山頂会談
391.山頂会談
汗をたくさんかいた。
キャップもアームカバーが少し不快。
ただ目の前の景色だけは、爽快。
景色に浸ってると、草陰から荒い息づかいが聞こえる。
私は一つ大きく吸い込んだ。
熊が出るのか。蛇が出るのか。
ミドル男性が出てきた。
軽快に動けそうな格好。
頭にはバンダナ。靴は本格的なランニングシューズ。小さなリュックを背負い。
汗を滴り落とし、私の後ろの小さな岩に腰を下ろしていた。
「山頂って気持ちいいですね」
「どちらから走ってこられたんですか」
その人は、楽しく山を走ることを語ってくれた。
ここからの景色は晴れてるともっと綺麗だとか。
山にもマラソンのようなレースがあることを。
その人は、息を整えながら楽しそうに話してくれた。
走ることが好き。そんな熱を届けてくれているよう。
私とあの人、虫たちだけの空間。
ハチはあの人と仲が良さそうにくっついたり離れたり。
ヒヤヒヤする私を見ても、その人の表情は変わらない。
あの人は駆けて、山を下っていった。
その背中はすぐに見えなくなる。
私も少しかけてみた。
好きな人の熱は、
言葉より先に、
人を動かすのかもしれない。
