歌うことの孤独、愛されることの眩しさ、新しい恋、そして自分の歌が誰かを救っていく物語
💃 第十七章 「喝采のあとで」
大きな拍手 浴びた夜でも
部屋に戻れば ただひとり
鏡の奥の 見知らぬ顔が
ほんとうの名を 問いかける
夢が叶うと いうことはきっと
何かを少し 失うこと
遠く憧れた 光のなかで
影は前より 濃くなっていた
She touched the stars, she heard the roar
But fame still left an empty door
The stage was bright, the room was bare
And silence waited for her there
それでも胸に 残っていた
あのラジオの日の ぬくもりが
ひとりの夜を 越えるたびに
歌はいっそう 深くなる
💃第十八章 「春を待つ指」
ある日の楽屋 白い封筒
見知らぬ文字が 揺れていた
「あなたの歌で 救われました」
たった一行 それだけなのに
冷たい朝も 眠れぬ夜も
生きてていいと 思えたと
誰かの痛みが 行間から
静かな熱を 連れてくる
A stranger wrote with trembling hands
Your voice became my promised land
Not gold, not fame, not bright applause
But one soft song that healed my scars
少女はそっと 便箋に
指を重ねて 目を閉じる
歌うこととは 愛されること
だけじゃないのと 知りはじめる
誰かの闇に 灯るため
自分もまた 燃えている
そんな小さな 真実が
春を待つよに 胸で咲いた
💃第十九章 「遅れてきた恋」
雨のロビーで 傘をたたむ
背の高い影が 微笑んだ
熱い言葉を 持たぬ人
けれど沈黙が やさしかった
彼は拍手を 急がずに
歌の余韻を 聴くような人
傷を飾りに しないまま
そのままでいいと 言うような目
He did not chase, he did not claim
He simply stood outside the flame
And in that quiet, deep and slow
She felt a different kind of glow
若いあの日の 恋のように
燃えるばかりじゃ なかったけれど
このぬくもりは 消えにくい
冬の灯のような 愛だった
少女はようやく 気づいていく
奪われる恋も あるけれど
寄り添いながら 息づく愛も
また人生の 歌になると
💃第二十章 「私の名で歌う」
新しい夜の 幕が上がる
客席の闇は 海のよう
その深さごと 抱きしめるよに
少女は静かに 息を吸う
もう誰かの影を 追うだけじゃない
憧れは今も 胸にある
けれど今夜は この声だけで
わたしの空を ひらいていく
She sings her name into the light
No borrowed wings, no stolen night
From love and loss her truth was spun
At last the girl and song are one
ラジオの前で 泣いていた
あの日の少女は もういない
けれどあの涙 あの祈り
すべて今夜の 響きになる
拍手のなかで 目を上げれば
遠い星より 近い場所
誰かの胸に 灯る明かりが
たしかにここへ 返ってくる
小さなスズメに 憧れた
ひとりの少女の 長い夜
その終わりではなく はじまりを
彼女は自分の名で 歌っている
