論文レビュー♯07|超音波エコーにてCam形態は検出可能か?
1.結論
大学サッカー選手55名に超音波エコーを用いてCam形態の有無を調査した結果、股関節15°伸展位を追加することでCam形態の検出率が向上した。 また、Cam形態そのものよりも、複数の股関節周囲の機能障害や股関節内旋の左右差が鼠径部痛と関連している可能性が示唆された。
2.論文概要
論文名: 男子大学生サッカー選手におけるCam形態異常の超音波スクリーニング:有病率と鼠径部症状および機能障害との関連性
研究デザイン: 横断研究
PMID: 42293041
DOI: 10.1177/23259671261445433
3.論文要約
対象
単一の大学代表チームに所属する男子大学生サッカー選手55名(110股)。全員が競技活動を継続しており、サッカー参加を制限するほどの股関節・鼠径部痛はありませんでした。
方法
大腿骨頭頚部を超音波エコーで評価し、股関節中間位と15°伸展位で撮像しました。超音波画像上の大腿骨形態を正常、扁平(flattened)、突出(prominent)に分類し、扁平または突出が確認された股関節をCam陽性群としています。


B:扁平
C:突出

15°伸展位ならCAM形態がわかりやすい。
質問紙では、①現在の鼠径部痛、②現在の痛みを伴わない挟み込み感、③過去の鼠径部痛、④過去の痛みを伴わない挟み込み感について回答しています。
身体評価では、股関節屈曲90°および120°でのFADIRテストを行い、鼠径部痛と挟み込み感を評価しました。また、機能評価として①股関節外転筋力、②ASLR、③ASLR時の骨盤・体幹の代償動作、④骨盤可動性(PM)テストの4項目を実施し、加えて腹臥位で股関節内旋ROMも測定しています。
結果
超音波でのCam陽性所見は110股中97股(88%)、突出は53股(48%)で確認されました。
Cam陽性所見の検出率は、股関節中間位のみでは79%でしたが、15°伸展位を追加することで88%まで増加しました。突出の検出率も21%から48%に増加しました。
鼠径部痛についてはCam形態の有無による有意差はありませんでしたが、挟み込み感はCam形態および突出のある股関節で有意に多く認められました。
Cam陽性股では、3つ以上の機能障害があることと股関節内旋ROMの左右差が、鼠径部痛と有意に関連していました。 また、突出陽性股でも3つ以上の機能障害が鼠径部痛と挟み込み感に関連していました。
4.この結果をどう読む?
結果の解釈
Cam形態はXPやMRIなどで評価されることが多い所見ですが、今回の研究では超音波エコーでも評価でき、さらに股関節15°伸展位を追加することで検出率が向上することが示されました。
一方で、Cam形態単独では鼠径部痛との関連はなく、骨盤可動性や股関節外転筋力など、複数の機能障害を有する場合に鼠径部痛との関連が強くなるという結果であったことは留意しておきたいです。
所感
Cam形態自体は若年スポーツ選手にも多くみられ、その多くが無症状であることも知られています。今回のようにエコーを用いてCam形態を検出できるという点は非常に興味深いですが、PTがCamの有無を確認する機会は限られていると思います。
ただし、今回の研究で鼠径部痛と複数の機能障害との関連が示唆されたことは重要で、こちらの所見はPTとして見逃してはいけないと思いました。
研究の限界・注意点
今回の研究は横断研究であるため、機能障害が鼠径部痛を引き起こしたのか、鼠径部痛によって機能障害が生じたのかという因果関係までは分かりません。
また、股関節内旋ROMの左右差は症状と有意に関連していましたが、平均差は5°未満であり、本当に臨床的に意味のある差なのかは不明とされています。
さらに、今回の超音波評価では扁平な形態もCam陽性に分類されていますが、α角を測定していないため、すべてが真のCam形態であるとは限らない点にも注意が必要です。
5.臨床・現場ではどう活用する?
私の環境では、臨床現場で超音波エコーを股関節に当てる機会が少なく、今回のような意図で使用したことはありませんでした。
今後、難治性の鼠径部痛などでは骨形態の問題も考慮しながら評価し、必要に応じてDrへ繋ぐ情報の一つとして、超音波で大腿骨頭頚部を確認することもあるかもしれません。ただし、今回の超音波評価だけでCam形態を確定できるわけではない点には注意が必要です。
機能障害として実施された4つのテストと鼠径部痛が、具体的にどのようなメカニズムで関与しているかまでは今回の研究では分かりませんが、PMテストなど、股関節だけでなく骨盤・体幹を含めた機能評価を行う価値を再認識できました。
