マラリア撲滅そして途上国の社会課題解決に挑むスタートアップ -SORA Technology- に参画した理由
2026年3月にパリより本帰国しまして、4年近く在籍したVCジェネシア・ベンチャーズを退社し、4月よりSORA Technologyというスタートアップに、ファイナンス&インパクトリードとして参画することになりました。
SORA Technology参画経緯
SORAは、ドローンx衛星xAIを活用して途上国でマラリアを中心としたヘルスケアや農業、気候変動等の領域における社会課題に取り組むスタートアップです。
マラリア対策では、空撮した水たまりの画像を分析する人工知能(AI)を開発しており、水たまりの大きさや水草など周囲の環境から、蚊の幼虫がいる可能性が高い場所を特定し、テックドリブンなマラリア対策の効果的なソリューションを提供しています。
これまでプロボノとして関わっていましたが、現場での検証と実装を着実に積み上げながら、丁寧に各国政府や国際機関と協働するその姿勢に強く惹かれ今回参画を決心しました。
新卒来、間接金融という立場でインパクトファイナンスの実践に微力ながら関わらせていただきましたが、「underservedな状況にある人の命と向き合いたい」という想いは消えず今回事業サイドにいく決心をしました。
SORA Technologyとは
SORAのミッションは「宙から人の生き方に変革を」というもので、衛星やドローンなど宙からのデータ取得・解析のみを強みとするのではなく、それらを用いて如何に「地上にいる人の生活を豊かにするか」というストーリーづくりや現場力を大事にしています。
メンバーは国連やODAプロジェクトなどの経験者やOB、そして15カ国以上展開するアフリカでは50名以上のローカルスタッフが関わっており、日々グローバルに連携しながら事業を展開しています。スタートアップならではの機動力を活かして、ローカルコミュニティ、プライベートセクター、各国省庁、そして国際機関など、様々なレイヤーのステークホルダーとのエンゲージメントを進めながらビジネスを行っています。
また、最近では、マラリアなどヘルスケア以外にも、農業、気候変動、ミネラルバリューチェーン領域などの民間ニーズへのシフトも進んでいます。日本企業初となるWHOの採択プロジェクトやGoogleとのフィリピンでのパイロットプロジェクトの開始など、ターニングポイントとなる案件が徐々に動きはじめ、今後様々な領域・地域において横展開が見込まれつつあります。
国際協力とスタートアップの交差
国際協力の世界では、政府資金や各種基金が長年にわたり大きな役割を果たしてきました。私自身、JBICやUNIDOでの勤務経験を通じてその価値を深く理解する一方、最近の各国の自国主義の高まりやODA縮小議論などを背景に、国際資金の流れは全体としては引き締め傾向にあるように思います。しかし、技術やデータを活用して現場の課題や価値をスピーディに可視化できる企業やスタートアップに対しては、引き続き選別的に資金が流れ込んでいくと感じています。SORAの取り組みはその一つであり、既存の仕組みを補完しながらスタートアップならではの新しい「風」を提示できる存在だと信じています。
また、グローバルサウスで培われた実践知やノウハウを、日本を含む先進国へ還流させる「リバースイノベーション」という考え方にも強く共感しています。蚊が媒介する感染症は、マラリアに限らず、デング熱やジカウイルス感染症、チクングニア熱など多岐にわたり、地球温暖化の影響で日本を含む世界各国にとって無視できない脅威となりつつあります。例えば日本でも身近な例でいうと、女性の社会進出が進む中で出産を考えるタイミングにハイリスク地域への出張や転勤に直面するケースが増えています。こうした状況を踏まえると、感染症リスクへの対応はもはやグローバルサウスに限られた問題ではなく、世界共通の重要課題となっています。
SORAがアフリカやグローバルサウスで築く仕組みが、将来的に他地域でも応用される可能性を感じることも大きな魅力のひとつです。
ファイナンス・インパクトで実現していきたいこと
今後SORAでは、ファイナンス&インパクトリードとして関わっていきます。ファイナンス面では、グラント利活用から民間セクターへの応用(農業、気候変動、ヘルスケア、鉱山など)も視野に、グラント資金に加え、民間調達を通じた財務の基盤づくりに力を入れていきます。
また、インパクト面では2025年末に初のインパクトレポートを発行し(私も関わらせていただきました)、これからより深くステークホルダーと対話をしていくフェーズということもあり、社会的インパクトの可視化を通じてSORAの企業価値をいろんな方と共有していけたらと思っています。
‘時間をかける価値のある挑戦’
Le temps ne respecte pas ce qui se fait sans lui
─時間は、時間をかけないものを敬わない。
パリ滞在中に触れていいなと思ったフランスの諺ですが、どれだけ優れた技術や構想があっても、大きな課題解決のために現場での積み重ねや関係づくりに時間をかけることを避けて通ることはできません。マラリアに感染し、この世に産まれることができなかった命、大きなハンディキャップを持った人生、夢を諦めてしまった人の生活、いろんな局面に寄り添うSORAの挑戦は、その「時間をかける価値のあること」だと感じています。
さいごに
「途上国開発にイノベーションという軸で関わりたい」という高校生来…?の思いの先にSORAという挑戦があってよかったと思っています。受け入れてくれたSORAメンバーや応援してくれる家族・周囲に感謝の気持ちでいっぱいです。
また、末筆にて恐縮ながら、心よく送り出してくれたジェネシアのメンバー、そしてこれまでご一緒させていただいた関係者の皆さまには心から感謝しています。多くの学びとご縁に恵まれたVCでの時間でした。こちらのnoteを見ていただけた方、面白いことにチャレンジしているなと思っていただけた方、ぜひお気軽にカジュアルチャットのお声がけをいただけたら嬉しいです。
今後、微力ながらも社会課題解決、そしてインパクトスタートアップの価値向上に貢献できるよう頑張ってまいりますので、引き続きご指導・ご支援のほどよろしくお願いいたします!
〈経歴〉
2012年、国際協力銀行(JBIC)に入行。コーポレートおよびエクイティファイナンスに従事し、インドにおける初の現地通貨建て出資などを実現。2018年にはフィリピン・マニラ事務所に赴任し、アジア開発銀行やフィリピン政府と連携したエネルギー分野の取り組みを推進。2020年より国連工業開発機関(UNIDO)にて、アフリカ・アジアの気候変動関連プロジェクトに従事。
2022年より国内外(日本、東南アジア、インド、アフリカ)でシード投資を行うジェネシア・ベンチャーズに参画し、IRやインパクト投資家からのファンドレイズ、スタートアップのサステナ経営支援やインパクト評価(IMM)に携わる。
英国サセックス大学(開発学・国際関係学)卒業、同大学院エネルギー政策修士。ハーバード公衆衛生大学院 Global Public Health Leadership Program参加中。
