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tomekantyou1
掌編|鱗粉スパイキング|シロクマ文芸部
「目をつぶると同時に思いつく限り、食用オイルの種類をあげてください」
私の枕をまるで巣のように占領している妖精は、ゆったりと羽を閉じ、また開く。そうすることで私に信号を送っているらしく、繰り返し羽を揺らす。この子には口がない。
粉砂糖のように柔らかな鱗粉があたりに舞う。それは徐々に視界を白くする。
今日はオイル。
昨日は魚へんの漢字だった。
「オリーブオイルとエキストラバージンオリーブオイルは別物としてカウントしていいのでしょうか」
妖精には一日に一つだけ、質問をしていいことになっている。権利がある以上、それを行使するというのが私のポリシーだけれど、返ってくるものには期待をしない。なぜなら、いつだって妖精からの答えは同じだから。
「しらーん」
これだ。適当にも程がある。
磨りガラスのようなデザインの羽の輪郭が、まるで笑っているかのように小刻みに震えている。羽が開閉するごとに、人を小馬鹿にするように「しらーん」のメッセージが途切れ途切れ、脳に響いてくる。続いてふわふわと漂う、ベビーパウダーのように特徴的な鱗粉の香り。
空気中に広がり目に見えなくなった鱗粉を、呼吸の度に体内に取り込む。嫌だなあと思う。
――結局はこの鱗粉なのだ。
オイルの種類をあげるとか、魚へんの漢字を列挙するとか、そうした私の行動によってもたらされるのではなく、知らず知らずのうちに粘膜に張り付いて少しずつ効果をもたらす、この鱗粉。これによって私は眠りに落ちる。このことがとてつもなくさみしい。
けれどもう、そうでもしないと、妖精の力を、鱗粉の力を信じでもしないと、私は眠りにつくことができない。
目をつむり、スーパーの陳列棚を思い浮かべる。そこに並んだ食用オイル、その瓶に書かれた名称を端から順に、静かに読みあげていく。
よろしくお願いします✨
