高慢と偏見(上•下)/感想
どんな本?
現代のラブコメの原点。「女性の幸せ=条件のいい結婚」という当時のイギリス社会。資産家で独身のダーシー氏はその言動から「高慢」と敬遠されるが、やがてそれは「偏見」であったと悟られる。
キーワード
【高慢】【偏見】【幸福】
対象
・恋愛小説を読みたい人
・ドラマが好きな人
・信念の強いヒロインのストーリーを読みたい人
・偏見についてざっくりと読みたい人
・イギリスにおける昔の階級社会について興味がある人
・高慢や偏見というワードに関心がある人
見どころ
主人公のエリザベスは知性的でユーモアがあり、権威やお金に屈せず自分の意見をはっきり言う、自立した女性像の先駆けとも言える革新的なヒロイン。
学びや気づき、感想
オースティンは人物の行動やセリフを通してその心理を浮かび上がらせる技術に長けている。またその文体は非常にウィットに富んでおり、登場人物たちの会話の面白さや、愚かな人物への辛辣な描写は今読んでも思わず笑ってしまうほどの切れ味がある。単なる恋愛小説にとどまらず、当時の階級社会、結婚事情、人間関係の機微を皮肉とユーモアたっぷりに描いている点も評価が高い理由の一つだ。
以下はエリザベスのところどころの台詞を引用したものだが、ハッとさせられるものがある。
「あなたは、一人の個人のために、同義と誠実の意味を変えるわけにはいかないわ。また利己主義を世渡りの知恵だとか、危険に対する不感症を幸福の保証だとかいうふうに、自分に思い込ませたり、わたしに信じさせようとしたりしちゃいけないわ」
「でもまちがったことをしようと思わなくても、他人を不幸におとしいれようと思わなくても、まちがいもおこれば、災難もあるんだわ。思慮が足りないとか、他人の感情に注意しないとか、決断力が不足しているとか、そんなことだって、馬鹿にはできないのよ」
「わたしあなたから、そういう人を四十人いただいても、あなたみたいに幸福にはなれないわ。あなたの性質、あなたの温情をもてるまでは、わたし、あなたの幸福はもてないわ。そうよ、そうよ、わたしはわたしで、どうにかやって行くから、ほうっておいてよ。よっぽど運がよければ、そのうちコリンズ氏みたいな人とめぐりあわないものでもないんだから」
一見その通りだとしか感じられない言葉の数々を、エリザベスの人柄や当時の社会の在り方を思い浮かべながら反芻してみると、なるほど革新的であると納得がいくように思う。実際現代において我々が普段接している場面もあるようにすら思うが、なかなかエリザベスの指摘するような意思をもって言葉を交わす人は多くないのかもしれない。
また以下二つに関しては、当時のオースティンの年齢にしては鋭い考察なのではと言わずにはおれない。
とてもきわどい問題について忠告を与えて、恨みを買わなかった不思議な一例であった
これは一般に男として妻からうけたいと思う種類の幸福ではなかった。しかし、ほかに楽しませてくれる能力を相手がもちあわせていない場合には、真の哲人というものは、与えられるものからせいぜい利益を引き出すものなのである。
普段ラブコメなどあまり手に取らない私だが、エリザベスとダーシーのやりとりがあまりにもどかしく、また人間らしくもあり、面白いなと思った。
グリア・ガーソン主演【高慢と偏見(字幕版)1940】(アマゾンプライム)
映像化した内容があったため折角だからと思い鑑賞した。約2時間にまとめられた映像でところどころ原作とは異なる。文でのやりとりは省かれ、ダーシーがエリザベスに直接ウィッカムについてを告白するなどの違いも楽しい。キャサリン夫人は本書ではエリザベスを敵視して終わっていたような気がするが、映像ではダーシーの為エリザベスの人と成りを見極めGOを出すなど、思い遣りある叔母として映っている。
