不思議な少年で沸く私の中の保守と狂気
16世紀のオーストリアの小村に,ある日忽然と美少年が現われた。名をサタンといった。村の3人の少年は,彼の巧みな語り口にのせられて不思議な世界へ入りこむ……。アメリカの楽天主義を代表する作家だといわれる作者が,人間不信とペシミズムに陥りながらも,それをのりこえようと苦闘した晩年の傑作
人にはお勧めしにくい胸糞の悪い小説ですが、私はお勧めされたのをきっかけに読みました
いろいろと解釈の難しい作品だと思います
そもそも、未完の遺作が他人の手によって大幅に編集、編纂されたのちに出版されていますし(トムソーヤが登場するバージョンの原稿もあったそうな)、晩年のトウェインは重度の鬱状態(破産、妻や娘たちの死など)に陥り、自己救済のために書いたものとも言われています
私は、動物農場(オーウェル)やガリバー旅行記(スイフト)のように、児童文学のように見せかけて、ゴリゴリの大人向け社会風刺な作品がわりと好きだったのですが、この小説はそのジャンルのトップに君臨することになりました(ピノキオの冒険も好き♪)
不思議な少年は、ファンタージの物語の中で痛烈なまでの人間批判がひたすらに繰り返され、身もふたもないような終わり方をします
ですがその人間批判はいずれも心当たりのあるもので、何処か心地いいのです
そして、この物語を読んだあとでは、世界の見え方が少し変わり、それが元に戻ることは二度となさそうに思います
凄惨な事件や終わらない戦争のニュースを目にするたびに、サタンの主張に説得力が増し、それはまるでマーク・トウェインの呪いのようです
ある日、YouTubeのショート動画に戸塚ヨットスクールの校長の映像が流れてきました
「理性が戦争を生む」
サムネ画像のテロップを見て、思わずハッとさせられました
後で調べたら、これは戸塚さんの言葉というわけではなく、政治哲学において古くから議論されてきたテーマの一つだそうなのですが、まさにサタンの主張です
「哲学は悪なんよ」
「リベラルが全部悪い」
「マスコミはバカだ」
と話す戸塚さんが、だんだんとサタンに見えてきますw
戸塚さんの話は、私には割と心地がいいのですが、世の中一般的には、過激な異端児であり、極右で保守的な危険人物という評判なのでしょうか?
でも、私は彼の仏教解釈がとても腑に落ちたし、孔子や聖徳太子や福沢諭吉のことを天才といい、また武士道の精神に倣うべきだという主張に大賛成です
まぁ、サタンなら孔子や聖徳太子や福沢諭吉だってどろ団子といい、武士道だって犬にも劣る浅はかな精神だと言うだろうけど…
物語の中で、村人から慕われている老齢の神父が、他人の悪行によって無実の罪を背負わされて窮地に立たされる場面があります
少年たちが、神父さんを救ってくれとサタンにお願いをしたところ、サタンは神父を狂人にしてしまい、神父はボロ布で出来た王冠をまとい、我こそは皇帝だとわめいて、狂ってしまいます
そんな神父さんの姿を見て、やめてくれとすがる少年たちにサタンが言います
正気で、しかも幸福だなんてことが、絶対にありえないってことくらい、君にもわからないのかねえ?
つまり、正気の人間にとっちゃ、当然人生は現実なんだ。現実である以上、どんなに恐ろしいものであるかは、いやでもわかる。
狂人だけが幸福になれるのさ
私はこの小説を勧めてくれた人に、読み終わったよと、幾つか感想を伝えました
すると
「私が今幸せじゃないのは、狂っていないってことなんだって、安心するの」
と言われ、流石に皮肉が過ぎると思いました
しかし、最近の自分に重ね合わせてみると、まんざらでもないと笑えてきました
最後まで読んでくれてありがとうございます。
