昭和29年(1954年)狂犬病予防法 / 改正(現在に続く「犬の引取」について)
前回、この改正でとても気になることとして狂犬病予防法(犬の引取)第五条の二があることを書いた。当時としては妥当な施策だったのではないかと思えるが、それが現在の動物の愛護及び管理に関する法律(犬及び猫の引取り)第三十五条として残っており何かと話題になることがあります。
この昭和29年の狂犬病予防法(犬の引取)第五条の二から現在(令和7年)の動物の愛護及び管理に関する法律(犬及び猫の引取り)第三十五条までの変化と今後について考えたことを書いておきます。
(昭和29年)狂犬病予防法(犬の引取)第五条の二 ~(現在)動物の愛護及び管理に関する法律(犬及び猫の引取り)第三十五条
昭和29年改正時に狂犬病予防法に定められた内容は
・犬の所有者から引き取りを求められたら引取り処分
・引き取る場所を指定できる
とシンプルなもの。
この条文は昭和48年に動物の保護及び管理に関する法律に移り、削除されます。
その後、平成11年の改正以降、細かい箇所(細かくても大事なこと)が改正されます。私が調べた範囲でどのように改正されたかを簡単に列挙します。
・昭和48年(1973年)制定
動物の愛護及び管理に関する法律 (法律の名前も変わる)
(犬及びねこの引取り)第七条 (ねこも対象に)
所有者の判明しない犬またはねこも対象に
公益法人その他の者に引取りの委託ができる
引取り時に手数料
国が都道府県に費用の補助
・平成11年(1999年)改正
動物の愛護及び管理に関する法律
第三章 都道府県等の措置等 (目次ができて章に分かれる)
(犬及びねこの引取り)第十八条 (第七条⇒第十八条)
内容に大きな改正はないとおもう
・平成17年(2005年)改正
動物の愛護及び管理に関する法律
第四章 都道府県等の措置等 (三章⇒四章)
(犬及びねこの引取り)第三十五条 (第十八条⇒第三十五条)
引取り委託先:(動物の愛護を目的とする)公益法人⇒団体
・平成24年(2012年)改正
動物の愛護及び管理に関する法律
第四章 都道府県等の措置等
(犬及び猫の引取り)第三十五条 (ねこ⇒猫)
業者からの引取り拒否、安易な引取りの拒否の規定
引取りだけでなく譲渡も委託
・令和元年(2019年)改正
動物の愛護及び管理に関する法律
第四章 都道府県等の措置等
(犬及び猫の引取り)第三十五条
所有者の判明しない犬又猫の引取り基準が変わる
(状況によっては引取り拒否ができる)
改善がとても進んだと思うのですが
動物の愛護及び管理に関する法律を読み、大改正施行の2000年以降からこの辺りを見てきた人には「をお!、どんどんよくなっている!」と思われるかもしれません。私もこれらの改正は素晴らしいものだと感じています。
しかし私は現在の条文に違和感を感じています。
昭和25年制定の狂犬病予防法が昭和29年まで二回の改正があり、その後日本は狂犬病を撲滅したことになり、長い間国内感染がない状況が続いています。その意味で当時の狂犬病予防法第五条の二は的を得た条文であり施策だったとおもっています。
昭和25年という戦直後の占領下で作られた狂犬病予防法が、昭和26年のサンフランシスコ平和条約による占領状態終了後、日本独自に行った昭和28年・29年の改正により制定された狂犬病予防法の(犬の引取)は、当時の状況に対応すべく作られたものであり、その条文の基本的な部分を現在まで引き継ぐことに違和感を抱いています。
当時は、狂犬病を撲滅するために放浪する犬をなくす必要がありました。猫にも狂犬病は感染し、日本国内最後の感染例も猫ですが、猫から人にうつることは(日本においては)ほとんど報告がないので、犬だけを対象にしていました。
それが動物の保護及び管理に関する法律に移った時に、猫も対象になるなど「何故?」「元々の目的が違うでしょ?」と思わずにはいられません。
昭和29年に引取る場所を指定することを何故条文に書く必要があったのか、を理解するだけでも「今とは世の中が違う」と感じます。
それには狂犬病がどのような病気であるかを理解せねばなりません。今読み進めている昭和29年の改正時、国は国民に対してその理解を広めることをしています。後ほど、第五条の二を取り上げますが、その辺りのことも取り上げたいと考えています。
個人的に望むこと
改正を重ね現在に至る「動物の愛護及び管理に関する法律(犬及び猫の引取り)第三十五条」の改正経緯は素晴らしいものだと感じています。
しかし、目的が違う条文から来ていることから、引き取りの目的が見えないことが残念でなりません。
私が望むことは、第三十五条に現在この条文が必要となる目的が記されることです。
その結果、各項の表現が見直されることで、幅広い人たちに理解していただけるものになったゆくと考えています。
敗戦から昭和29年当時の犬を取り巻く日本社会を知るために、この連載(?)を続けていることを理解していただければ幸いです。
そして専門家の目にとまり、第三十五条を(機能はそのままで問題ないと思いますが)表現を変えていただければと願ってやみません。
「今更狂犬病のことなんか理解したくない!」とお考えの方もいるとおもいますが、日本は狂犬病を撲滅したという特殊な国であることを理解する意味でも、また狂犬病が日本に入ってきたらどうなるのかを想像する参考資料としても、狂犬病の恐怖を日常的に感じなければならない世の中について知っておいていただけたらと考えています。
今回は、私の「願い」を書かせていただきました。
たぶん、ほとんどの人は理解出来ないと思いますが、理解してくださった人が世の中を変えるために動いてくださることを祈っています。
ここまで
