【コンシェルジュ】出版社勤務でnoteの書き手という表現者に、寅さんを咀嚼してほしい
寅さんを観続けてもうすぐ20年。たくさんの人に『男はつらいよ』を観てほしいという思いから、依頼いただいた内容をもとに好みや性格をお聞きし、おすすめの3本をご紹介します。
依頼者からコンシェルジュへの希望
依頼者プロフィール
編集者ひつじさん 編集 20代男性 寅さん鑑賞経験あり(1部のシーンのみ)
『男はつらいよ』は少し鑑賞したことがあり、古き良き作品というイメージです。下町の人情が溢れていて、人の個性を認め一緒に居てくれる雰囲気がいいと思います。映画を観るときはストーリー重視で、考えさせられる作品を希望します。例えば、よく見かける正義と悪の二項対立ではなく、正義の反対はまた別の正義というテーマです。また、メディア関係の仕事をしているので、そんな人が出演する作品を観てみたいです。
note記事から溢れていた個性
ひつじさんは、編集者ひつじさんとしてご自身の仕事観などをたくさんnoteの記事にされています。内容は、状況や感情を繊細に描き、知的なキーワードや的確な引用が用いられていて、すごく魅力的な文章です。それに加え、好奇心旺盛で相手への共感が上手な方という印象を受けました。『男はつらいよ』は少し鑑賞されたことがあり、設定はご存じとのことでした。また、「考えさせられる作品」がお好きとのご意見は、noteにも表れているな、と感じました。他者の感情に敏感で知的なひつじさんに観て欲しい3作をご紹介します。
ひつじさんのnote
「運命」や「学問」への問題提起
※以下、作品の内容を記述します。
① 第8作 「男はつらいよ 寅次郎恋歌」
公開:1971年
マドンナ:池内淳子
ロケ地:岡山県高梁市
あらすじ: 「人間の運命」と「日々の営み」について、とらやで真剣に話し合う寅さん(渥美清)。学校を中退し、定職につかず所帯も持っていない、「運命に逆らって生きてきた」寅さんですが、今度こそ運命に従うのでしょうか。さくら(倍賞千恵子)の夫・博(前田吟)の家族たちが、「母の一生は幸せだったのか」と本音をぶつけ合うところは、『男はつらいよ』きっての名シーンです。柴又でカフェを開店したシングルマザーの貴子(池内淳子)と出会った寅さんは、一目惚れ。貴子も息子の恩人である寅さんを頼りにしている様子ですが、二人の関係は・・・。
この作品では、「人間の運命」について様々な属性の人間たちが悩み、内なる気持ちを表現する場面が出てきます。明らかに社会から逸脱している寅次郎だけでなく、一見どこにでもいそうな平凡な人物たちが明かす人生への葛藤は、私たちに問題提起をしてくれます。立場や性格や年齢が自分と違っても、その後悔や希望に不思議と共感できるはずです。感情を大切にされているひつじさんに、ぜひ観て頂きたい作品です。
② 第16作 「男はつらいよ 葛飾立志篇」
公開:1975年
マドンナ:樫山文枝
ロケ地:山形県寒河江
あらすじ:「何のために学問をするのか」の問いに対する寅さんの答えとは。考古学を研究するマドンナ・礼子(樫山文枝)はとらやに下宿します。寅さんは礼子に勉強を教えてもらうことになりますが、その動機はいったい・・・。礼子の上司で変わり者の田所教授(小林桂樹)も登場し、まさかの展開に。ほとんど勉強をしていない寅さんが、大学教授の田所に「師」と仰がれるあべこべなシーンも。
この作品では、「学問をすること」に、様々な人物が自分なりの態度を見せてくれます。それが生きがいや仕事の人もいれば、苦痛の人もいるでしょう。私たちは、時として、「もっと勉強していれば」と後悔しますが、学問はあればあるほど良いものなのでしょうか。寅次郎に学問は必要なのでしょうか。これまで学問にも力を入れてこられたひつじさんに、この作品を通して、学問の意味を問いたいです。
③ 第32作 「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」
公開:1983年
マドンナ:竹下景子
ロケ地:岡山県高梁市
あらすじ: 博(前田吟)の実家の墓参りで岡山を訪れた寅次郎は、寺の和尚(松村達雄)とその娘・朋子(竹下景子)に出会います。ひょんなことから、和尚の代わりに法事をすることになった寅次郎は、でたらめな法話で上手く乗り切ります。朋子に惚れている寅次郎は、結婚すれば寺の跡継ぎにならざるを得ないため、坊主になることを家族に相談。朋子の弟・一道(中井貴一)は寺の跡を継ぐ気はなく、ガールフレンド(杉田かおる)を故郷に残し、上京。寺の跡継ぎ問題と、寅次郎の恋の行方は・・・。
この作品では、一道がカメラマンというメディアの仕事をしています。媒体は異なりますが、同じメディアの仕事をされているひつじさんに共鳴するポイントはあるのでしょうか。1つ目に紹介した『男はつらいよ 寅次郎恋歌』と博の家族について話が繋がっているので、その後の展開としても楽しんでもらえます。ファン投票でトップ3に入るほどの名作ですので、笑いあり、考えさせられるところあり、その中身の深さを堪能してください。
コンシェルジュを終えて
ひつじさんは、コンシェルジュへのご希望でも、noteでも「深く考えること」がお好きという印象を受けました。『男はつらいよ』は単純に、笑いたい・泣きたい、という要望も満たしてくれますが、意外に「考えさせてくれる」映画でもあります。そのテーマは、日常生活で誰もが経験することがほとんどで、「悩んでいるけど、答えが出ない」ことが多いです。そんな問いをひつじさんにぜひ熟考していただきたいと思いました。私も、考えることが好きなので、『男はつらいよ』の何気ない場面から、人生について考えることが多いです。私とは違う視点を持ったひつじさんと意見交換をしてみたいです。
ひつじさん、ありがとうございました。
