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文系教員が振り返るAI基礎の教室#0:開講前夜

AI基礎の授業が終わって1ヶ月近く経ちます。新科目を担当したのは久しぶりでしたし、何より、とても楽しい授業だったので、今年は勤務先の紀要に実践報告を投稿しようと思い立ち、学生が提出してくれた課題を見返したり、自分が作った資料を読み直したりしているところです。

自分が作った資料の中に、もうすっかり忘れていたのですが、4月の初回授業の冒頭で、概要説明として使ったスライドがありました。何を隠そう、3月のFD/SDの発表の際に使った資料です。

FD (Faculty Development) / SD (Staff Development) は、大学教職員の資質向上のための取り組みです。3月のFD/SD研修で、私もAI基礎について話す機会をいただきました。

この時期、「文系の先生にAI基礎を担当させるなんて、うちの大学もファンキーですね」というような声をかけられることがよくありました。こんなことを言うのは、お隣の情報系の学科の同僚です。声をかけてくれる同僚に悪気はまったくなく、むしろ、AIの専門家がいない学科で畑違いの科目を任されたように見えた私に対する優しさから出た言葉です。

…と、わかってはいても、心の中では「それどーゆー意味?!」とつっこみたくはなりますし、授業が始まるといろいろなこと(もちろん善意の助言のことば)をかけられるに違いないとも思っていました。

3月のFD/SDで登壇者に指名されたのは、そんな雰囲気も察知した学科長の計らいだったのかもしれません。すでにAIを活用した授業をしている同僚と10分ずつの持ち時間で、学科のAI教育について話すことになりました。

当日まで、その同僚と口裏合わせをする機会もなかったのですが、会場で着席してからお互いにスライドや原稿を読み合い、学科内でいつのまにか共有されていた何かのおかげか、お互いの発表内容に、「そうだよね!」と、思わず嬉しくなったことを覚えています。

もちろん、すでにAIを活用して授業を行っている彼の発表は、スライドも美しく、とても魅力的です。一方、壇上で私が話したのは、いたってシンプルな宣言でした。意味がわかっているのも、最終的に判断するのも、人間の方である。この授業を通して伝えたいことはこれだけでした。

そして、まだ1回も授業をしていないのに、「記号接地問題」という言葉も口にしていました。スライドには記載してないのですが、原稿には残っているので、言ってしまったのだと思います。身体感覚を持たないAIの出力を見ながら、人間はふだん無意識のうちに五感を総動員していることを、学生に気づいてもらいたい。そのために、毎回、学生自身の文章とAIへの指示文、AIの出力を並べて記録してもらう。なんとも理念先行の発表です。

10分の持ち時間の中で、科目概要や到達目標、15回の授業計画を語ったので、それほど深いことは話せなかったのですが、終了後には、何人かの同僚から温かく声をかけてもらえました。お隣の学部の学部長に至っては「まだやっていない科目だからって控え目にならずに、どんどん学外にも宣伝してください!」とおだててくれました。ほっとした+嬉しくなったのも正直なところです。(調子にのった私は、早速、高校生・高校教諭向けの出前授業の概要に「AI活用」という文句を入れました。そういえば、まだご指名がかかったことはないのですけれど。)

AI基礎15回の授業を終えた今、あのFD/SD研修の日に壇上で語った理念は、教室の中でどんな顔をしていたのだろうかと思いを巡らせています。「意味がわかっているのは人間の方である」という一文は、正しかったと思います。でも、それがどんな場面で、どんな形で立ち現れたのかは、実は、FD/SDのあの10分間にはまだ見えていませんでした。各回の授業が、記号接地問題とどう結びついていたのかを今やっと振り返っているところです。

今後は、そんな楽しい授業を実現してくれた学生たちから、私自身が学んだことをこのnoteに書いてみたいと思っています。

このシリーズ(まだ#0を公開しようというタイミングですけれど)のトップ画像は、noteに書いてきた記事を、毎回の授業が終了したあとに、NotebookLM(当時)にソースとして与えて、生成したスライドの1枚目です。実際の授業で使ったものではありません。私が意図したことと必ずしも一致していません。

そして、今回のトップ画像は、FD/SDが終わってから、原稿(件の「記号接地問題」が書かれていた原稿)をNotebookLMに与えて、生成したスライドです。「AIは筆。描くのは、あなただ。」…最初は笑ってしまいましたが、私が壇上で語った理念をAIが代弁してくれています。初回授業では、私が自分で作ったスライドとNotebookLMで生成したこのスライドがどのくらい違うのかを学生に鑑賞してもらいました。「先生のスライドの方がわかりやすい♡」と学生に言ってもらって、やはり、ちょっとほっとして、嬉しくなったことを覚えています。

なお、授業の中で、記号接地問題そのものを説明したことはありませんでした。第14回授業の最後に、「記号接地問題」という言い方があるということを紹介し、興味があればまずはハーナッドの論文を読んでみるようにと勧めたことがあるだけです。

Harnad, Stevan. 1990. "The Symbol Grounding Problem". Physica D 42: 335-346.

私にとっては、1990年代後半から手元にあったものの、読むこともなく2000年代を迎えてしまった(たくさんの)論文の中の1つです。2000年代というと、学会に行ってなんだか盛り上がっている部屋に座っていると、よく「機械にはシマウマは描けない」という熱い語りが聞こえてきた時代でした。私がこの論文を初めて読んだのはそこから10年経った2010年。この夏は心機一転(?)、30年選手の紙のコピーに引退してもらって、新たに取得したPDFと対話しています。

全15回の授業計画と授業資料については、以下のマガジンで紹介しています。よろしければご覧ください。


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