文系教員が挑むAI基礎の授業計画#11
これまでの授業では、AIに指示を出す練習そのものよりも、「意味づけ」や「判断」を人間が引き受けているという事実に、繰り返し立ち返っています。ここからの4回の授業では、その人間の側の認知を前提に、AIと協働しながら、形のあるアウトプットを作っていきます。
第11回授業のテーマは「画像生成AIを使って新商品提案のためのビジュアルを設計する」。Gemini を利用して、夏の商品のおいしさを視覚的に表現することが目標です。画像生成AIは何を見て、何をしているのかについてのミニ講義も用意しました。人間は「意味」をまとめて見ていますが、画像生成AIは「意味」を見ているわけではありません。それでも、勝手に、それっぽいものを作ることができる、その仕組みを説明する予定です。
事前学修では、夏に食べたい新商品を考え、想定するシーンやターゲット、伝えたい印象を箇条書きの文のみで整理しておいてもらいます。学生は、夏とはどんな状況なのかを想像し、食べる人を思い浮かべ、おいしいさをさまざまな言葉に分けることになります。何を優先し、何を捨てるかも決めなくてはなりません。画像を作る前から自分はこんなにもたくさんのことを考えているという事実に驚く学生もいるかもしれません。この気づきをミニ講義のあとの活動につなげます。
その活動で生成するのは、桃を使って作ったフルーツ・フールの画像です。あいまいな指示で生成した画像と、生活シーンやターゲットを明示して再生成したものとでは、印象が大きく変わるはずです。学生たちには、どのような言葉でAIに伝えれば、自分が思い描いているビジュアルが画像として立ち上がってくるのかを話し合ってもらう予定です。その過程で、正解はAIの側にあるのではなく、人間の側にあることに気づいてもらえることを期待しています。
授業の最後は、自分自身が提案したい新商品の画像を生成する実習です。何を伝えたいのかを自分で決めることができなければ、この先の工程はうまく進みません。自分で試作品を作って写真を撮ってしまった方が、ずっと早くて簡単だと感じるかもしれません。この実習を通して、画像生成は魔法ではないことを確認し、人間の側が引き受けなくてはならない仕事の重さに思いを馳せてほしいと思います。
事後学修では、生成した画像を見返し、どこまでを自分で決め、どこからをAIに委ねていたのかを文章にまとめてもらいます。このとき、画像に含まれる文字もAIが自動的に補っている要素の一つであることを意識し、その文字がどのような印象を与えているのかについても自由に振り返ってもらう予定です。第11回授業は、認知のどの部分を人が担い、どの部分をAIに委ねているのかを考える回と位置付けました。
人間の視覚認知や意味づけのプロセスに関心のある学生には、齋藤亜矢氏の『ヒトはなぜ絵を描くのか ー 芸術認知科学への招待』(岩波書店,2014年)を勧めようと思います。
