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夜の気配に魅せられて。


1日の終わり。

お風呂から上がって、火照った身体に柔らかな夜風を感じたくなる。

部屋の明かりは消して、間接照明だけ。

オレンジ色の灯りが、静かな部屋をぼんやり照らしている。

窓を網戸にすると、外の空気がふわりと流れ込んでくる。

昼間の熱を少しだけ残した風。

草の匂い。

遠くを走る車の音。

どこかの家のお風呂の音。

昼の世界とは違う、夜だけの静けさが好きだ。

冷蔵庫から取り出した、よく冷えたオレンジジュースをグラスに注ぐ。

氷を入れると、カラン、と小さな音が鳴る。

その音を聞くだけで、「今日も終わったなぁ」と思う。

ソファに身体を預けて、ぼんやりと窓の外を眺める。

夜空は真っ暗ではなくて、少し青くて、少し白い。

星が見える日もあれば、雲がゆっくり流れている日もある。

グラスを口に運ぶ。

冷たいオレンジジュースが、喉をゴクゴクと通っていく。

お風呂上がりの身体に、その冷たさが染み込んでいく瞬間がたまらなく好きだ。

それだけで、なんだか幸せになる。

今日あった嫌なこと。

上手くいかなかったこと。

誰かの言葉に傷ついたこと。

頭の中でぐるぐるしていたモヤモヤ。

昼間はあんなに大きかったのに、夜風の中に座っていると、不思議と少しずつ小さくなっていく。

「まぁ、いいか」

そんな気持ちになれる。

無理に前向きになろうとしなくていい。

答えを出そうとしなくてもいい。

ただ、静かな夜に包まれているだけで、心がゆっくりほどけていく。

私は昔から、この“夜に落ちていく時間”が好きだった。

テレビもつけず、スマホも少し離れた場所に置いて、ただぼーっとする。

何かを生み出すわけでもなく、誰かと繋がるわけでもなく、ただ自分を休ませる時間。

大人になると、何もしていない時間に罪悪感を持ってしまうことがある。

でも、本当はこういう時間こそ、心には必要なのかもしれない。

風に吹かれながら、ぼんやり夜空を見上げる。

氷が溶けて、またカラン、と音を立てる。

その小さな音に耳を澄ませながら、私は今日も、静かな夜へ落ちていく。

少し疲れた心を、そっと休ませるように。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
あなたの元にも
心解き放たれる夜が訪れますように…




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