津軽女のラストシャンソン
あれは、だいたい1年前の今頃だったかしら。タクシーを降りたその人は、体を曲げ、支えられながら、やっと歩いて行った。首から垂らした黒いストールを踏みそうになりながら。
そう、その日は、秋田漣さんのラストシャンソンの日。
りんごの街に住んでいながら、漣さんのシャンソンを聴いたのは、2年前が初めてだったの。しかも、あれはコロナ後の鍛冶町。鍛冶町の高級スナックから始まったコロナだったから、鍛冶町が目の敵にされていたのよ。だから、昼間とは言え、鍛冶町に足を踏み入れたのは久しぶりだった。
このシャンソンにご招待してくれたりょうまちゃんとB喫茶バトンで待ち合わせ。博物館で、ダリ展が開催中なので、バトンでダリ展開催記念メニューが頂けるの。


美味しかったから、ちょっと写真を。地方の博物館や喫茶店もがんばっているでしょ。友は、おひげをつけて写真を撮ってた(笑)。イカす。
いざ、シャンソンへ。

店に入ると「漣の3月まひるのシャンソニエ2023」と書かれたパンフレットが渡された。
津軽弁で話しながら、シャンソンを歌う漣さん。その歌声にどんどん惹き込まれた。
20代半ばで店をオープンし、54年目だと言う。
「フランスに行ったこともないのに、シャンソンを歌えるのは、たくさん映画を見ていたからかしら。」
コロナに負けていると話しながら歌うふるさとの歌。
りんごのふるさとは 北国の果て
うらうらと山肌に 抱かれて夢をみた
あの頃の思い出
ああ いまいずこに
りんごのふるさとは 北国のはて
詞・曲 米山 正夫
お腹の底に声が響く。初めて聴く歌なのに、涙がじわじわ湧いてくる。何なの?周りの方も涙を拭いている。知っている曲も知らない曲も、心地よく、あっという間の不思議な時間。この曲は、美空ひばりさんが歌っていた歌なんだって、知らなかった。
珈琲にお菓子のシャンソタイムだった。隣の人と席が近くてドキドキした。
ピアノ 小松 由美子さん
サックス 長谷川 健さん
お土産は、一本のフランスパン。

次のお誘いは、夏の日。パリ祭の頃だった。

今回は、シャンパンを飲みながらのシャンソン。津軽三味線奏者の長峰 健一先生と成田 建男さんとの共演、ピアノは小松 由美子さん。
アルコールが入っているせいなのか、前よりも歌声がしみる。涙腺が弱くなって、泣いているのよ。涙を流しながら、気持ちが良くなっているのね。ちょっと酔っ払って、フランスパンをお土産に帰る。
そうして、1年のブランクの間に、「ラストシャンソン」の知らせが。しまった!と思ったけれど、もう遅い。素敵な場所が消え、素敵な人が去っていく。

お店も閉めると言うので、壁にある沢山の色紙や写真なども写してみたの。いろんな人から愛されていたお店だったのね。



さっきはタクシーから降りて、やっと歩いていたのに、ステージでは、背筋を伸ばしてシャンとしているの。でも、きっとその姿勢は辛いのだと思うわ。声が出るのか心配だったけど。
「雪が降る」が始まったら、まるで魔法にかかったように、私はあなたを待つ女になり涙を流していたわ。

漣さんのお店で、彼女の歌を聴いた人は、ああ〜シャンソンって素敵、良いわぁ~と思ったと思うの。だから、おしまいになって残念。けれど
50年以上も歌ってきてくれたこと、感謝以外のなにものでもないわ。ありがとう。

最後の記念にCDを買ったわ。どの曲もふるさと、弘前、岩木山への愛があふれている。漣さんは、りんごの街の誇りだわね。
詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
