので、勝ったのかなぁ。
クマ美は、なかなか減らないチョコレートがもっと溶けていきそうで、えいっと残りを全部口に投げ込みました。
「コンビニ行くぞ」
クマ太はひょいと立ち上がりました。
「え?」
いつのまにセーブしたのか、画面はとっくに真っ暗でした。
「アイス食べたい」
ふたりは一緒に、トコトコとコンビニまで歩きます。
「なんでこんな暑いんだよー」
「熱帯夜だからじゃない?」
「そうだけどさー」
足元からはモワッと、嫌な空気が漂っています。
ほんとうに暑すぎて、なんだかセミの声まで聞こえてきそうです。
リロンリローン
コンビニの中は、違う世界みたいにひんやりしていました。
ふぅとひと息つくクマ美をよそに、クマ太はスタスタとアイスコーナーを目指します。
「どれがいい?」
「わたしこれ!」
「ほんとにチョコ好きだなー」
1日で2回も、おまけに2回目はアイスなら、熱帯夜も悪くないなぁ。
「あぢー」
コンビニを出て、ふたりはまた灼熱の夜に放り込まれました。
けれども、クマ美の足取りはるんるんです。
そのままお家に入ると、クマ美は今度はちゃあんと、アイスを冷凍庫にしまいました。
おしまい
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今週も小牧様の企画に参加させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございます🍀
あむの
