石を包み、意味を宿す|手仕事と言葉が結ぶ、小さな導き
なぜ、「石」に惹かれるのでしょう。
何万年、何億年という時間を
静かに刻んできた石は、不思議と私たちの
心を惹きつけます。
かつては一部の愛好家が楽しむものという
印象もありましたが、近年ではインテリアや暮らしの中に自然と石を取り入れる人も
増えてきました。
私自身も、祖父母が石材屋を営んでいたからでしょうか。
子どもの頃から石はどこか身近な存在で、
道端や川辺でふと美しい石を見つけると、「あ、この石、いいな」と足を止めて
しまいます。
理由はうまく説明できなくても、石には
人の心を静かに惹き寄せる力があるように
感じています。
① 長い時間が育んだ「変わらないもの」
私たちの暮らしは、速いスピードで
変化していて、流行も、価値観さえも
移り変わり、昨日の当たり前が今日には
変わっていることも少なくありません。
そんな中で、石は長い時間をかけて
地球が育んできた存在です。
手のひらにのせると、その静かな重みの
向こうに、人の一生では到底届かない時間の流れを感じます。
変わらないものがここにあるという
安心感が、忙しい心をほどいてくれるのかも
しれません。
② 世界にひとつだけの表情
石には、一つとして同じものがありません。小さなひびや、色の濃淡、結晶の形。
どれも自然が長い年月をかけて生み出した、その石だけの個性です。
均一なものが簡単に手に入る時代
だからこそ、偶然がつくり出した美しさに、より深く心を動かされるのでしょう。
③ 手で触れるという豊かさ
石を手に取ると、ひんやりとした冷たさや
重み、少しずつ体温になじんでいく感覚が
伝わってきます。
五感が静かに目を覚ます、石が持つ、
静かな魅力なのだと思います。
石を選ぶことは、自分を見つめること
数え切れないほどの石の中から、不思議と
心に残るひとつがあります。
それは、その時の自分が求めているものを、石が静かに映してくれているからなのかも
しれません。
小さな地球のかけらを手に取る時間。
それは、自分自身と向き合う、穏やかな
ひとときになるのではないでしょうか。
義母が遺してくれた、3つの石
生前、縁側に腰掛けていた義母が、おもむろに石を3つ取り出し、いたずらっぽく
にやりと笑ってこう言いました。
「これはね、石器時代のものだよ。」
それが本当に石器時代の遺物だったのか、
それとも義母らしい冗談だったのか、
今となっては分かりません。
ただ、その石を愛おしそうに眺め、
満足そうに元の場所へそっと戻した
義母の姿だけは、よく覚えています。
その石たちは今、私の手元にあります。

竹細工の技法を石に応用する
数ヶ月前、竹細工の講座で籠の持ち手を
美しく仕上げる「くの字巻き」という
飾り巻きを習いました。
仕上がりが蝶が羽を広げたように見えることから、「蝶結び」とも呼ばれる技法です。
その編み方を見た瞬間、この石が
頭に浮かびました。
「この石に、くの字巻きを施したら
どうなるだろう。」
丸みがある石は、ただ紐を巻くだけでは、
するりと抜けてしまいます。
義母の石は、引っかかりが良さそうなものがあり試してみることにしました。
あらかじめカヤの生地を巻いてゴツゴツを
和らげました。
そして、水に湿らせておいた皮藤で、
巻いていきます。
石の表面に沿わせながら、ひごを「く」の字に折り返し、次のラインを引っ掛けるように交差させていきます。
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手と素材のあわい 竹と植物のてしごと帖
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