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夏の香りを連れて。



休日の朝。

目覚まし時計より少し早く目が覚めた。

カーテンの隙間から差し込む光は柔らかく、空はもう夏の気配をまとっている。

こんな日は少しだけ遠くへ出掛けたくなる。

お気に入りのリュックを手に取り、昨夜のうちに準備しておいたものを確かめる。

手作りのサンドイッチ。

水筒に入れた珈琲。

読みかけの本。

そしてカメラ。

特別なものは何も入っていないけれど、私にとっては十分な宝物だ。

車を走らせて向かったのは、湖のある公園。

到着した頃には、まだ人影もまばらだった。

朝の澄んだ空気が胸いっぱいに広がる。

深呼吸をすると、草の匂いと土の匂いが混ざり合い、どこか懐かしい気持ちになる。

夏はまだ始まったばかり。

けれど確かに、その香りは風の中にあった。

湖面は静かだった。

まるで鏡のように空を映している。

時折吹く風が水面に小さな波を作り、その揺らぎが朝の光をきらきらと散らしていた。

私はゆっくりと遊歩道を歩く。

木々はまだ完全には目覚めていないようで、辺りには穏やかな静けさが残っている。

鳥のさえずり。

葉が揺れる音。

遠くで聞こえる水の音。

耳を澄ませると、自然が少しずつ動き出していく気配が伝わってくる。

そんな時間が好きだ。

誰かと競う必要もなく、何かを成し遂げる必要もない。

ただ歩いているだけなのに、心が満たされていく。
ベンチを見つけて腰を下ろす。

珈琲をひと口飲む。

氷の音が耳に響く。

けれど、その苦味と香りが心地良い。

リュックから本を取り出してページをめくる。

時々顔を上げて湖を眺める。

また本を読む。

そんな贅沢な時間。

急がなくていい。

先へ進まなくてもいい。

気に入った文章に出会えば、そのまま何度も読み返す。

風がページを揺らす。

それだけで嬉しくなる。

しばらくして、小腹が空いたのでサンドイッチを頬張る。

卵とレタスだけの簡単なもの。

けれど外で食べると、どうしてこんなに美味しいのだろう。

湖を眺めながら食べる朝ごはんは、どこか特別だ。

気が付けば、空はすっかり夏の青色になっていた。

白い雲がゆっくり流れていく。

私はカメラを手に取り、その景色を切り取る。

けれど本当は、写真よりも心の中に残したい。

頬を撫でる風も。

草の匂いも。

珈琲の香りも。

湖の輝きも。

今日という朝のすべてを。

早朝の湖を見つめていると

夏はまだ始まったばかりに思えるほどに

その漂う空気がとても新鮮に感じてしまう。

私はリュックを背負い直し、ゆっくり立ち上がる。
小さな幸せは案外近くにある。

そんなことを思いながら、夏の香りを連れて帰路につくのである。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます✨️
あなたの元にも
夏の香りが訪れますように…☘️







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