(小さな物語)機械仕掛けの古城
むか~し、むかし、とある王国の隅っこに、「機械仕掛けの古城」と呼ばれ、民から恐れられた城があった。
ここの城主、かなりの人間嫌いで、家臣を周りに置くのも嫌なほど。
なので、城主、機械仕掛けの人形をたくさん作り、自分の身を守った。
機械仕掛けの執事、メイド、そして機械仕掛けの兵士。
もうなんでもかんでも機械仕掛け。
機械仕掛けの兵士はそれはそれは強かったが、この城主、征服欲などはなく、この城の軍隊が他国を攻めることはなかった。あくまで自分の城を守るための兵たちであった。
ある夏の日の午後。
この城主は、城の中庭にある庭園で、独り、午後の紅茶を楽しんでいた。
「ああ、やっぱりひとりは最高だな」。
城主はそうつぶやくと、クッキーをつまみながら、ご満悦。
と、そこに機械仕掛けの執事がやってきた。
「城主様、城門の前に子供が来て、なにやらわめいておりますが、いかがしましょうか?」。
城主はそれを聞くと、ちょっとだけ好奇心が湧いた。
「おお、そうか、そのバカをこちらに連れてまいれ」。
というと、城主「まぁ、たまには人間というものを観察するのもいいな」。
とちょっと嬉しげ。さすがに独りで退屈していたのかもしれない。
衛兵に連れてこられた子供は、少女だった。
城主はそれを見ると、いかめしい顔をわざと作って、少女を怖がらせてやろうとした。
だが、少女、凛として、城主に言う。
「城主様、私はスズと申します。実は城主様にお願いがあってまいりました。
今、ふもとの村では雨が降らず、農作物がダメになりそうになってます。このままでは村人に死者が出ます。どうか、どうか城主様のお力でなんとかしてくださいませんでしょうか?」。
少女はそう言うと、布に包んだお金を城主の執事に渡した。
城主、スズを見ると、さも珍しそうにして言った。
「ふむふむ、それにしても不思議なのだが、なぜ、こんな重大な相談を村の大人ではなくて、お前のような子供が私に言ってくるのだ?」。
スズはそれを聞くと、ちょっと言いにくそうに言った。
「それは大人たちが城主様を恐れて誰もこの城に近づこうとしませんでした。なので、私が代わりに来ました」。
それを聞くと、城主、呆れて言った。
「ああ、なんとも情けない大人たちであるな。だが、お前のその勇気に免じて許してやろう。いいだろう、私がなんとかしてやる。安心せい。それから、その金はいらん」。
スズはそれを聞くと舞い上がるように喜び、城主にお礼を行って帰っていった。
城主はそれから城の奥の部屋にこもって、機械仕掛けの雨雲製造機「アメフリ君」を作った。
「アメフリ君がいれば、もう安心だろうな」。
城主はそう言うとニッコリと笑い、また中庭の庭園で紅茶を楽しんだ。
アメフリ君が城の外の丘に立ち「アメ~、フレフレ、アメ~♬」と歌うとすぐに雨雲が湧いてきて、村の田畑を潤した。
村人たちは大喜び、スズをみんなで胴上げし、スズに城主にお礼の品を持っていくように頼んだ。
スズはまた機械仕掛けの古城の城門前に来て、声を張り上げて言った。
「城主様、雨を降らしてくださりありがとうございます。このたびのお礼の品を持ってまいりました~」。と叫んだ。
しばらくすると、城門から機械仕掛けの執事が出てきて言った。
「城主様は人間嫌いであられる。お礼の品はここで私が受け取っておこう。あ、そうそう、城主様からの伝言である。(スズよ、お前の勇気は見事であった。その勇気を大切にして、立派な大人になりなさい)とのことである」。
スズはそれを聞くと、目に涙を浮かべて、叫んだ。
「城主様~、ありがとうございます~。私も城主様のような立派な大人を目指します~」。
人間嫌いな城主、今日も機械仕掛けの古城の中庭で優雅に独りで午後の紅茶を楽しむのであった。
「ああ、やっぱり独りはいいもんだ」。
(終)
※投稿サイト「カクヨム」より「夏のファンタジー短編集ですぞ」第17話「機械仕掛けの古城」を転記しました。投稿日2025年8月15日。
著者は私「ポンポコ」です🌟
