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本屋さんで『おすすめ』を聞いてみたら

私は本屋が好きです。
誰かが選んでくれた本には、温かさがあります。大きな書店も好きですが、店主が一冊一冊を大切に並べているような、小さな本屋には、特別な魅力を感じます。

ある日、そんな本屋で若い店主さんに声をかけました。
「何かおすすめの本はありますか?」
少し考えたあと、店主さんが手渡してくれたのが、吉田修一著『横道世之介』。
「ちょっと抜けていてのんびり屋なところが好きなんです。」
そんな言葉と一緒に勧めてもらった一冊でした。

本は、自分で選ぶ楽しさもあります。 でも、誰かが「あなたに読んでほしい」と勧めてくれた本には、不思議な温かさがあります。
本と向き合う時間の幸せを感じる今、こうした「誰かとの繋がり」をより大切に感じるようになりました。今回の出会いも、そんな新しい日常の中で見つけた宝物の一つです。この物語を読んだとき、私は「こんな人になりたい」と心から思いました。

「誰かが選んでくれた本には温かさがあります。小さな本屋の店主が手渡してくれたのは、一生大切にしたい物語でした。」
吉田修一著『横道世之介』


世之介は、特別優秀でもなく、目立つ存在でもありません。
どちらかといえば、おっとりしていて、少し天然。
でも、人のことを思いやる気持ちが自然で、誰に対しても同じように接します。
例えば、お嬢様育ちの祥子とのデートでも、彼は気負うことなく、自分のペースで接します。雪の降る中、ただ楽しそうに笑いながら歩く彼の姿は、周りの空気まで柔らかく変えてしまうような不思議な力を持っていました。そんな彼を見ていると、損得ではなく人を大切にすることの尊さに気づかされます。様々な出会いと笑いを引き寄せる、そんな世之介を見ていると、読んでいる私まで優しくて温かな気持ちになっていくのです。

忙しい毎日を送っていると、効率や結果ばかりを考えてしまいます。
でも、世之介は「急がなくてもいいんだよ」「人に優しくすることは、決して無駄じゃないよ」と教えてくれているようでした。

私は50代後半になった今、この物語に出会えてよかったと思っています。
これから先の人生で、少しでも世之介のように、人に温かく接することができたら。そんなことを思わせてくれる、大切な一冊になりました。

私は失業中で求職活動の真っ最中ですが、仕事を辞めて時間ができたからこそ、この気持ちに出会えました。もし以前の忙しい私だったら、世之介の優しさに気づかず読み終えていたかもしれません。

本は物語だけではなく、出会いも一緒に運んできてくれます。
あの日、本屋で「おすすめはありますか」と声をかけた私。そして、「この本を読んでみてください」と笑顔で差し出してくれた店主。
その小さなやり取りが、一冊の大切な本との出会いになりました。
 
本を閉じたあとも、世之介の優しさは心の中に残っています。私も誰かに、そっと温かさを届けられる人でありたい。そんなことを思わせてくれた、心に残る物語でした。

本と向き合う時間の幸せについては、こちらの記事でも詳しく書いています。よかったら読んでみてください。



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