老化は臓器同士の情報伝達で決まる!臓器間コミュニケーションマネジメント(IOCoM)とは?
(アイキャッチは左:細胞外小胞体、右:視床下部 両方ともgettyimagesののフリー画像より引用)
これまでの記事では、抗老化に働く重要な物質として 熟成ニンニク由来のS1PC(エスワンピーシー)やNMN(エヌエムエヌ)を紹介してきました。
実は、最近の(抗)老化研究で別の観点の重要な概念が登場しています。
この分野の世界的権威の今井眞一郎教授が提唱する臓器間コミュニケーションマネジメントという新しい概念です。
臓器間コミュニケーションマネジメントは英語で、Inter-Organ Communication Managementです。
略称はIOCoMで、アイオコムと呼びます。
今井教授は、「老化は一つの臓器だけで進むのではなく、臓器同士の情報伝達ネットワーク全体が乱れることで進行する」と考えています。
つまり、老化対策とは、一つの臓器だけを若返らせることではなく、臓器同士が正常にコミュニケーションできる状態を維持することなのです。
そのためには、体内で重要な役割を担う複数のネットワークが互いに連携しながら働く必要があります。
今回の記事ではIOCoMの中核をなす3つのネットワークについて紹介しましょう。
なお、3つのネットワーク名称は全てが今井教授が論文で名付けているわけではありません。
理解しやすいようにこの記事で私独自に『〇〇ネットワーク』と表現しましたので、お断りします。
(過去に丸コピーされた記事を自分が書いたと投稿されたことがあり、全記事に独自の表現を入れるようにしています)
1.脂肪・視床下部・筋肉ネットワーク
このネットワークは、生命活動を維持する上で最も重要であると考えられています。
この3つの臓器はそれぞれ異なる役割として機能しています。
(後述しますが、現在の医学・生物学では脂肪も筋肉も臓器の一つとして考えられています)
今井教授は脂肪・視床下部・筋肉をそれぞれ老化を制御する「調整係」・「最高司令塔」・「実行部隊」と呼んでいます。
それでは(順番は変わりますが)重要な最高司令塔から解説しましょう。
① 視床下部 ― 最高司令塔(コントロールセンター)
脳の深部にある視床下部は、下記の機能を統括しています。
(視床下部は視床の一部でなく、視床の下にあるが、異なる独立した部位
アイキャッチ画像の緑色の球体が視床でその下の色の濃い部分)
エネルギー代謝
自律神経
ホルモン
体温
睡眠
食欲
さらに近年では、全身の老化速度そのものを制御する最高中枢であることが明らかになってきました。
視床下部のNAD濃度が低下すると、自律神経や代謝調節が乱れ、全身の老化が加速すると考えられています。
※ NAD=ナイアシンアミド・アデニン・ジヌクレオチド
② 脂肪 ― 調節係(モジュレーター)
かつては脂肪は単なるエネルギーの貯蔵庫と考えられていました。
しかし、現在では、数多くの生理活性物質を分泌する巨大な内分泌臓器であることが知られています。
今井教授らは、脂肪がeNAMPT(イーナムピーティー)という抗老化酵素を分泌していることを発見しました。
NAMPTはNAM(ナイアシンアミド)をP(リン酸化)してNMNにT(転移する酵素)です。
細胞外に出たものに小文字のeを付けます。
このeNAMPTは、NAD合成に不可欠な酵素であり、直接届けられることで視床下部のNAD産生を支えます。
つまり、脂肪は視床下部の働きを支える重要な調節係(モジュレーター)なのです。
③ 筋肉(骨格筋) ― 実行部隊(エフェクター)
視床下部から交感神経を介した指令を受けるのが筋肉、特に骨格筋です。
筋肉は単に身体を動かす器官ではなく、マイオカインや各種代謝調節因子を分泌する巨大な内分泌臓器でもあります。
運動によって分泌されるマイオカインは、視床下部や脂肪などへ作用し、代謝改善や抗炎症作用をもたらします。
つまり、筋肉は視床下部からの命令を全身へ広げる実行部隊(エフェクター)として機能しています。
※ 3つの臓器が作る抗老化ループ
このネットワークは正のフィードバックループを形成しています。
脂肪
↓(eNAMPT)
視床下部
↓(交感神経)
筋肉
↓(マイオカイン)
全身の臓器
↓
脂肪
この循環が正常に働くことで、全身の代謝恒常性(ホメオスタシス)が維持され、健康寿命を延ばすことにつながると考えられています。
2.小腸によるNMN吸収ネットワーク
どれほど優れた抗老化物質を摂取しても、小腸で十分に吸収されなければ効果を発揮できません。
そこで重要になるのが、小腸によるNMNを吸収するネットワークです。
今井教授らは、小腸にNMN専用トランスポーターが存在することを報告しました。
NMN専用トランスポーターはSlc12a8(エスエルシー12エー8)という名称です。
ちなみにSlというのはSolute(溶けているもの=溶質)の略で、cはcarier(運ぶもの=輸送体)の略です。
人には400以上のSlc(溶質輸送体)という細胞膜にあるタンパク質があり、その一つ。
この輸送体は食事やサプリメントから摂取したNMNを極めて効率よく吸収し、体内へ取り込む役割を担っています。
小腸はまさに、抗老化物質を体内へ迎え入れる最前線なのです。
小腸が健康であれば、NMNが血液を通して送られ、視床下部のNADが増加するという流れが円滑に進みます。
反対に、小腸機能が低下すれば、十分なNMNを摂取しても体内で活用されにくくなる可能性があります。
3.血液とエクソソームによる情報伝達ネットワーク
臓器間コミュニケーションには、情報を正確に届ける配送システムも欠かせません。
その役割を担うのが、血液と血管内皮細胞です。
脂肪から分泌されたeNAMPTは、そのまま血液中へ放出されると分解されやすくなります。
そこで体内では、エクソソームという直径約30~150ナノメートルほどの微小な膜小胞に包まれて運ばれます。
※ エクソソームは細胞外小胞(体)の1種
(アイキャッチ画像では大きすぎますが、実際の大きさは細胞の1000分の1から100分の1)
エクソソームは、生体内の「天然の宅配カプセル」のような役割を果たし、内部にRNAやタンパク質、脂質などを保護したまま標的細胞へ届けます。
血管内皮細胞は、その輸送経路を形成する重要なインフラです。
エクソソームが目的の組織へ到達するための「関所」の役割を担っています。
この高度な物流システムによって、脂肪からの抗老化シグナルは視床下部へ効率よく届けられます。
そして、全身の臓器が時間差なく協調して働くことができます。
4.IOCoMを支える「NADワールド」という考え方
ここまで紹介してきた3つのネットワークは、それぞれが独立して働いているわけではありません。
今井教授は、これらを一つの統合システムとして捉え、「NADワールド」という概念を提唱しています。
NADワールドとは、細胞内でエネルギー代謝や長寿遺伝子(サーチュイン)の働きを支える NADを共通基盤として、下記のような臓器が互いに情報を交換しながら、代謝や老化速度を調節する全身性統御ネットワークです。
視床下部
脂肪
筋肉
小腸
血液・血管
肝臓をはじめとする各臓器
つまり、老化とは個々の細胞だけの問題ではなく、臓器同士の情報伝達ネットワーク全体の機能低下として理解すべきだという、新しい老化観を示しています。
今回紹介したIOCoMは、このNADワールドを実際に機能させるための「臓器間コミュニケーションの管理・維持」という実践的な考え方になります。
まとめ
IOCoMは、「一つの臓器を若返らせる」のではなく、臓器同士が正しく情報をやり取りできる環境を維持し、全身を一つのシステムとして健康に保つことを目指す新しい概念です。
その中核となるのは、次の3つの連携システムです。
脂肪・視床下部・筋肉ネットワーク
小腸によるNMN吸収ネットワーク
血液とエクソソームによる情報伝達ネットワーク
これらが円滑に機能することで、NADを中心とした全身の代謝ネットワークが維持され、健康寿命の延伸につながると考えられています。
今後の老化研究は、「細胞を若返らせる」時代から、「臓器間コミュニケーションを最適化する」時代へと進みつつあります。
そして、その全体像を理解する鍵となるのが、今井教授が提唱するNADワールドという考え方です。
次回の記事では、このNADワールドの仕組みについて、eNAMPTやサーチュイン、NAD代謝との関係も含めて、さらに詳しく解説します。
このNADを増加させる2つの物質がS1PCとNMNです。
S1PCはこちらの湧永製薬のキヨーレオピンに含まれています。
NMNについてですが、私はこの商品を10回以上購入していますので、参考にリンクしておきます。
本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は7月9日(木)午前10時です。
前述の通りNADワールドの解説をしたいと考えています。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
