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料理人だからこそできる地方創生【第4話】関係は、皿ではなく継続でできている

「一度会いに行った。」
それで満足していた、あの頃の自分がいます。


産地に足を運んだ。
生産者の顔を見た。
仕入れた。
皿に出した。

それで何かが変わった気がしていた。
でも、1ヶ月後には何も変わっていなかった。

なぜか。
一回で終わっていたからです。


「継続」を、料理人の言葉にする

継続というと、根性論に聞こえます。
でも僕が言いたいのは、もっと地味なこと。

生産者と料理人の関係は、
「皿に乗せた回数」ではなく「連絡した回数」で育つ。

サプライチェーンの“間”に立つ話を第3話でしました。
でも“間”に立ち続けるには、関係が続いていないといけない。

料理人の仕事に引き直すと、こう見えます。

  • 一回仕入れる → ただの取引

  • 三回仕入れる → 少し顔が見えてくる

  • 五回話す → 相手のこだわりが分かってくる

  • 十回続く → 情報をもらえるようになる

関係は、回数でできている。
この現実は、誤魔化せません。


なぜ「一回」で終わってしまうのか

現場には、続かない理由が3つあります。

理由① 忙しさが、記憶を上書きする

仕入れた日は感動する。
でも翌日からは仕込みに追われる。
一週間後には「今日の在庫」が先に来る。

感情は揮発する。
記録しないと消える。

理由② 「また来ます」は約束ではない

産地を訪ねて「また来ます」と言った。
相手も喜んでくれた。
でも次に行ったのは、2年後だった。

それは、関係ではなく出来事です。

理由③ 「皿に出す」で完結してしまう

食材を使った。お客様に出した。
それで「伝えた」と思ってしまう。

でも生産者には届いていない。
皿の先で何が起きたか、知らないまま畑に戻っている。


継続が生む、3つの変化

続けると、何が変わるのか。
現場で見えてきたことを話します。

変化① 「いいもの」が先に来るようになる

継続した関係があると、生産者から連絡が来ます。

「今年は出来がいいから、早めに取っておく?」
「規格外だけど、ryoさんなら使えると思って」

これは、一回の取引では起きない。
信頼が先にあるから、情報が来る。
情報が来るから、仕入れの質が上がる。

変化② 「理由のある仕入れ」ができる

関係が続くと、背景が見えてくる。

「この夏は雨が少なかった。だから糖度が上がっている」
「今年から農薬を減らす試みをしている」

この話が、皿の“ひと言”になります。
お客様に届く言葉の密度が変わる。

変化③ 料理人自身が変わる

これが一番大事かもしれない。

産地を知る。
作り手を知る。
季節を知る。

すると「今日なにを作るか」の動機が変わってくる。
義務ではなく、意志で仕入れるようになる。

稲盛和夫さんの言葉があります。

「動機善なりや、私心なかりしか」

仕入れる動機が、
コスト中心から、人と土地への敬意に変わるとき。
料理人の仕事の“質”が変わる。
僕はそう思っています。


現場を弱くするNG(関係が続かない)

忙しいほど、これが起きます。

  • 仕入れた後、何も連絡しない

  • 産地訪問を「イベント」で終わらせる

  • お客様の反応を、生産者に伝えない

  • 「また機会があれば」で止める

このループが続くと、関係は薄まります。
そして最後は、「安い方から買う」になる。

それは、地方にも、店にも、痛い。


現場を強くするOK(関係を育てる)

やることは3ステップ。難しくないです。

STEP 1:使ったら、連絡する(月1回でいい)

「先週の〇〇、お客様に喜ばれました」
それだけでいい。一文でいい。

生産者にとって、これは財産です。
自分の仕事が、誰かの笑顔になったと分かる瞬間。
それが、また丁寧に育てる動機になる。

STEP 2:季節の変わり目に聞く

春・夏・秋・冬。
変わり目に一度、連絡する。

「今年はどんな感じですか?」
「おすすめはありますか?」

聞くだけでいい。
答えが情報になる。

STEP 3:お客様の反応を「言葉」で渡す

「美味しいと言ってくれた」だけじゃなくていい。

「産地を話したら、旅行に行きたいと言っていました」
「ご夫婦で、故郷の味だと泣いていました」

具体的な言葉を渡す。
それが、関係の“厚み”になっていく。


今日からできる1アクション

今、仕入れている生産者に——
一通、連絡してみてください。

内容はなんでもいい。

「先日のあの食材、こんな反応がありました」
「今度、産地に伺えますか?」

文章が難しければ、電話でも一言でも。
継続は、今日から始まります。


最後に

料理人の仕事は、皿で完結しない。
皿はゴールじゃない。
関係の中継点です。

生産者と続く関係が、仕入れの質を上げる。
仕入れの質が、皿の密度を上げる。
皿の密度が、食べる人の記憶に残る。
記憶が、地域のファンをつくる。

地方創生は、一回では動かない。
続けることで、初めて形になる。

それは、料理人が一番よく知っているはずです。
毎日、積み重ねてきた人たちだから。


コメントで教えてください

生産者と「続いている」と感じる瞬間はありますか?
または、続けるために工夫していることがあれば、ぜひ教えてください。


次回予告(第5話)

関係を続けることが分かった。
でも、続けるだけでは、地域は変わらない。

次回:料理人だからこそできる地方創生⑤「価値は、言葉にしないと存在しない」

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